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part12 dawn

かくして捜査は俺一人で行われた。

途中アロンソと連絡を取りソフィア誌の紙面にハインリヒの疑惑について開けてもらうように頼んだ。


「ハインリヒが夜中どこにいってるか確認しないとな」

それには屋敷のなかを掻い潜る必要があり俺は自信があまりなかった。


「まずはアリサ姫との接触を試みるか」

ちょうど妹の紗々と騎士修道会のトップであるハインリヒのいる時間帯を狙って謁見を申し出る。

「まあお前一人くらいいれても問題なかろう」

ハインリヒは俺の申し出に快諾してくれた。

珍しい。これが嵐のまえの静けさにならなければいいが。

「紗々も一緒に行くー」

妹もアリサ姫の部屋に入ることを申し出た。

「入るぞ」

彼は俺の父が暮らしていた部屋の扉を開ける。

そこは屋敷で一番立派な部屋で王族のものとひけをとらないほど豪奢な装飾が施された部屋だった。

「時間は俺がいいというまでだ」

つまり俺の目的を計りかねているということらしかった。

確かにただの休暇にしては期間が長すぎるし、捜査にしては一人でやっていて奇妙に映るだろう。

「アリサ姫ご無沙汰しています」

久しぶりに国王の一人娘であるアリサ姫に声をかけることができた。

「お久しぶりです界。話は聞いています。どうしてこの場所に来たのですか?」

それは俺が東方の地に戻ってきたことか。

「勤め先から許可が降りて休暇に帰省したのです」

まあ俺の部屋は使えないんですけどね、と笑う。

するとハインリヒが冷たい視線を向けてくる。

「失礼。今はハインリヒの部屋ですものね」

「俺に話をふらなくていい」

紗々が彼のことを朴念人というのがわかった気がする。

というか彼の頭の固さは予想以上だった。

「アリサ姫今の生活はどうですか?」

「今は紗々が毎日訪問してくれてるから助かっているわ」

つまりそれ以外は行動がとれない。

ハインリヒがいかに彼女を囲いこんでいるか分かる。

「紗々もアリサ姫とおやつ食べるの楽しいよー」

気を使ってか妹の紗々が間に入ってくれる。

たぶんこれ以上突っ込んだ質問はできないだろう。そう悟った。

「アリサ姫この部屋からの景色はどうですか?」

「景色ですか」

彼女は俺の意図を図りかねるといった表情で答える。

「東方は今は荒れ果てていますが本来は美しい土地です。私の目で見ても確かに活力のある人々が暮らしていてこれから次第でいくらでも変わる場所だと思っています」

「ありがとうございます」

そういうと紗々は懐から昨日もらったパンを取り出す。

「アリサ姫ー。紗々からのプレゼント」

「まあ美味しそうなパンね」

屋敷のなかで出てくるパンは固くてぼそぼそしたものなのでふわふわのパンは垂涎ものだろう。

アリサ姫はにっこり笑って紗々の頭を撫でる。

「紗々は偉いですね。こうして会うと心が洗われます」

「へへーありがとうアリサ姫ー」

得意気に胸を張る紗々に俺は小突く。

「こらあんまり失礼な態度をとるな」

「えー兄者がかしこまりすぎなんだよー」

それは一国の姫を適当に扱うなんてできない。

「ハインリヒだって紗々よりも雑だよー」

「俺の話はいい」

話題が彼に及ぶとハインリヒは不快そうな顔をした。

得られた情報は少なかったがこれで良しとしよう。

「ありがとうハインリヒ。入室を許可してくれて」

「別にお前が屋敷の元の主だろう」

どうやら彼が俺の部屋を使っているのを指摘したことが心に残っていたのだろう。

「これからどうする気だ」

「昔馴染みと久しぶりに会って話そうかなと」

俺の行動がやはり気になるらしくハインリヒは俺をじっくりと観察している。

「ハインリヒも忙しいんじゃないですか」

「ああ俺も雑務が残っているんだった」

そうして俺たちは解散することになった。


