第28話 リーシアの武勇談 その7
「塔から旅立ってしばらくたって、私たちはロッテンナウという町につきました。ここは製鉄が有名で、私たちはここで武器や防具を新調したいと思ってたんです。私たちはここで鍛治職人と出会い、装備調達の交渉を始めたんですが、その途中でロッテンナウにゴブリンが襲撃してきたんです」
ここで一拍おくと皆の喉がごくりとなった気がした。
「ゴブリンの集団が街の門に集まって攻撃を仕掛けていたんです。その時にはロッテンナウにはゴブリンたちを駆逐できる力がなかったんですね。そこで、街の有力者が鐘を鳴らして、対抗戦力を募ったんです。そこで私たちが門の前のゴブリン、そしてその本拠地となる巣の討伐をしました」
リーシアが話し終えると、「え?それだけ?」と、ご嫡男がぼそっと呟いた。
ごほん、とベル師匠が咳払いをして、
「リーシア、話を盛り上げろと言っただろう」
ああそうでした。と謝って話を戻す。
「私たちはロッテンナウの鍛治師に交渉して装備を借り、地元の猟師の協力を得て、ゴブリンの巣と思われる洞穴に向かったんです。ゴブリンの巣というものをご覧になった方はいらっしゃるでしょうか」と聞くと、皆が否定した。
「そのゴブリンたちは山の中の洞穴にこもって拠点を築き、そこから周辺に出てきては襲撃してはさまざまなものを略奪、略取していくんです。ロッテンナウでも何人かの女性が拐かされていたということでした。入り口には数体のゴブリンが見張りにたっていましたが、夜が更けてきたら眠りに入ったので、これを仕留めて侵入していきました」
「洞穴に入ると、狭い穴ではありましたが、身を屈めずに進むことはできました。途中で、『印』があったのですが、挟撃を前提に進んでいくとバレバレに待ち伏せているゴブリンがいたのでこれを倒し、さらに襲われたりしないように、そこに罠を仕掛けました」
「罠?」
「ええ、食事の場ですがつまり、尿です」頬を真っ赤にして顔を逸らす師匠が可愛い。「人の尿はゴブリンを誘うのです」
「私たちはそうしてフラフラと彷徨ってくるゴブリンを倒して数を減らしながら、ゴブリンの狩猟がいる広間まで進みました。そこで師匠の魔道でゴブリンたちを眠りに誘い、そこで襲撃したんです」
「眠りの魔法だ!」とはご嫡男様。
「そんなに立派なものじゃないんだよ。これはちょっとした知識の応用だ」とは師匠。「人間というのはある意味では焚き火のようなものだ。体の中で空気を使って食べたものの何かを燃やして熱を出す。もちろん、炎よりももっと穏やかなものだ。だから食べずにいると体は痩せるし、生きていれば体は温かくなる。つまり、閉じられた場所でたくさん燃やすと、人が生きていくのに必要な炎を燃やす空気もまた、なくなってしまい、生き物は生きていくことが難しくなるんだ。このこと自体は魔法でもなんでもない」




