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となりの世界の放浪者たち  作者: 空閑 睡人
第四章:歪み
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その男のかごを持つ腕には黒色のバンダナが巻かれていた。外は既に日も落ちて暗くなっているが、その表情は意気軒昂として明るい。


彼は、活也や優が率先して皆をまとめ始めた時にいち早く全共委の構想に参入した、それだけが理由で運営クラスに在籍できているのだと自覚していた。

だが活也のようなリーダーシップも、優のような強い隷獣がいるわけでもないが精力的に貢献している自負もあった。


結成当時は苦労も多かったが、最近達成することができた学外からの移動計画のお陰で人員も増え、より組織的に運営ができるようになっていた。なによりその計画時に得たかなり大きな魔結晶、巨大な木の魔物から得たらしいそれのお陰で、組織内の魔結晶に余裕ができた。カツカツだった食料事情は改善され、一人一人に配給している魔結晶の数も増えた。


今はさらにどう生活環境を良くしていくかを運営クラスの皆で話し合っているところだ。様々なアイディアが出て、非常にやりがいを感じている。

例えばシャワー室の設置。余裕のできた魔結晶で交換したもののひとつだ。どういう仕組かはわからないが、使う度に小さな魔結晶を消費する代わり、蛇口をひねると温水がちゃんと出るのだ。ならば設置は運営クラスで行い、使用に関しては個々人に任せるという方法がとれる。シャワー問題は以前からの課題の一つだったので、解決方法が見つかりそうだと皆意気込んでいる。


また最近新たに発見されたことだが、ウケと交換した魔結晶量が増えると、ウケから交換できるものが増えるようなのだ。

その証拠にシャワー室をいくつか交換した後、建築物を司るウケで交換できるリストの中に大浴槽が増えていたのだ。聞けば銭湯のように、同時に何人も入れるものだそうだ。それを受けていずれは大きな共同浴場のようなものができればと皆で計画もしている。


こうして今はどんな内装にするかとか運用は入場料制にしようかとか毎日遅くまで話し合いをしているが、それは全く苦ではない。

ただそのためにはもっと多くの魔結晶が必要になるのだが、聞けば今日も大きな魔結晶がひとつ手に入ったのだという。新しく戦闘クラスに入った一年の女子の隷獣が凄いらしい。だがお陰で様々な計画を進めることが出来る。


「なんとも頼りになる後輩だ」


そうひとりごちながら、かごを揺らして会議室の扉を開ける。

買い出しに出かけていた男のかごの中にはたくさんの夜食用の食べ物や飲み物が入っている。いくつもの果物が揺れて、がちゃりと何本かの瓶がぶつかり合う音がする。

最近判明した中でも嬉しかったのが、酒は案外飲める味をしているということだ。それがわかってから皆の気分がかなり上向いた。

だからこれは毎晩の仕事のご褒美なのだ。今日もまだまだ長くなる、そう意気込む男はほろ酔いの足で部屋へと入っていった。


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