第八十六幕
「食事の後は、礼拝の時間になりますがいかがなさいますか。皇帝陛下も、礼拝の際に礼拝堂に向かうことは許可しておりましたが……」
男は、扉を僅かに開け、外に置かれていた食事を手に話した。当然、この礼拝にはミーシャも参列することだと思う。なら、その場を借りてなんとかミーシャとコンタクトを取るためにも参加しないわけにはいかない。ただ、問題は、この男に気づかれずにどうやってコンタクトを取るかだけど……
「お父様達は、参列するの?」
「皇帝陛下ですか? 陛下でしたら早朝に宮殿を出ました。しばらく、外に顔を出していなかったですからね。ただ、明後日には、また宮殿に寄られるようですよ」
「そう…… まあ、そうよね。もう、ここにいる理由も無くなったものね」
姫は、どこか黄昏れる様に窓の外を見つめた。
なぜ、お父様がミーシャをこのまま、生かしておいたのか。一つ、考えられる事がある。それは、私の誕生祭の日までミーシャを私の代わりとして建てておくため。もちろん、ミーシャを殺害すれば、私はミーシャの代わりとして18の誕生日にベルク王国へ向かうことになる。そうなれば、あの本の通りに私は、殺される。
「姫様、ここに置いておきますね。礼拝まで時間もあります。ゆっくりどうぞ」
男は、姫のすぐ側の机に食事を並べた。
「どうも」
姫は、素っ気ない態度を見せた。
ただ、そうなれば、お父様にも不都合になる。私は、本を盗んだ罪で継承権を失っている。ただここで、ミーシャが死ねば、この帝国に皇位継承権を持つ者がいなってしまう。
そうなれば、帝国議会、更には教会の幹部達が黙ってはいない。後継のいない王に未来はやってこない。お父様も、それを理解しているからこそ、ミーシャを生かした。多分だけど、私が解放され継承権が復帰したと同時にミーシャは殺される。
「一つ聞いても良くて?」
「私に応えられる範囲であれば構いません」
姫は、男に鋭い視線を向けた。
「お父様は、明後日に戻ってくるのよね。いくらなんでも早すぎない? 公務も溜まっているはずでしょ。わざわざ何のために戻ってくるのかしらね?」
男は、何か言い辛い事情でもあるのか、僅かに応えを躊躇った。
「……姫様の処遇を決めるためだと聞いております」
「どう言う意味。もう既に罰は受けていると思うんだけど」
「あくまでも現在は仮放免状況にあるとお考え下さい。まだ、罰が確定していないのです。具体的にどの様な処罰が下るかは、その時に伝えられるかと思われます」
「そう…… 通りで、甘いと思ったわ」
姫は、そっぽを向いた。
監禁確定。王国確定。死亡確定。我ながら完璧な論理だと思う。
「ハァ………… タイムリミットは今日を含めて二日間ね」
「私からも、皇帝陛下に……」
「いいわよ。お父様が決める事なんだから。貴方は何もしなくて良いわ。いや、何もしないでくれる? 貴方に出来ることなんて何も無いんだから」
そう言うと姫は、食器に手を付けた。
度々、投稿が遅れてしまってすみません。最近、少し忙しい時期に入ってしまっていて偶に遅れしまうことがあると思います。ただ、投稿は、最後まで続けていきますので、これからもよろしくお願いします!




