第30話 空から落ちた魔王城を引っ越し&リフォームしていたら、怪しい通信室を見つけた
翌朝。
タロウは腕を組みながら、畑の横に墜落した巨大な魔王城を見上げていた。
「……これ、畑の日当たり悪くないか?」
「当たり前よ!! 魔王城よ!?」
セシリアが即座にツッコミを入れるが、タロウの麦わら帽子に乗ったリルは「パパのおうちー!」と無邪気に喜んでいる。
「うーん、夏野菜に影がかかるのは致命的だな。よし、場所変えるか」
「変える!? 家を!?」
タロウは、広場の真ん中で震えている『完璧な岩のテーブル(Sランクの大地の岩竜)』をポンポンと叩いた。
「岩竜ー、ちょっとこれ持ち上げて、あっちの崖に運んで」
『グォォォ……(逆らったら、削り殺される……ッ)』
ズゴゴゴゴゴォォォォッ!!
Sランクの大地の岩竜はビクッ! と体を震わせると、まるで絶対に落としてはいけない「割れ物」を扱うように、冷や汗をダラダラと流しながら、そろりそろりと巨大な魔王城を背中に乗せた。強大なSランク
魔獣が、巨大な城をただの「引っ越しの荷物」として運ばされる異常な光景だ。
「家を持ち上げるなああああ!!」と絶叫するセシリアをよそに、タロウは「崖の上なら景色いいぞー」
と呑気に指示を出し、魔王城はあっという間に島で一番景色の良い高台へと『お引っ越し』を完了した。
「よし、次は中だな!」
タロウたちが城の中へ入ると、そこは問題だらけだった。
魔王軍幹部の座る『骸骨の玉座』、血塗られた『拷問部屋』、地獄の業火が燃える『魔力炉』、そして壁一面の『呪いの装飾』。
「うーん、トゲトゲしてて使いにくいな。よし、改造だ!」
タロウがクワを振るうと、城内の禍々しい施設は次々と姿を変えていった。
骸骨の玉座は、綺麗に削られて家族で囲める『大きな食卓』に。
拷問部屋は、風通しの良さを活かした『野菜の食料倉庫』に。
魔力炉は、地熱を利用した『極上の岩盤浴&お風呂』へと大改造された。
「あ、この壁一面の呪いのマーク(魔王の紋章)、なんか力強くていい模様だな。よし、うちの『家紋』にしよう!」
「……魔王城を家庭用に改造した挙句、魔王軍のシンボルを家紋にしたわね、この人」
セシリアが頭を抱えてつぶやき、その横でクロエも無言で深く頷いている。
「そうだ、リルの部屋も作るか」
タロウは昨日伐採した世界樹の枝と、森で摘んできた光る花を使い、テーブルの端に『小さな妖精ハウス』をあっという間に組み上げた。フカフカの葉っぱのベッド付きだ。
リルは、自分だけの小さくて可愛いお家を見て、パチクリと目を瞬かせた。
次第にその大きな瞳にじわっと涙が溢れ、ぽろぽろと大粒の雫がこぼれ落ちていく。リルは小さな両手で
目をこすりながら、全力でタロウの頬に飛びついた。
「パパ……!」
「だいすき!!」
「おっ、気に入ったか? よかったよかった!」
タロウが愛娘を指の腹で優しく撫でていると、ふと地下へ続く階段に気がついた。
「おや? まだ下に部屋があるな」
「師匠、お供します」
タロウとアレン、おっかなびっくりついてきたセシリア、そして無表情ながらも警戒を怠らないクロエが地下へ降りると、そこには『魔王の紋章』が刻まれた古い重厚な扉があった。
「……ここは」
扉を開けたアレンの表情が、スッと険しくなる。
「魔王城の『通信室』です」
「ちょっと待って、それって……」
セシリアの顔から一瞬で血の気が引き、クロエは無言でスッと短剣を抜いた。
部屋の中央には、禍々しいオーラを放つ『巨大な黒い水晶』が台座に鎮座していた。
「この水晶は、魔王軍本部と直接通信するための装置です。第七偵察基地が墜落した今、下手に触れれば――」
「絶対触るな!! いいわね、絶対に――」
セシリアが叫んだ、その時だった。
「へぇ、こんなツルツルした石で通信できるのかー」
タロウが、何の気なしに水晶を指で「ちょん」と突いた。
ブォォォォォン……ッ!!
「起動してるううううう!?」
黒い水晶が明滅し、部屋全体に不気味な光が走る。
そして、水晶の奥から『ザザッ……』というノイズ音と共に、低く、地の底から響くような恐ろしい声が聞こえてきた。
『……こちら中央司令部』
その圧倒的な魔力と威圧感に、セシリアもアレンも、そして常に冷静なクロエでさえも、文字通り氷のように凍りついた。
「お? 繋がったぞ」
『第七偵察基地。……応答しろ』
「本城よ……魔王の本城に繋がっちゃったわ……ッ」
セシリアが涙目で小声で震える中、水晶の向こうの『静かな声』は、わずかな違和感を察知したように低くトーンを落とした。
『……誰だ。そこにいるのは、誰だ』
沈黙が落ちる地下室。凍りつく勇者と暗殺者
そんな中、タロウだけは不思議そうに真っ黒な水晶をのぞき込み、首をコテッと傾けて口を開いた。
「え?」
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