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第8話:癒えぬ傷跡と、血肉に刻む温もり(前編)

 荒れ狂っていた『灰のヴェール・ガルド』の嵐が、夜明けとともにわずかにその勢いを潜めた。仮小屋の隙間から差し込む青白い暁光が、獣の毛皮で作られた寝具の上で身を寄せ合う二人の輪郭を、淡く、そして生々しく照らし出している。


 セトは静かに目を覚まし、自らの腕の中で丸くなる銀色の髪の少女を見下ろした。ミリアの艶やかな銀髪は汗で束になり、セトの広い胸板に散らばっている。彼女の豊満な胸が規則正しく上下し、安らかな寝息を立てているように見えたが、ふと、その長いまつ毛が小刻みに震え、苦しげな声が小さな唇から漏れ出した。


「いや……やめて……お母さん……っ」


 ミリアの銀色の耳が恐怖に怯えるように伏せられ、彼女の指先がセトの胸の皮膚を強く引っ掻く。そのうなされる姿を見て、セトは彼女が深い過去の闇の底、すなわち悪夢の中を彷徨っているのだと悟った。


 ミリアの脳裏に焼き付いているのは、遥か北方の豊かな森で平和に暮らしていた『銀狼族』の集落が、帝国の純血主義者たちによって無残に焼き払われた夜の記憶だった。当時まだ幼かった彼女の目の前で、父親は帝国の騎士たちが放った業火の魔術によって黒焦げにされ、母親は彼女を逃がそうとして何本もの冷たい槍に貫かれた。燃え盛る木々の匂い、血のむせ返るような鉄の悪臭、そして同胞たちの断末魔の叫び。それらは今でも彼女の魂にこびりつき、決して消えることのない呪いとなっている。


 捕らえられた後の日々は、死以上の地獄だった。帝都の地下深くにある奴隷市場。光の届かない湿った石造りの牢獄で、彼女は他の亜人の子供たちとともに鉄の檻に放り込まれた。与えられるのは腐りかけの残飯と泥水だけ。少しでも反抗的な目つきをすれば、容赦なく鞭が飛び交い、柔らかな肌が切り裂かれた。オークションの舞台に引きずり出される日、彼女は家畜と同じように全身の衣服を剥ぎ取られ、冷たい鑑定の目に晒された。値踏みする貴族たちのねっとりとした視線、下劣な欲望を含んだ笑い声、そして、所有者の証明として背中に焼き付けられた焼印の絶叫するような痛み。


「ああっ、いやだ……熱い……痛いよぉ……っ!」


「ミリア。目を覚ませ。俺はここにいる」


 セトは彼女の震える華奢な肩を両手でしっかりと掴み、低く落ち着いた、しかし確かな熱を帯びた声で呼びかけた。その声にハッと息を呑み、ミリアは大きく目を見開いた。焦点の定まらない恐怖に染まった瞳が、やがてセトの顔を捉えると、彼女の目から大粒の涙が堰を切ったように溢れ出した。


「セト……っ、セトぉっ……!」


「ひどい夢を見たな。だが案ずるな。お前を縛り付けていた鎖も、お前を虐げた者たちも、この俺の領域には決して立ち入ることはできない」


 ミリアは泣きじゃくりながらセトの首にすがりつき、その分厚い胸板に顔を押し当てた。セトの体から発せられる力強い鼓動と、農業魔術師特有の生命力に満ちたマナの温もりが、彼女の全身の震えを少しずつ鎮めていく。セトは彼女の滑らかな背中をゆっくりと撫で下ろした。その途中、彼女の肩甲骨の下あたりにある、かつての奴隷商が刻み込んだ醜い火傷の痕――隷属の焼印に指先が触れる。


 その瞬間、セトの瞳に冷酷な怒りの炎が宿ったが、彼はそれをミリアに向けることはせず、ただ底知れぬ慈愛と支配欲を込めて彼女の身体を強く抱き寄せた。


「この傷跡は、お前が生き延びた証だ。だが、これからは違う。お前の血肉のすべて、魂の隅々に至るまで、俺の熱と魔力で上書きしてやる。過去の絶望など入り込む隙間もないほどに、俺の快楽でお前を埋め尽くしてやろう」


