【第8回 番外編②:HMDを被れば、そこは世界。 — 元旅人がVRで見つけた、もう一つの地平線】
本編では少し硬派なシステムのお話をしましたが、今回は純粋に「VRの楽しさ」について語らせてください。
かつて、目的を決めずに風の向くまま各地を巡っていた旅人だった私にとって、介護による行動制限は、翼をもがれたような苦痛でした。しかし、VR(VRChat)という場所は、私に再び「世界を旅する自由」を返してくれたのです。
1. 玄関を開けたら、そこは「異世界」だった
VRの凄さは、物理法則や地理的な制約を一切無視した、圧倒的な「景色」にあります。
実家の狭い一室で、母の気配を気にしながらHMDを被る。すると次の瞬間、私は現実には存在しない、息を呑むほど美しい異世界のファンタジーフィールドに立っていたり、静寂に包まれた宇宙空間から地球を眺めていたりします。
かつて旅したあの場所の空気感、あるいは一生かけても行けなかったかもしれない空想の世界へ、わずか数秒で「チェックイン」できる。この没入感は、現実の介護で疲弊しきった私の脳にとって、何よりの栄養剤でした。
2. アバターを被れば、誰もが「対等な旅人」
VR空間では、現実の肩書きは一切関係ありません。 私は「介護をしている息子」でも「ベテランエンジニア」でもなく、ただの「アバター」としてそこに存在します。
夜な夜な開催されるVR飲み会では、世界中の面白い人たちと、リアルな酒を片手に(実家での私の密かな楽しみでした!)語り合います。アバターの皮を被り、言葉の壁すら超えて、ただの人間として笑い合い、ふざけ合う。あの時間は、現実の重圧を完全に忘れさせてくれる、魔法のような一時でした。
3. 「VR睡眠(V睡)」という、不思議な安らぎ
私が最も救われた体験の一つに、**「VR睡眠(V睡)」**があります。 VR空間の美しい風景の中で、誰かの気配を感じながら、そのまま眠りにつく。
24時間オンコール待機で、いつ呼ばれるか分からない緊張と孤独に震えていた夜。VRの中に「誰かがそばにいてくれる温もり」があるだけで、私の睡眠は驚くほど深いものになりました。朝、HMDを外して現実に戻る時、心は確実に軽くなっていたのです。
4. 「楽しむこと」は、最高のセルフケア
「親が大変なのに、自分だけ遊んでいいのか」 そう思う方もいるかもしれません。でも、断言します。介護者こそ、本気で遊ぶべきです。
あなたがワクワクして、心から笑うこと。それが、過酷な介護というランタイムを走り抜けるための「燃料」になります。VRは、私にその許可を与えてくれました。
【お知らせ】「VRが救いになるかもしれない。でも、どう導入すればいいか分からない」という方がいらっしゃれば、遠慮なくDMをください。 私が過去の体験から学んだ「VRという新しいOSへの移行手順」を、共に作り上げていければと願っています。
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