召喚8
「それでは、我が国を救う為に参上してくださった、勇者様と聖女様に入場していただきましょう!」
部屋から漏れる声と共に目の前の扉が開く。
扉の先には映画でしか見たことがないような豪華なパーティーの光景が広がっていた。
三階分ぐらいまであるんじゃなかろうかというような高い天井に、そこから垂れ下がる巨大なシャンデリア。
広い部屋内にところ狭しと並べられた料理。
ドレス、スーツで着飾っている老若男女の人々。
「さ、行くわよ。」
全てが圧巻の光景で、思わず呆けてしまっていると、隣の矢那さんが声をかけてくれた。
我に返って二人で部屋の中に入場していく。同時にみんなからの拍手が上がる。
「す、すごいんだね。とても滅びかけてる世界なんて信じられないよ。」
部屋のど真ん中を横切り、中央のステージに上がり上から全体を見渡し、感想を漏らす。
矢那さんの話ではこの世界は魔物によって滅亡に瀕しているはずだ。
それなのにこんな豪華な服、食事、建物が用意できているなんて、違和感がある。
「こういった宣伝も大事なのよ。人類はまだまだ戦えますってね。」
なるほど、っと合点が行く。俺たちが昔いた世界でも戦争中に優雅なパーティーを開いていたりしていたらしいから、それと同じような感じなのかもしれない。
「やり過ぎな気もするけどね。」
「え?」
俺に向けて言った言葉ではなかったのだろう。
しかし、それを聞き返す機会は、直後の同じくステージに立つ男(多分召喚したときにいた貴族みたいな服を着た一人)の声によって失われた。
「この二人は悪しき帝国から我が国を救うべく、異世界より馳せ参じてくれたのです!!」
帝国?何のことだろう?この世界は魔物に襲われてるんじゃ?
「何を…言っているの?」
疑問の声は、俺からではなかった。
「帝国?一体…一体、何のことを言っているの?」
それは、矢那さんの声だった。
「聖女様?どうかされましたか?」
震える矢那さんの声に対して和やかな貴族の声。
何故かその対比が空恐ろしいものに感じられた。
「わ、私達の敵は魔物でしょ?」
「何をおっしゃっているのですか、聖女様。」
「魔物など、もう100年以上も前に滅んでいるではありませんか。」




