【エピローグ3】介護録完結後の後日譚3(奇跡の確率)
本編をお読みいただきありがとうございました。
こちらは完結した本編完結後の「その後の記録(全3話中の3話)」となります。
母のマイグレーション(施設入所)から少しタイムラグをおいたある日(2026/6/3)の昼下がり、私の中で、一つの「未処理のタスク」が、思いもよらない形で正常終了(Success)を迎えた。
その日、私は簡単な用事を片付けるため駅前の銀行へと歩いていた。
すると、別方向から歩いてくる看護師さんと目が合った。お互いにマスクを着用していたが、一瞬で誰だか理解した。数年間にわたり、母の在宅往診で誰よりも親身になってお世話をしてくれた方だった。
冷静に考えれば、これは天文学的な確率(バグのような奇跡)だ。
時間帯は昼過ぎ。お互いの接点となった道路は、わずか20メートルにも満たない短い距離。しかも互いにマスク姿。そこでピンポイントに遭遇し、目線が合う確率など、いったい何万分の一だろうか。
方向が一緒だったので歩きながら、最初に会釈を交わした。
「お母様は、その後いかがですか?」
「施設が予想以上に合っていたようで、入所した一週間後面会に行った際、施設のスタッフの方と笑いながら肩を組んで話しているほどでした。ありがとうございました」
それを聞いた瞬間、彼女は「それは良かったです……!」と、マスク越しでもはっきりと分かるほどの満面の笑みを返してくれた。
ずっと伝えたかった感謝の言葉と、母の「その後」を、お世話になった人に直接伝えることができ、そして最高のリターン(笑顔)を受け取ることができた。
その瞬間、私の脳内でカチリと音がした気がした。
「ああ、これで私の介護は、完全に終了したんだ」
母を施設に送り届け、実家のクローズ処理をしただけでは、まだ私の心の中のバックグラウンドで「介護プロセス」が常駐し続けていたのだろう。この看護師さんからの問いかけと、奇跡的な遭遇によって、すべての「感謝を伝える」という終了イベントが実行され、真の【完了フラグ】が立ったのだ。
その帰り道、信じられないほどの疲労感が一気に私を襲った。
それは、悲しみや絶望の疲れではない。7年半、一度もプロセスを落とすことなく稼働し続けたメインシステムが、すべてのタスクを完遂し、安全にシャットダウンされたことによる「完全なる安堵の疲れ」だった。
この奇跡のような巡り合わせに、心から納得がいった。
やはり、あの晴天の日に庭に咲いていた名もなき一輪の花から、私たちの旅路は、大いなる何かに祝福されていたのだと確信している。
これで介護録は本当の意味での完結になります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次はこの経験を踏まえた上で、必要なシステム実装に携わる話を
新しく書いていく予定です。




