二人目5
「なんでいるんだ?」
俺は荷車の中で寝転がっているキョウカに尋ねる。
「戦いになるんだろ?だったらアタシも混ぜろや。」
俺は頭を抱えた。
わかりやすすぎて何も言えない。
「護衛についてくれるのは嬉しいけどさ、だったら別のところに付いてくれないか?その方が確率も上がるし。」
輸送は三班だ。貴重な超人を一箇所に固めるより分散させたほうが守れる確率が上がる。1/3より2/3だ。
「必要ねぇだろ。どうせここに来るさ。」
断定しきる口調で言うキョウカ。
「なんでそんなことわかるんだよ。キョウカも地図見て総判断したのか?」
だとしたら確かに襲撃の確率は高いかもしれない。キョウカは戦い慣れしてるだけあって、そういう目線はかなり優秀だ。
「あん?着いてくだけのアタシが何で地図読まなきゃなんねぇんだよ、面倒くせぇ。」
おいこら。
「だったら、なんでここに現れると思うんだよ。」
「はぁ…。何もわかってねぇな。」
キョウカは起き上がって呆れたような目線を俺に向ける。
「お前が犯人の立場だったらどうする?」
「どうするって…。だから少数で襲撃しやすい中央のルートをー
「だからわかってねぇ、つってんだよ。」
キョウカは刀を抜いて俺に突きつけてくる。
絵面ほ怖いが、これで斬られることは絶対にないので俺としては迫力に欠ける。
なぜかって?こいつが斬るつもりならすでに斬ってる。
「いいか、ジュンイチ。てめぇの仲間が攫われた。そいつらが輸送されるって話を聞きつけた。どうする?」
なんだその前提。
「そりゃ、仲間を助けるチャンスなら助けるけど。」
「しかしだ、味方は3つに分かれて運ばれることになった。誰を助ける?」
なんだよ次から次へと。
「…3つともは助けに行けないのか?」
「難しいだろうな。」
「不可能じゃないんだな?…ってまさか、今回もそうだって言いたいのか?」
「多分な。今回のスピオレ誘拐はあまりに徹底してやり過ぎてる。単に奴隷が欲しいだけならここまでやらない。犯人のやつは恐らくスピオレを一人も逃さない気だ。」
「…でもそんなやついないんじゃないのか?奴隷商館にいたスピオレたち全員を仲間みたいに思ってる奴なんて。」
「んなことアタシが知るかよ。」
大事なところをぶん投げて、キョウカはまた寝てしまった。
いや、あんまし不穏な空気にしないでほしいんだが。
時間が少し経ち、俺たちの護送段が街を出て、中央ルートと呼んだ街道を進み始めた。
街道は草原を通り抜ける道で、見渡しがいい。道は、アスファルトと比べると頼りないが幾人もの人の足で踏み固められただけあって、ちゃんと平らになっている。
他の商人たちもよく通るルートと聞いていたが、視界には俺達の他にはいない。
「まぁ、敗戦間もないですからな。こんなものかもしれません。」
とはスピオレを運ぶ馬車を引く兵士の話だ。
「まずいな。人目が全く無いなんて。」
「邪魔が入らねぇのは好都合だろ。大体敵が一目なんか気にすると思うか?」
「そういうもんか?」
はぁ、とキョウカがため息をついて俺に向き直る。
「ジュンイチは戦いのイロハってもんをまるでわかってねぇな。」
「仕方ないだろ。経験少ないんだから。」
「だったらその分考えやがれ。例えばだ、敵が現れて戦闘になるとする。こっちの勝利条件は?」
「敵を倒すこと?」
「バカか。」
キョウカに馬鹿にされた。かなりショックだ。
「スピオレの護衛がアタシらの仕事だろうが。たとえ敵にやられたとしても、時間稼ぎができてスピオレ達が脱出できたらアタシらの勝ちだ。」
「そ、そっか…。逆に敵をいくら倒してもスピオレ達を連れて行かれたら負けってことか。」
「そういうこった。そうなると、敵味方がわからない商人は邪魔だ。敵と戦いながらもスピオレに近づかれねぇか気を張る必要があるし、逃げられようとしたとき盾にされたら巻き込んで攻撃するわけにもいかねぇだろ。」
「ははっ。」
「んだよ?」
「まとめてたたっ斬る、とか言わないんだ?」
「あん?たたっ斬るぞてめぇ!」
などとキョウカをからかっていると、馬車の速度が落ちた。
「勇者様、前方に人影が。商人では無いようですが…。」
兵士の一人が状況を伝えてくる。
馬車から出ると見覚えのある男が…柳川洋司の姿があった。
「キョウカ、現れた。」
「おう。」
雰囲気で察していたのだろう、キョウカの返事は短く力強い。刀を抜きこそしないが、鞘に左手が添えられている。
だが、アインハルトにとって、これは「いつでも抜刀術を撃てる」という意味だ。臨戦態勢としては最上級だろう。
「まず話すから、いきなり斬りかかるなよ?」
「…。とりあえず黙って聞いてやるよ。」
キョウカの了承も得たところで、馬車を止めて、まずは俺だけが前に出る。




