表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kiss of Witch  作者: かなみち のに
139/141

139

過去魔女が世界征服を試みただとか、魔女による大量殺戮が行われたとか

そんなニュース見た事も聞いた事もない。

僕が知らないだけで情報規制がされているなんて事もない。だろう。と思う。

僕の住む街では過去数件魔女による騒ぎがあったようだが

被害届が提出されているようなものでもない。

それでも委員会はどうして「魔女」を敵視するのだろう。

やはりイメージだけでその存在を否定されているのだろうか。

委員会の人達は答えてくれなかった。

「真意については判りました。それで、協力とは?」

碓氷先生や、僕の母親達がそうしたように

委員会の改編。

種族差別を失くすための組織としていただきたい。

魔女はその組織のためなら喜んで協力する。

妖怪を恐れさせようと、敵対する魔女の力を借りたような連中と

僕はなんて愚かな取引をしているのだろう。と一瞬よぎった。

どのような回答を得ても、それが守られる保証なんてどこにも無いじゃないか。

だからこそ、次の一言を言わねばならない。

仮に、魔女を含めた何かしらの種族が、それ以外の人々(citizen)を傷つけた場合、

委員会は率先してその存在に対して改善を要求する責任を持つ。

「つまり事実によってのみ、我々は行動できる。と。」

「将来的な」だとか、世俗的な印象や過去の事案、または推測や憶測に基づいた行動はとらない。

言葉にするのは簡単だ。

だがこれを守れる人がどれほどいるだろうか。

人は必ず期待をする。希望持つ。過去の経験則から身勝手な自己判断を繰り返す。

それでも信じるしかない。

いつか、僕の街のように、日本中で世界中で

魔女だとか、妖怪だとかそんな言葉すらなくなるような世界になると。


「いかにも子供の考える綺麗事だな。」

彼は僕の反論を待たずに続けた

「だがキレイゴトだけで世の中が動いているほど甘くはないと、君は知っている。」

「少しだけ時間をくれ。」

僕は円卓を離れ、会議室の外に出た。

廊下には誰もいない。このフロアには他に誰もいないのだろうか。

膝が震えている。

喉がカラカラだ。こんな時あの3人が傍に居てくれたら。


時間的には10分程度だっただろうか。もっと短いかも知れない。

呼ばれ、席に着くなり委員長が口にした。

「現行の委員会は本日付で解散する。」

「君の言う種族間交流を推進する組織の立ち上げを早急に進めよう。」

彼の思惑がどちらにあるのか僕は知らない。

本心で魔女やそれ以外の種族を助けようとしているのか

それとも

魔女やその種族を味方に付けてしまおうとの打算からなのか。

もっと単純に

僕とその他の魔女を敵に回す事を恐れただけなのか。

判らない。

それでも前に進んだんだ。これから始まるんだ。そう信じるしかないじゃないか。


そもそもの始まりは?

委員会なんて組織を立ち上げて魔女狩りをしようなんて。誰の案なのか。

思い切って先程答えを得られなかった質問を再度ぶつけてみた。

「今となってはもう誰も判らない。」

「元々は私達もただの役人だ。配置された部署で指示に従うのみ。」

つまりその委員会を運営する組織があるって事ですか。

「いや、存在しない。私がこの組織のトップだ。」

何の疑問も抱かなかったんですか?

「抱いたよ。若い頃はね。」

だがこれは私の仕事なんだ。上司の言う事は国の言う事なんだ。」

「魔女は国に綽名す存在だと、そう言われ続け来た。」

「それを信じるしかないではないか。」

何てことはない、彼は「立派な」公務員ってだけじゃないか。

それじゃあ逆にどうして今になってその考えが

「君達を知ったからだよ。」

「私達は常に君を中心にした魔女達を観察していた。」

「いつだったか、我々の雇った魔女達が君の街に嫌がらせをしただろう。」

「君は誰も傷付けずに解決してみせた。」

「クリスマスのシーズンに幼稚園や保育園に慰問に行くのも」

「お祭りでお年寄りや障害を持つ人達に奉仕するのも」

「我々は全て見ていた。」

役人が、奉仕活動をする少年少女の邪魔をしている。

それが例え歴代続いている仕事だとして、果たして正義なのか。

「それで、組織の改編の詳細は君に相談すればいいのかな?」

その必要はないでしょう。お任せします。

「そこまで信用するのか?」

信用しない理由はもうありません。

なさりたいようにしてください。全て整ったら連絡をください。

その際に互いの協力体制について話をしましょう。

日本中の、とは言えません。僕の知らない魔女もたくさんいるでしょうから。

ですが僕の知りうる魔女は委員会への協力を約束します。

理想は、そんな組織も、こんな無駄な権利もなくなる世界。

決して被差別を「武器」にしてはならない。

対等で同等であると示さなければならない。

新たな委員会がそのための組織である事を願います。

「難しいだろうがね。努力はする。」

「そんな理想的な社会にするなんて事は約束できないが、」

「我々委員会はそのための努力を惜しまない事は約束しよう。」

交渉そのものは30分ほどで終わった。

その後は雑談に近かった。

コチラの条件を全て受け入れてくれた。

だが「委員会」は一切の条件を提示しなかった。それが異様と言うか不気味でもあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