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で?
どうして一部屋に布団が二つ?
「私と一緒じゃ寝られないとでも?」
藍さんはイヤじゃないの?
「別に構いませんよ。」
参った。
藍さんの入浴中、ぴったりとくっついている布団を離してしまおうか悩む。
自意識過剰だと嘲笑されるだけのような?
その布団の上で正座したまま悩み続けた結果、結局何もできない。
「大きくて素敵なお風呂でしたよ。」
パジャマ姿でまだ髪もしっとりしている彼女につい見惚れてしまいそうになって目を逸らした。
「小室さんとお風呂の中でイロイロと話してきました。」
昼間とうってかわって
「あの人は信用できる」的な事を言い出した。
「紹実さんの事、いろいろと話してくれました。」
どんな話なのか興味があったが内容までは教えてくれなかった。
「ほらお風呂空いたから冷めない内に入ってください。」
そうだね。じゃあちょっと行ってきます。
確かに大きなお風呂だった。
どうやら僕が最後のようだな。明日洗っておこう。
お風呂から上がると小室さんの母親がココアをくれた。
「襲われても助けなくてイイのよね?」
何を言っているんだこの人。
少しだけ小室さんの高校時代の話をしてくれた。
そしてここでも一人の少年が登場する。
しかし今度は冒険譚ではない。
ラブコメだった。
話の途中で真っ赤になった小室さんが止めに入り
「早く寝ろっ。明日も仕事あるからなっ。」
「昔の話はするなって言ってるだろっ。」
2人が言い争っている声を背にして部屋に戻った。
灯りはついたままだが藍さんは布団の中に潜っている。
寝たかな。
安心した。
こんな状態で二人っきりとか心臓に悪い。
灯りを消して布団に潜った。
「遅かったですね。」
うわあ。ごめん。起こした。
「起きてましたよ。随分と長湯なんですね。普段もっと速いのに。」
お風呂はすぐで
「絢さんに背中でも流してもらっていたんですか?イヤラシしい。」
ち、違う。お風呂はすぐ出てそのあと小室母と少し話をしてたんだよ。
「そうですか。紹実さんのお話ですか?」
小室さんの学生の頃の話だよ。
「まあ何の話でもいいです。女子1人部屋に置いて戻って来ない理由にはなりませんね。」
それはゴメンなさい。
何だこの間。
「悪いと思ってますか?」
え?うん。勿論。
だから何この間は。
隣でごそごそする音。
ふと顔だけ向けると藍さんの顔がすぐ近くにあった。
「悪いと思ってるなら私を最強の魔女にしてください。」
は?
「鈍い人ですね。私にキスしろって言っているんですよ。」
いやいいやそんな。キスなんかしたって最強にはなれないって知っむっ。
いきなり唇を奪われた。
「ん。」
ぷはっと離れると
「何だか甘い香りがしますね。」
こ、こ、こ、ココアをご馳走になっていたので。
「ココア?女子1人待たせてココア?」
あ、いや、その小室母が。
「信じられませんね。まったく。」
藍さんは布団に潜り直し身体毎反対を向いてしまった。
今から台所借りて
「もういいですよ。遅いんですから迷惑でしょ。もう寝ましょ。」
そ、そうだね。ね、寝ようね。
眠れるはずが無いじゃないか。
結局一睡もする事なく31日を迎える。




