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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第二十二章 三つ巴ならぬ四つ巴、いや五つ巴?

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 まあ聖女になったことを公表する、パレードをする、パーティーを開く……なんてイベント目白押しにするなら当然そんなに急に『はい、じゃあ明日ね!』って訳にはいかないので多少の余裕はある。


 聖女になったことの公表とパレードは早めに行うつもりだけど、それだって首都を回るんだとしても警備態勢とかお店とかの都合をつけさせるとか、それにかこつけたお祭りが開かれることになるんだから準備くらいさせてってなるだろうしね。


 その辺はきちんと政治的にも利用してもらって構わないと思うの、うん。

 経済効果も見込めるんじゃない? わかんないけど。


 何よりお祭りがあったらみんな楽しいもんね!


(だからドレスはデザインからできるんだけどさ……)


 ほぼ口を出すことはなかったというか挟むことが許されなかったというか、シアニル兄様の暴走がすごかったっていうか……。

 やめよ? ドレスにダイヤ砕いてキラキラさせたいとか、ブローチの金具を魔道具にして輝かせたいとか言い出すの。ね?

 デザイナーさんもめっちゃ笑顔で遠い目しちゃってたからね?


 まあ最終的に聖女らしい(・・・)イメージの白を基調として、髪飾りには布で作った大ぶりの花をあしらうことにした。

 よかった、人間電飾は免れた。

 

 ちなみにその花の中心には、兄様たちのイメージカラーの宝石を入れるよ!

 それから、父様からもらった大事な金のピアスをつける予定なのでそれに合わせた金の繊細なネックレス……これはシアニル兄様が作ってくれるらしい。

 婚約者候補たち四名のイメージカラーの石を入れてくれるって言ってたけど……なんだろう、私歩くだけですごくしんどくならないかな……心配だわ。


 まあそこも身体強化の魔法をパル兄様がかけてくれるって言っていたし、婚約者候補たち四名の中でユベールが魔法で私の補助と結界魔法を展開することになるらしい。

 礼儀作法についてはサルトス様とピエタス様が補助してくれるそうだし、物理的な警備はフォルティス様が担当してくれるってさ。


 ……至れり尽くせりがすぎない?

 いや皇女なんだから当たり前って言われたらその通りなんだけどぉ……。


(人に世話をされることには慣れた(・・・)し、褒めたり甘やかしたりしてもらえることも慣れた。……けど)


 ヴィルジニア=アリアノット。

 後ろ盾のない第七皇女。


 その人生を受け入れて前を向いて過去については大きく考えないようにしていた。

 ああしたかった、こうしたかった、その望みを叶えようって思っていた。


 でも、それだけだった。

 それだけだったものが、メディーテー様に姉の話を聞いただけで……姉が〝私〟を思い出して泣いているって聞いて、胸がじくじくするのだ。


 あの頃の(・・・・)私は、今と比べものにならないくらい惨めだった。

 殴られたり……は多少あったけど、それでも生活は最低限送れていたし、学校も通って友達もいたし、姉はなんだかんだ言ってあの家の中では唯一の味方だった。


 敵対せず、時折おこぼれを寄越すことで私の必要なものが行き届くように……温もりこそもらえなかったけど姉が私を嫌っていないことだけはわかっていたから、私も姉の幸せを願うことができた。


 今になって、そんなことを思い出して胸が苦しい。

 どうしてかわからない。

 姉はそれなりに幸せになっている、私は姉の代わりに不幸になったけど今はこうして幸せになっている……。


(……なんだろ、複雑)


 あの時も今も、私は流されるまま生きているんだろうか。

 やりたいことは前世でも今世でも見つけてやっているつもりなのに、これも予定調和ってやつなのかなって思ったら少し悔しい気もする。

 

 自分で選んで進んできた道だって思うのに、本当にそうだろうかって。


(やんなっちゃうわ~~~~~)


 もうこの人生を楽しむしかないってわかっているので、足を止めてまで悩むつもりはないけどさ。

 それでもふと思っちゃうじゃん?


 ため息が零れた私を心配して、ソレイユがぴとっとくっついてくれた。温かい。

 ランスも私の足下で心配そうに見上げてくれている。

 優しい子たちに、心がホッとする。


「アリアノット様、陛下がお呼びでござます」


「父様が?」


 デリアの声に私は首を傾げつつ支度をし始める。

 皇帝に会いに行くってだけでそれなりに身なりを整えないとならないのは面倒くさいけどこればっかりはしょうがない。


 部屋着からドレスに急いで着替えて、私は父様に会いに行ったところで思いも寄らない人がそこにいるではないか。


「えっ、ペルティナさん……?」


 そう……そこには神官服に身を包んだペルティナさんがいたのだ。

 ヴァノ聖国でお世話になった(?)、今世初の取っ組み合いの喧嘩をした相手である。


 彼女はあの時とは打って変わってお上品な笑みを浮かべて、深く頭を下げた。


(えっ、何事……?)


 一難去ってまた一難……なんてことはないよね!? 神様ァ!?

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