第三十九戦
「待ちなさいよ。いくらなんでも話が飛躍しすぎなんじゃない? そもそも、ミリア…… 貴方に、お母様を殺すような動機なんて無いはずよ。レナードだって……」
「そうなの…………? レナード……? ならどうして、貴方は、あの時…… 皇帝陛下に銃を向けたの?」
ミリアの言葉に、場が静まり返った。
「何を話をしているんだ? 皇帝陛下に銃を向けただと…… レナード!」
「レナード…………」
中将は、ただじっと正面を見つめる。周囲の視線など物ともせず、ミリアに鋭い眼光を浴びせる。
「覚えてるでしょ? もう二十年近く前のこと、皆んなで、かつての女帝陛下を討ち取ったこと。私達が叶えたかった夢……」
「もう…… そんなに経ったんだな……」
中将は、ゆっくりとミリアの側へと距離を詰める。その拳を強く握りしめる。
「"お前達が、俺を裏切ってから、そんなに経ったんだな"」
ミリアは、身長差からか僅かな上目遣いで中将を睨みつける。
「裏切り者は貴方ですよ、レナード中将。あの時、オルディボ様が止めていなければ、貴方は皇帝陛下すら手にかけていた。そうなれば、この国は完全に滅んでいました。こうして、野放しにしてもらえているだけ慈悲深いと思いなさい」
「…………お前も、オルディボも、上手くサリエフに丸め込まれたな。何が夢だ…… 俺達が見ていた夢は、そんな家畜みたいな生き方じゃなかったはずだ」
「家畜が夢を見てどうするんですか? ……リアナ様! その男は、昔、私やオルディボ様、そして、サリエフ様と共に、当時の女帝陛下を失脚させた者であり、そしてサリエフ様をも暗殺しようとした、罪人ですよ。危険分子です。ご判断を」
ただ、呆然とした。判断って…… 私に、どうしろって言うのよ。レナードが捕まれば、それを庇った私も終わる…… ミリア? 貴方を…… 信用しても良いの? 貴方は…… 誰の味方なの?
「そうか……」
中将は、微かに呟いた。
「どのみち罪人か…… このタイミングで俺を裁くんだな。ここまで来たら、もう俺を、一人の兵士としては死なせてくれないんだな。ハァ…… 分かった……」
そう言うと、中将は、そっと姫に視線を向けた。
「"俺がやった…… それで良いだろ?"」
場の空気が歪む。
「レナード、どうして……?」
「だが! お前もだ、ミリア…… あの夜、お前は俺と一緒にいた。それに、部屋の鍵はお前の手にあった。お前の協力無しに暗殺は出来ない。リアナ皇女は、あの夜ただ寝ていただけ。俺達二人の犯行…… 約束通り、一緒に地獄に落ちてもらう」
「ええ…… 喜んで。やっと二人っきりになれますね。レナード……」
そっと不敵な笑みを浮かべる。優しく包み込む様にミリアは、中将の手を握る。
" サッ! "
中将は、強く拒絶する様に、その手を振り払う。
「ただし…… 明日になる」
中将の言葉に、ミリアは眉を顰めた。
「貴様! 今さら何を言っとるんだ? 皇后陛下の暗殺を認めておきながら、猶予など得られると思っているのか? この場で拘束する。抵抗するなら……」
「撃つのか? 俺は、構わない。リアナ皇女、よく見ておいて下さい。貴方が目にした光景、それが答えになる。……それに、抵抗するわけじゃない。明日の朝には大人しく捕まる。その前に、ノワール大佐に現状報告と、引き継ぎを行う必要がある。時間をくれ」
「罪人を野放しにしろという気か? そんな、頼みを聞くとでも」
「頼みじゃない。お前も罪人にはなりたくないだろ? 俺が、死んだと外に伝われば、次の罪人は、お前だ。俺の命令に従えガルマン……」
ガルマン中将が、姫の表情を伺う。
「良いだろう。どちらにせよ皇帝陛下が戻れば、貴様は終わりだ。自ら投獄されるというのなら、それに越した事は無い。だが、忘れるなよ? 貴様が、誰の護衛であるか。その護衛が自らの行いにケジメを付けず、主人が、それを良しとしたなら、次に誰が責任を負うのか……」
確かに、ガルマン中将は、私を睨みつけた。思わず、固唾を飲む姫。その直後、ミリアを取り囲む様に海軍が、詰め寄る。
「ミリアよ。貴殿はダメだ。この場で拘束する。良いな?」
「待て、ガルマン中将」
そう言うと、中将は再びミリアの側に詰め寄るて、そっと手を伸ばした。
「リアナ皇女の部屋の鍵を渡せ。もう、お前が持っている意味はない」
中将なら視線を逸らす事なく、そっと持っていた鍵を中将の手のひらに乗せる。
「…………おやすみ。また、明日ね。レナード?」
行くぞ! ガルマン中将の言葉に、その場にいた海軍達は皆、図書館を後にした。直後、中将は手にした鍵を見せつける様に指に通し、コチラに背を向ける。
「リアナ皇女…… 明日の話をしましょう」
また、長く期間が空いてしまい申し訳ありませんでした! 実は、『独裁者の姫』を使ったゲームを制作しようと奮闘するがあまり作品自体が疎かになってしまいました。しかし、ゲームもひと段落したので、また定期更新していきたいと思います。ゲームの件も何かあれば報告したいと思いますので、今後とも『独裁者の姫』をよろしくお願いします!




