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「何かあったな?」
大晦日の朝食。ニヤニヤして聞くのは小室母。
「何もありません。ねえ理緒君。」
うわはい。何もありません。
ダメだ。
意識しないようにとするほどに顔が赤くなるのが自分でも判る。
「まったく。」
藤沢藍は本気で呆れた。
「そんな顔していたら本当に何かあったみたいに思われるじゃないですか。」
そうだね。何も無いのに動揺しているみたいでオカシイよね。
本当に何も無かったですよ。
片言でうわずった僕の声に小室家一同が笑いを堪えるのに必死だったのは判った。
較べて藍さんは全く動じていない。
僕なんかとキスする程度。なんの感情も持たないのだろう。
朝食後、昨日作ったお節や着替え等をまとめ橘家に乗り込む。
夏祭りの時に会った橘さんと小室さんの親友、南室綴さんに再会。
改めて挨拶をするが、世間話もそこそこに初詣の準備に取り掛かる。
手伝おうにも何をどうしたら良いのか判らず藍さんと2人佇んでいると
「2人でらおにぎり作って。」
2人で?2人きりで?
「何か喋ってくださいよ。気まずい。」
そうは言っても。
「理緒君はどん子だったんですか。」
あれ?紹実さんから聞かなかった?
「あなたが捨てられてプルブル震えてたって事くらいですよ。」
子供の頃ねぇ。
ずっと祖母と一緒だった。
「学校には行っていましたよね。
学校には何の思い出も無い。
昼休みになると図書室に籠もり本を読んでいた。
誰からも相手にさされず
居るのか居ないのか判らないような奴。
居ても居なくても同じ奴。
それでイジメの対象にすらならなかったのは幸いだったのだろう。
団体行動が大変だった。
旅行先で置いて行かれそうになったり、
運動会のクラスリレーの順番飛ばされたり。
僕の子供の頃なんてそんな程度だよ。
「恋とかしなかったんですか?」
そりゃあるさ。ちっょと話しかけられただけですぐ好きになったよ。
でも
自分が気付かれていないのを知っていたから。
仮に相手に告白したところで
「あんた誰?」
と言われるだけだ。
「話聞いている限り引き籠りのムッツリ野郎ですね。」
否定はできん。
「友達いなくて寂しく無かったんですか?」
祖母がいてくれたから。
あの人は僕を見付けてくれた。
紹実さんも僕を見付けてくれる。
そして魔女達も。
御昼前にはたくさんのおにぎりが出来上がった。
こんなに食べるのかってくらい作ったがそう言われたからそうした。
作業を終えた大人達が戻ってくる。
「ごめんね理緒君遅くなって。」
いえ大丈夫です。
助かった。さっきから頭痛が酷くて吐き気がしていた。
「こんなに乱れて。ごめんね。今度からはもっと間隔短くするからね。」
いえ本当にだいじょう
「大丈夫じゃないのは判るわ。」
橘さんは初めて強い口調で言った。
「気を使わせてごめんなさい。でも無理はしないで。」
「佳純ちゃん。午後はお兄さんとお姉さんのお手伝いしてね。」
「ん。」
「それでお兄さんの」
「判ってるよ。私が理緒君を撫で撫ですればいいんでしょ。」
「せめて理緒さんかお兄さんて言いなさいよ。」
「それはちょっと。」
何でだ。何でなんだ。
「プッ。そうですよ。こんな弟だか妹だか判らないような人をお兄さん呼ばわりなんてできませんよ。」
何て言い草だ。
午後、子供達に出番は無く暇を持て余していた。
「佳純ちゃんのお姉さんてずっと橘姫って名前なのかと思ってました。」
実は僕も。
「それ絢姉ちゃんが言い始めたんだって。」
「綴姉ちゃんと2人でそう呼んでたらいつの間にか皆もそう呼ぶようになったって。」
その2人はどうして橘さんを姫と呼ぶのだろう。
「で、何だって御2人はコレの頭を撫でてるんです?」
「あれ?理緒君言ってないの?」
いや、まあうん。
「この神社が特別な場所でこの人の体調に影響しているのは知ってますよ。」
「つまりそれですか?」
え?ええ?そう。だよ。
藍さんは知っていた。その上で何を確認したかったのだろう。




