治療
魔法陣に乗り目的の階層を言い目を開けるといつものダンジョンの光景が広がっていた。
違う所はここが5層だと言う事だ、今までの様にゴブリンやトカゲを倒していたのでは俺の生活すら危うくなってしまうので階層を飛ばし新しい強い敵を倒して一日の稼ぎを増やそうと言う計画だ。
何層か飛ばしただけでは何かが劇的に変わると言う訳ではないだうが用心は必要だと思いAKを装備して奥へと歩いて行く。
~天使の腕のイクスの部屋~
私の名前はローライシ・レン。 先日買われた奴隷だ、買われたと言うより命を2度助けてもらったと言った方が正しいだろうか。
今のご主人様はよくわからない、奴隷として教育されて初めてのご主人様だけど聞いていた話とかなり違う。
奴隷はあくまでも便利な道具、使えなくなれば奴隷商人の様に捨てるのが普通だって聞いた。
特に冒険者の持つ奴隷の役割は三つだと言う、戦闘で戦う奴隷・魔法で戦闘、またはライフラインを確保する奴隷・そして前者の二つと兼用になる肉壁としてご主人様を守る奴隷。
愛玩用として奴隷を買う人も居るけど私は顔も焼き爛れて見るも耐えない。
あのご主人様はなんの為に私を買ったんだろう。私をベッドで寝かせたり食事も一緒の物をくれたし・・・考えても分からないけど、どんな命令をされても笑顔で答えよう。
私の短い命が終わるまで
覚悟を決めてひざ元に落としていた視線を上に戻した瞬間視界が真っ白になった。
~ダンジョン5層~
今目の前に初めて倒したモンスター、二足歩行の狼が現れていた。 獣と言えば爪やら牙!そのほかにも使える素材は多いはずだ、しかしそれは倒す俺からしても驚異のはずだ。
油断はせずにAK47で胴体に二発眉間に一発発砲して倒す。
ナイフや剣でも倒せるだろうが銃の方が楽だし自分から危険身を投げる必要もない、弾だって沢山あるしDPもウハウハだからな!それに倒してから分かったがこの狼を倒して得られるDPは100DP、プレイヤー1人を倒した事と違いが無い。 いや銃撃戦や威嚇射撃をしなくて済む分消費弾数はこっちの方が少ない。
次に見つけたのは芋虫だった。
茶色の空に太くて長い体で動きは鈍い・・・・とてつもなくキモイ、絶対に近寄りたくないのですぐにAK47で頭に一発命中させると緑色の体液をぶちまけながら絶命する。 やっぱり昆虫なんだな。
垂れ流れてくる体液に近寄りたくないので後ろに回り込んでからアイテムボックスにしまう。
甲殻類なら素材になりそうだけどこんな芋虫なんて売れるのか?臓物とかかな
結局遭遇したモンスターは獣モドキと芋虫にゴブリンだけだった、トカゲとは遭遇しなかったがゴブリンはどこにでもいるのかな。
ダンジョン攻略終了の恒例行事、死体提出をするべく今日もギルドの路地裏に来た。
わざわざ待たせるのも悪いので今日はいつもの職員さんを呼ばずに先に死体を並べに来たのだ。
アイテムボックスを開き死体をドロップしていくと死体の中に金髪の可愛らしい女の子のアイコンを見つける。
あれ?こんなアイテムあったっけ?