その晩のことだ。

俺は周囲が寝静まったのを確認して自室を出た。今は宿直がいるが移動魔法を使えば彼らの隙をつくことができるだろう。

ハインリヒが自室を出たのを確認して彼の行動を観察する。

行き場所はどこだろう。

彼は屋敷の外に向かうつもりらしい。

「いよいよ捜査らしくなってきたな」

ハインリヒは松明をもってかつて教会があった方角に歩きだす。

「俺は姿を消すか」

防御魔法の一部を使って人の視界に入らないようにする。

明かりも使ったらばれてしまうので月明かりとハインリヒの松明だけが頼りだ。

夜になったせいか肌寒いが俺は我慢して彼のあとをつける。

「やっぱりあの教会か」

かつて俺と紗々が洗礼を受けた教会はボロボロになっていた。

もう魔族にやられて聖職者もやってこなくなったらしい。

なんとも寂しい話だ。

「っと感傷に浸っている場合じゃなかった」

俺はハインリヒが黒魔術を使っている証拠も集めなければならなかったのだ。

カツカツと足音が響く。

俺のではなくハインリヒのものだ。

彼はいったいなにをしているんだろう。

よくよく観察すると彼は特殊な魔方陣を描いていた。

まずい。これは悪魔を召喚する術式だ。

そして気がつけば辺りにはまばゆい光が放たれて一体のモンスターが舞い降りる。

「レヴィ・アタンの召喚完了だ」

ハインリヒはニヤリと笑う。

どうやら彼は俺の存在に気がついていたようだ。

「界、お前に見られたならただで帰すわけにはいかないな」

「俺も悪魔を召喚する騎士団長殿をまえにして帰るわけにはいかないよ」

二人して意見が一致する。

つまりこれからは俺たちの戦いだということだ。

「光よ」

俺は悪魔にたいして魔法を使う。

だが。

「そのくらいの魔法ではこいつに効かないぞ」

ハインリヒは低く笑う。

「くそっ」

俺は思い付く限りの魔法を使った。

だがそのどれもが悪魔に弾かれてしまう。

「これが黒魔術か」

「そうだ。恐れ入ったか?」

余裕の表情でハインリヒは俺を見下ろす。

そして彼も自身の剣を引き抜く。

この剣は殺傷能力は低いとはいえ使い方次第で人を撲殺できる。

刃の切れ味はそこそこだったが騎士修道会の長が握っているとしたらかなり強力な武器になる。

「お前には見られたくなかったんだがな」

彼はそう笑うと上段のかまえで俺に剣を振り下ろす。

「俺も負けていられませんよ」

悪魔とハインリヒと二つに分かれて交互に攻撃を繰り出す。

それをひとつ二つとかわしていき俺は光魔法をもう一度詠唱する。

「天にまします光の神よ……」

今度は悪魔ではなくハインリヒの方に。

すると変化が起きた。

彼は苦悶の表情を浮かべはじめたのだ。

ということは。

彼のなかに悪魔が巣食っているということか。

だったら。

ひとつの可能性が俺の脳裏をよぎる。

ハインリヒは黒魔術をして悪魔を召喚しただけでなく元から悪魔に乗り移られていたんじゃないか。

「なら俺は浄化魔法を使うまでだ」

「待てっ界」

俺の作戦を読み取ったようで彼は悪魔を壁にして浄化魔法を避けようとする。

だが。

「我が主よ、呪われし魂の救済を」

「くそっ近寄るでないっ」

彼は黒魔術でさらに強力な悪魔を召喚しようとする。

「ハインリヒも諦めが悪いですね」

彼の動きを止めるべく俺は一直線に駆け出した。

「ここで一騎討ちといこうか」

実際一対一ならば負ける気がしない。

俺は光魔法で剣を作り出すとハインリヒの心臓めがけて突き刺す。

同時に庇っていた悪魔も光の剣で浄化されていく。

「ならば」

彼は握っていた剣を俺に向け最後の悪あがきをしてくる。

その時。

「兄者ー。危ないよっ」

紗々がやって来たのだった。

これで戦いは俺たち優位に運ばれたのだった。

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