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風は巡り、再び戻る。~風に導かれた出会い~  作者: Masa&G
第1章 ハーベイの魔道士編
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第57話 アリーシャとウェンティ

ド、ド、ド……ド、ド――


魔鉱三輪を小屋の外へ止めると、そのまま小屋の中へ入る。


「報告してきたぞ。」


前輪の前であぐらをかき、減速板を布で磨いていたアリーシャが顔を上げた。


「おかえりー。」


クリフトはそのまま前輪へ目を向ける。


「どうだ?前輪は?」


アリーシャは手を止め、腕を組んだ。


「とりあえず減速板はきれいに磨いたから大丈夫。動力部分にも油塗ったしね……。」


「あとはエイダさんだな……。」


クリフトが小さく息を吐くと、アリーシャは勢いよく立ち上がった。


「そこ!そこだよ!」


「不可抗力だよ!私は悪くない!クリフトも見てたでしょ?」


ぐいっと顔を近づける。


クリフトは少しだけ体を反らした。


「俺は見てない。」


アリーシャの動きがぴたりと止まる。


「……そっか……そうだよね。」


小屋の中を歩き回りながら、声色を変えた。


『アリーシャ……またやったの?』


『はぁ……雑な乗り方は止めてって言ってるのに……』


『行動記録は全部出してね……』


その様子に、クリフトがふっと笑う。


「エイダさんの真似か?」


「似てるでしょ?自信はある。いつも言われてるからね!」


アリーシャは人差し指を立て、ニヒッと笑った。


「と言うわけで、あとは前輪つけて終わり。」


腰へ手を当て、そのままクリフトへ向き直る。


「そういえば、今日は港周辺で出店いっぱい出てるんだよね?」


「ん?ああ。遠洋に出ていた船の帰還日らしいな。」


その言葉を聞くと、アリーシャはまたクリフトへ歩み寄った。


「じゃあ気晴らしに行こっか!」


クリフトは小さく息を吐く。


「あ……ため息ついたな?」


「ついてはない。」


アリーシャは人差し指を立てる。


「じゃあ破裂菓子買ったげるから。」


「俺は子供か?」


「ふふふっ。そういうことでよろしく~」



一時間後――


破裂菓子をつまみながら港を歩くクリフトの隣を、アリーシャは店から店へ視線を巡らせていた。


「おいしい?」


ふいに顔を覗き込まれる。


「塩味はやっぱりうまいな。」


もう一つつまみ、そのまま口へ放り込む。


「じゃあ買い物付き合ってね!」


アリーシャがニヤリと笑った。


港へ入ると、目の前には出店が並び、人の声が絶え間なく飛び交っている。


鮮魚、干物、野菜――歩くたび次々と目に入り、その間を縫うように装飾品の店も並んでいた。


アリーシャは足の向くまま店を覗き込み、クリフトは少し離れたところから破裂菓子を食べながら、その様子を眺めている。


ふと、一軒の装飾品店の前で足が止まった。


並べられた飾りへ目を近づける。


(キラキラ光ってきれいだな……貝殻かな……。)


視線を滑らせる。


(あ、これもきれい。真珠かな……。)


そっと手を伸ばした瞬間、隣から伸びてきた手と重なった。


「あ、ごめんなさい。」


反射的に手を退く。


隣では、一人の少女が不思議そうな顔でこちらを見ていた。


(銀髪……。)


「お主もこれがほしいのか?」


「え……。」


アリーシャはすぐに笑顔を浮かべた。


「あはは、いいよ。大丈夫。」


「それにあなたのほうがコレ……似合うと思うし。」


ニヤリと笑うと、少女は手元の真珠の装飾品へ目を向けた。


「アリーシャ。まだかい?」


後ろからクリフトの声が飛ぶ。


振り返る。


「もうちょっと見て回りたい。クリフトは先に帰っていいよ。」


「じゃあそうさせてもらうよ。」


片手を上げ、そのまま人混みの向こうへ歩いていく。


(破裂菓子の効果きれたかな……。)


その背中を見送り、小さく首を傾げた。


「男の人はなんでこういう買い物付き合い悪いのかなぁ……。」


少女へ顔を向ける。


「ねぇ?」


「マーベリックは付き合ってくれるぞ?」


「マーベリック?……ああ……クリフトが付き合い悪いのか……。」


アリーシャは少しだけ空を見上げた。


「ふふふっ。ごめんね、変なこと聞いて。」


「じゃあね。」


手を振りながら歩き出す。


少女も同じように手を振り返してくれた。


(さっきの銀髪の子……かわいかったな……。)


人混みの中を歩きながら、ふとその姿を思い出す。


(銀髪とか見たことなかったし。)


笑みを浮かべたまま、次の店を探して視線を巡らせる。


(次はどこ見よっかなぁ……。)


海から吹き抜けた心地良い風が、歩き続けるアリーシャの頬をそっと撫でた。

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