女の子のアイコンをタッチすると 使う・改造する・捨てる。 の項目が出てくる。
見た事がある項目だこれは自立型ロボットなどを使うときの項目一覧だ、試しに改造するを選択すると簡単な人体の立体映像が出てきて上に『破損している為改造できません』と赤い文字で出ている。
・・・・確かにこれは自立型の機械を設定する画面だ、この破損と言うのはそこら中に書いてある火傷や故障と書いてあるやつか
例えば自動警備ロボットを作るとするとこの改造画面と言うのは装備や修理をする画面になる、今も表示されているように軽傷であれば問題なく改造を続けれるが損傷が激しかったり大破していると改造できなくなっている、もちろん損傷している箇所を取り外し新しいパーツに変えれば修理する必要はなくなる。
いつもの職員さんが奴隷は主人の所有物と言っていたがまさかアイテムとして入るなんて想像もつかなかった。
しかもこの火傷と右目右足の欠損と言うのはどう見てもレンの事だろう。
改造画面を消して『使う』を選択する。
「きゃ!?」
「うお!?」
『使う』をタップした瞬間に目の前の芋虫の死体の上にレンが現れた。
どうやら芋虫のブニブニの身体がクッションになって怪我はなかったみたいだ。
「え?え? さっきまでお部屋に・・・え?」
「レン!こっちだこっち!」
「あ!ご主人様!」
キョロキョロしてしていたレンを抱きかかえて下ろしてやる。
「あ、ありがとうございます。 それで一体なにが・・・」
「う、うーん」
アイテムボックスに入ってたから出してみた、なんて言っても何が何だか分からないだろう・・・どう説明したものか
「まぁ俺の力と言うか・・・レンが俺の奴隷だから出来たと言うか・・・うーん」
「?よくわかりませんが分かりました。 説明できないのであれば大丈夫です」
「いいのか?それで」
「はい、奴隷ですから」
笑顔でそう言ってくれる、レンは奴隷だから説明はいらないと言う意味で言ったのだろうけどなんだか申し訳なくなる。
だからと言ってうまく説明できる自信がないので今はレンの気遣いに感謝することにする。
モンスターの死体をギルドに渡した後、レンをおぶり宿へ帰って来た。
レンをベッドに寝かせて再度レンの改造画面を表示させる、先程の説明でも言ったようにこの改造画面では機械の修理、レンの場合は傷の治療が出来ると言うことだろう。
もちろん傷を治すのにはDPが掛かったり必要なアイテムがあったりする、それもこの改造画面で見れる。
そこら中に埋め尽くされている火傷を選択すると必要DPが表示される、どうやら火傷の治療に必要なアイテムなどはないらしい。
「レン、今からその火傷の治療をしようと思う」
その言葉を聞いたレンは体を起こしてこちらに向く。
「い、いえ包帯の交換くらいなら自分で出来ますので」
「いや、包帯の交換じゃなくて・・・まぁそのままで居てみてくれ、もし傷が残ったらすまん」
もしこのままにしててもどっちにしろ跡は残るだろうしこのままじゃ死んでしまうだろうし治るだけマシだろう。
レンは頭の上に?があるかの如く訳の分からない表情をしている。
そんなレンを改造画面越しに見ながら全身の火傷の必要DP、400DPを消費して火傷を取り除く、これで改造画面の方では欠損以外の異常状態はなくなったはずだが・・・
改造画面の視界の端へどかしてレンを見る。
「あ、あれ?痛みが・・・・」
「包帯取ってみろ」
「はい」
火傷の時の体液などが固まっているのでペリペリと剥がすように包帯を取ってく。
包帯の下から出てきたのは火傷で爛れた皮膚ではなく白い綺麗な肌だった、どうやら火傷の跡は残らなかった様だ。
「・・・え? え?」
レンは心底驚いた様で何かの幻かと目をこすっりもう一度見ても火傷が治っているのを見ると次は体のいたる所の包帯を取り始め、どこにも火傷が残って居ない事を見るとペタペタと火傷で醜く焼き爛れていたはずの肌を触りながらぽろぽろと泣き出した。
「傷が・・・火傷が治ってます・・・・火傷が・・・」
「よかったな」
「・・グスッ・・・はい! ご主人様のおかげです二度までならず三度まで・・・」
泣いて感謝されるとムズ痒いがもし立場が逆でも毎日痛みを味わってしまいにはもうすぐ死ぬと言われるほどの火傷を直されれば俺でも相手の足を舐めるだろう。
実際はDPを払って操作画面でタップしただけなのだけどDPだってタダじゃないし感謝されてもいいと思います!
