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part16 war

紗々殿下快挙。アリサ姫の騎士であらせられる紗々・ウインザーは聖ルカ教会にて大群の魔族に遭遇。それを見事に撃退した。魔族の侵入が相次ぐ東方で今後の彼女の活躍が期待される。ーソフィア誌より抜粋


俺がアロンソに渡した記事はもっと長いものだったがバッサリとカットされていた。

「うーん。やっぱりハインリヒがアリサ姫の下についたことは記事にできなかったか」

「なになに兄者ー」

「ん?なんでもない」

俺は持っていたソフィア誌を後ろ手に隠すと妹の紗々の相手をする。

「さっきなにか読んでたでしょー。独り言いってたよー」

「ああカストリ雑誌だよ」

「なにそれー」

ごまかすために適当なことを言ったがかえってそれは彼女の好奇心に火をつけたようだった。

しかたがないのでさらに嘘をつく。

「カストリっていい意味じゃないよねー」

「大人のたしなみのひとつだ」

「うそだー」

子供には教えられないというと紗々は余計に興味を抱いたようでソフィア誌を掴もうとする。

「わかったわかった本当のことを話すよ」

ここまでくると隠すのも面倒になったので腹を割って話す。

「これは世間で人気のソフィア誌ってやつでお前の活躍が書かれているんだよ」

「へーすごいねー」

自分がこの記事を書いたことまではいう必要はないだろう。

ということで彼女を誉めることにする。

「お前が活躍していて俺も鼻高々って話だよ」

「へへー紗々のすごさがようやくわかったようだねー」

得意気になる紗々であった。

「でさー紗々アリサ姫の部屋に兄者を呼び出すように言われてるんだよねー」

「おー了解」

彼女に言われるがままもとは父の部屋であり今はアリサ姫の居室となっている場所を訪れる。


「お呼び立てしてすみません」

「いえ俺がお相手にできるなら光栄です」

アリサ姫は忙しいようすだった。当然だろう魔族の集団がこの屋敷を襲ってくるかもしれないのだから。

彼女の部屋ではハインリヒとその部下たちがてんてこ舞だった。

「あなたをお呼びしたのはこの事に他なりません」

まさかソフィア誌に記事を出したのがばれたのかと心配になったが別のことだったようだ。

「東方の地については私より詳しいときいています。現場で情報収集していただけませんか」

「承知いたしました」

つまりは伝令役ということだ。

「ねえ紗々はー?」

「紗々には前線で戦ってもらいます」

俺たち兄妹は離れたところで別の仕事をすることになる。

「戦いの指揮は私がとります。なにぶん経験が浅いのでハインリヒたちの力を借りることになりますが」

その言葉にハインリヒが気がついてようで話に割ってくる。

「おい界。お前は伝令役だ。お前が伝える情報に戦局は左右されることになる。覚悟してかかるんだぞ」

「あなた忙しいんじゃないんですか」

「死ぬほど忙しいが一言いっておこうと思って」

真面目なのはいいがそれが自分の首を絞めないことを祈るのみだ。

「ねえ紗々にはなにか一言ないのー?」

兄だけが一言もらえるのが羨ましいのか紗々も便乗する。

「お前はなにも考えず戦えばいい」

「えー考えなくていいのー?」

彼の言葉に不満げな紗々だった。

「こらハインリヒの仕事を邪魔しない」

「えー。ごめんねーハインリヒ」

それを注意すると彼がじゃあなと言って去る。

「これから忙しくなるな」

「そだねー」

俺たちは顔を見合わせてうなずく。

かくして魔族たちとの戦いは始まろうとしていた。


戦い当日。俺は前日まで戦場となる場所の構造をチェックしてそれをアリサ姫に報告していた。

いざ戦いとなれば前線にいる紗々たちの戦いぶりを見つつ後方にいる指令官に戦況を知らせる。

今のところ魔族は数では圧倒していたが警戒しているのか近づいてこようとはしなかった。

「敵は遠距離から攻撃しているようです」

「報告ご苦労さん」

ハインリヒが労いの言葉をかけてくる。

「すると近距離専門の紗々は後方に一度戻した方がいいか」

「そうですね。こちらも遠距離から対応しましょう」

