第八十五幕
「ええ…… 元から、そんなに話すことも無いから。別に良いわ。それより……」
姫は、頬杖を付くと、男を横目に眺める。
「貴方は、いつまでそうしてるつもりなの、オルディボ」
「姫様が、また変なことをしでかさないか見張りを頼まれているんですよ」
男は、僅かにため息を吐くと、天井を視野に入れた。
「あらそう。ちなみに、貴方の仕事は、今も昔も私が変なことをしないか見張ることだったんだけど。やっと思い出したのかしら?」
「ハァ…… そうでしたね。最近は落ち着いてきたと思っていましたが、私の勘違いだったのかもしれません。……それで? なぜ、あんなことを?」
姫は、少し口を籠らせた。なぜ? それは、こっちのセリフよ。ただ、今は直接問いただす様な真似は避けた方が良い。この男が、黒なのは状況からも分かりきっていること。ならなぜ、こんな事を聞いてくるのか。それは、私が口を滑らすのを期待しているから。現状、私はまだ本を盗んでいた事を認めてはいない。
だからこそ、この男は私が本を盗んだと口を割らせに来ている。そうなれば、私の罪は確定して更に最悪な結果が待ち受けているに違いない。
姫は、スッと視線を逸らした。
「貴方は、私が犯人だと思ってるの?」
「…………どうでしょう」
男もまた口を籠らせた。
「私には、なんとも…… ただ、状況からしてみれば本は姫様の枕元から現れました。前日、その枕を使っていた姫様が、その本の存在に気付かなかったとは思えません。更に、当日は姫様と、ミーシャ様以外、誰も部屋には入っていませんから。状況だけ見て判断すれば、と言う話です」
「そう…… 随分と論理的ね。ただ、一つ見落としてるわよ」
姫は、男に鋭い視線を送った。
「貴方も…… 部屋に入る事は可能だったはず。しかも、その時は、都合良く私は居なかったからね。やりたい放題だったんじゃないの?」
「"姫様。私を疑っているのですか"」
男は、いつになく真剣な面持ちだった。良い顔するじゃない……
「…………どうかしら。状況からしてみればって話よ。論理的じゃない?」
姫が挑発的な笑みを見せると、男は無言で応える。
「……この話はやめにしましょう。互いに罪をなすり付け合ったところで何も解決しません。今は、一刻も早く姫様の潔白を証明しなくては……」
「あら、私が犯人だって疑ってたんじゃないの?」
「状況から見ればと言う話です。違うのですよね? なら、真犯人がいるはずです。それをどうにかして……」
「何よ。そんなことしなくたって潔白ぐらい簡単に証明出来るじゃない」
姫は、そう言うとベットから立ち上がり男に詰め寄った。
「『私がやりました』貴方が、お父様にそう言えば、それで終わりなんだけど?」
冷たい声。姫の鋭い瞳に男は言葉を詰まらせる。
「姫様、それは…………」
「貴方知ってる? 護衛っていうのはね。主人の身代わりになる為にいるのよ? ねえ、オルディボ。私の身代わりになりなさいよ。本望でしょ?」
男は、完全に口を止めた。何を考えているのか、両者の間に静寂が流れる。
「…………。そう言えば、お食事がまだでしたね。今お持ちします」
話をはぐらかす様に扉へと向かう男。姫は、その様子を無言のまま横目で追った。
自分が死ぬ覚悟は、無いみたいね。ダッサ……
そう言えばなんだかんだ85話まできましたね。初期の予定では100話くらいで終わらせようかなって考えていたのですがw
もしかしたら、100話に近づくにつれ文章量が増えていくかもしれません。ちょうど100話で終わらせるには後半すごい頑張らないとですけどw
今回も、読んでいただきありがとうございます! では、また次回で。