しばらくしくしくと泣いた後、ベッドを下りて俺に向き直り深々と頭を下げた。 片足が太ももから無いので足は外側に出しているがまるでDOGEZAだ。
「まぁそんなにかしこまられると俺がむずがゆいから寝ててくれ、まだ目も足も治ってないんだから」
「痛みはありますけどこれは仕方ありません、左目が残ってるから見えますし大丈夫です」
「いいから寝てろって地べた這いつくばられると汚い」
「・・・はい」
しぶしぶとベッドの中に入っていく、それを見た俺は改造画面を正面に戻し操作を開始するが画面の後ろからじーっとレンが俺を見つめているせいで気がそれてしまう。
操作画面を少しずらして「なに」と短く聞くと
「なにかお仕事を、と・・・」
「ないから今は寝とけ」
こいつは足のない状態でなにをするつもりなんだ
再度画面を戻し目と足の欠損を選択すると必要アイテムに再生薬と100DPと出てくる。
元々ここ数日で手に入っていたDPは1100DPで先程400DP使い今は700DPしか残っていない、この再生薬は自分が爆発や斬撃によって欠損(もちろん腕が吹っ飛ぶとかは規制でしない)したときに回復に使うアイテムだ。 もしかするとゲームでも人造人間とかキメラとか作ったらこんな物を要求されていたのだろうか、俺は偵察ロボットくらいしか作ったことないので分からないが。
とにかくこの再生薬は欠損専用の回復アイテムなので作成には500DPと安い薬代に修理代の100DP合わせて600DPが必要になる、そうなると今治せるのは目か足どちらかになる。
今の階層で狼モドキが100DP芋虫が50DPで運が良ければ一日、最低でも三日以内にはもう一個出来るが・・・・問題はそれだけではない、洞窟状になっているダンジョン内で銃を使っている今発砲音が響き近くの冒険者を呼び寄せてしまう可能性があるのでサプレッサーを作りたいと思っていたのだ、銃声が聞こえなくなるのは寂しいが。
「もしも」
「はい?」
「もしも足が元に戻れば逃げるか?」
奴隷は主人には逆らえないのは分かっているが、奴隷なんて誰でも嫌だろうもしかすると隙を伺ってたりするのかと思い聞いてみた。
「そんな事思うはずないじゃないですか! 奴隷だからって言う理由を抜きにしてもありえないです!わわ!?」
と凄い剣幕で断言されてしまった。
レンは勢いよく身を乗りだしてしまったので一瞬ベッドから落ちそうになった。
「じゃあ足と目どっちが治ると言ったらどっちがいい?」
「な、治る・・・? 痛みがなくなると言う事でしたらどちらでも・・」
「・・・怪我をする前に戻るとしたら」
「それでしたら・・・・足、がいいなって思います・・けど・・・あまり夢を見せてからかわないでください、もうあきらめてますから」
少しだけ考える素振りを見せた後スッと悲しい表情になりゆっくりと足を見つめながらつぶやく。
「でもいいんです、歩けなくても私に出来る事でご主人様を」
聞こえるか聞こえないか微妙な小さい声でぼそぼそと呟いているレン無視して操作を続ける。
デジタルプリント画面を開いてアイテム制作の項目に移動する、アイテム制作も武器制作の様に基本的には自由に作れるが先程の様にこの怪我にはこの薬、この修理にはこのパーツと言った決まった物が存在するためにサンプルがあるのだ。 もちろんすべての怪我や状態異常を完治させる万能薬と言うのも作ろうと思えば作れるがそんな物を作ればDPをバカ食いするだけなので必要な物を必要なだけ作る方がいいのだ。
サンプル検索に再生薬を打ち込みサンプルから作成する、作成したアイテムを手元に出してそのままレンの改造画面を出して『この欠損を治しますか?』の選択肢の『はい』を押し、今出ている操作画面をすべて消してレンに注目する。
「・・でも・・・私だって・・・・え?きゃあ!?」
もげている箇所を触りながらブツブツと自分の世界に入っていたレンだが光りながら現れていく自分の足に驚きの声を上げて軽くパニックになっている。
確かにいきなり自分の足が生えてくれば誰でも気持ちが悪いだろうな。
「あ、あし!? 誰の?わたし!?う、うご!?きゃあ!」
突然現れた足を動かしてバランスを崩したらしくベッドにまた倒れてしまう。
そんな姿を見て声を上げて笑う俺に気づき頬を赤らめている、どうやら落ち着いた様だ。
「ベッドの上で、なに一人踊りしてるんだ、はははは」
「うぅ・・ごめんなさい・・・だって・・・」
「どうだ、足問題なく動くか?」
「えっと」
恐る恐るもう一度自分の足を触り感覚も動くことも驚き、ベッドから降りてピョンピョンとジャンプしている。
初めは戸惑いの表情を見せながらゆっくりと一回一回慎重にジャンプしていたが回数が増えると楽しそうに笑いながらジャンプしていた。
「ご主人様!見てください! 足です!足ですよ!」
「問題なかったみたいでよか、うお!?なにを」
さっきまでジャンプしていたレンがいきなり俺に飛びついて来たので驚いたが耳元で聞こえる声を聞きレンの背中を撫でてやる。
「本当に、本当にありがとうございます・・・ありが・・グスッ・・ありがとうござ・・・うわああん」
レンが泣き止むまで俺はその体制のまま背中を撫で続けてやった