アリサ姫も納得したようで指揮官にそう指示をする。

「彼らは夜になるのを待っているようです」

魔族は夜に強い。松明の明かりなどなくても自由に身動きがとれる。

対する俺たちはできるなら日がくれるまでに決着をつけたい。

「では日がくれてからは防御魔法の徹底を。できることならそうなる前に敵を一掃しましょう」

アリサ姫とハインリヒは同意する。

だがそれを部下たちに伝えるとなると反発が出てくる。

「夜になる前に敵を一掃するなんて無理だ」

「アリサ姫は素人だからそんなことが言えるんだ」

その言葉にアリサ姫はピクリとも動かなかった。

「皆さん聞いてください」

「ここは天王山だと思ってください。これ以上魔族に攻め込められれば東方の地は彼らの手に陥落してしまいます。だからこそできるだけ早く対処する必要があるのです」

「でも俺たちが勝てる保証なんてどこにあるんだ?」

「こうなる前に魔族と早く手を結ぶべきだったんだ」

アリサ姫にとっては聞き捨てならないことが耳にはいる。

「先程魔族と手を結ぶと申した者がいるようですがそれはいずれは我々の敗北を意味することです」

だから決してその道を選んではならないと語る。

「でもハインリヒ殿は確かにそれを進めていたはずですが」

それは悪魔に乗り移られていたときの話だ。

「俺が魔族と協力?本当なのかアリサ姫?」

「……ええ残念ながら」

本当なら知らせたくなかっただろうが彼女はうなずく。

「俺は知らない内にとんでもないことをしていたんだな」

彼はため息をついてから顔をあげる。

「おい皆のもの聞け!俺が今まで何をしたかは忘れろ。これからはアリサ姫と何をしていくかが大事なんだ」

「ハインリヒ殿はアリサ姫の下につかれてから人が変わられてしまった」

「そうだ。どうして俺たち騎士修道会が王国の人間の下につかなければならないのか」

騎士修道会のメンバーは口々に不平不満を漏らす。

それをぴしゃりと止めるアリサ姫は。

「みなさんそれぞれ不満はあるのでしょう。ですが不満が言えるのも今のうちです。魔族が本気を出してきたらこの場にはいられなくなるでしょう」

「だから今は戦いに専念すべきなのです」

その言葉に騎士修道会の人間は言い返す言葉を持たない。

アリサ姫の言葉が正しいからだ。

だがそれをどこかで認めたくないのだろう。

「くっ。小娘にしては言うよのう」

「その小娘にも国の人間としての誇りがあります」

彼女は強気だった。

「私は国王より東方の制圧を任されています」

「国王……あの落ちぶれた国の主のことか」

一笑に伏すといった様子で男たちは嫌みを言う。

それでも彼女は凛とした姿で話を続ける。

「あなたたちは大事な兵士です。なるべくなら犠牲は出したくありません」

「……」

「犠牲を出さないためにも早く敵を制圧する必要があるのです」

彼女の言葉が兵士たちの心になにか及ぼしたようだ。

「俺たち自分のことばかり考えていてなにも考えていなかったのかもしれないな」

彼らはアリサ姫に向かって頭を下げた。

「今までの非礼を詫びよう」

周囲がざわめき始める。

「おい修道会の連中が頭を下げたぞ」

「あの狼藉を働く連中がついに」

騎士修道会の評判は地元でもよくなかったらしい。

だが。

彼らが頭を下げたことにより地元の住民の心境も変化したようだ。

「これからはアリサ姫の言うことも素直に聞いてくれるだろう」

安堵した様子で彼らは話す。

そうこうしている間にも。

「みんなー。紗々が戻ったよー」

妹の紗々が何食わぬ顔で戻ってくる。

「遠距離魔法を使うんでしょー」

撤退するわけではなく攻撃を仕掛けるために前線の兵士たちを戻している最中だった。

「ああ。アリサ姫指示を」

俺が彼女に目配せするとアリサ姫はうなずく。

「行きますよ」

騎士修道会の連中や魔法を習得した騎士たちが詠唱を始める。

そして。

「聖なる力よっ」

光が集まり光線が魔族の集団の中心を貫く。

かくして戦いは俺たちに優勢になった。


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