「あっ……セト……っ」


 セトの大きな手が、ミリアの背中の焼印をなぞるように優しく撫でた後、そのまま滑り落ちて彼女の豊満な双丘を鷲掴みにした。柔らかな肉の感触が彼の手のひらに押し潰され、形の良い先端が刺激によって硬く立ち上がっていく。ミリアは先ほどまでの恐怖の涙を、瞬く間に熱を帯びた甘い嬌声へと変えた。


「んんっ……あ、だめ……セトに触られると、あたし、すぐにおかしくなっちゃう……っ」


「いいや、それでいい。お前は俺の前でだけ、そうしてすべてを曝け出せばいいのだ」


 セトは彼女の耳元で囁きながら、銀狼族特有の敏感な獣耳を唇で甘く食んだ。ちゅっ、と湿った音を立てて耳の裏の薄い皮膚を吸い上げると、ミリアの身体がビクンと大きく跳ね、彼女の股間から溢れ出した透明な蜜が、二人が絡み合う毛皮のシーツをさらに濡らしていく。


「ひゃあっ……そこ、あっ、んんっ……あつい、セトの息、すごく熱い……っ!」


 セトの指先は、ミリアの引き締まった腹部を滑り降り、すでに充分なほどに濡れそぼっている彼女の秘裂へと容赦なく侵入した。熱く粘膜がとろけ合うような感触。セトの太い指がその狭く熱い肉のひだを押し広げ、最も敏感な真珠のような突起を的確に弾くと、ミリアは絶頂にも似た甲高い悲鳴を上げて背中を反らせた。


「ああっ! い、いやぁっ……そんなに直接、グリグリされたらぁ……あたし、頭が真っ白に……っ!」


「お前のここは、いつも正直だな。これほどまでに俺を求めて、蜜を滴らせているではないか」


 セトは自らの指を引き抜き、そこに絡みついた銀糸のような粘液をミリアの目の前で見せつけると、彼女は羞恥と圧倒的な快感に顔を真っ赤に染め、潤んだ瞳でセトを上目遣いに見つめた。


「だって……っ、セトの匂いと、大きな手で触られるだけで、あたしのお腹の奥が、ぎゅぅって熱くなって……どうしても欲しくなっちゃうの……。お願い、セト……あたしの過去も、全部忘れさせて……あなたのもので、あたしの奥をいっぱいに満たして……っ!」


 その哀願するような言葉が引き金となり、セトは自らの昂ぶりを限界まで硬くした熱塊を、ミリアの濡れそぼった入り口にあてがった。そして、彼女の瞳を真っ直ぐに見据えながら、一気にその奥深くまで、自らの存在を打ち付けた。


「んがっ……ぁああっ……!!」


 肉と肉が激しくぶつかり合う鈍い音とともに、仮小屋の中に濃密な情欲の匂いが充満する。ミリアの内壁はまるで意志を持っているかのようにセトの熱塊に絡みつき、小刻みに痙攣しながら彼をより深くへと誘い込んでいく。セトの農業魔術師としての強大なマナが、結合部を通じてミリアの体内へと直接注ぎ込まれ、彼女の子宮の奥底から全身の細胞ひとつひとつを爆発的な快感で満たしていった。


「すごい……っ、あっ、ああっ……! セトの魔力が、あたしのなかに入ってくる……っ! 熱い、熱いよぉ……っ!」


「受け入れろ、ミリア。お前の過去の痛みなど、俺がすべて塗り潰してやる。お前は永遠に俺のものだ」


 セトは腰の動きを徐々に激しくし、獣のように荒々しいストロークでミリアを突き上げ始めた。パンッ、パンッと肉を打つ音が小屋に響き渡り、ミリアはその衝撃に合わせて身体を揺らしながら、ただひたすらにセトの首にすがりつき、止めどない快楽の絶叫を夜明けの荒野へと響かせ続けた。過去の冷たい鉄の記憶は完全に溶け去り、彼女の魂は今、絶対的な主が与える灼熱の愛と快楽のなかに完全に没入していた。

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