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西方騎士団

次の試合を行うに当たり、ヴグレたちとリエラは、情報を共有していた。


「西方騎士団の部隊と、俺たちは戦う」

「西方騎士団……」

「ボクたちは南方騎士団のグループだから、西方騎士団や東方騎士団のグループと戦うことがあるんだ」

「そ。北方騎士団は、間に西方と東方があるから、接点がないんよ」

「中央騎士団は……」

「中央騎士団にも似たようなグループはある。だが、中央には戦う理由がない」

「え……?」

「当然、中央には王都がある。だから、騎士団の中で最も戦闘力が高い。表立っている団員の時点でな。その隠し玉部隊。俺たちが適う相手じゃねぇ」

「王都……」


王都について、非常に興味をそそられる。が、聞ける雰囲気ではない。


「向こうも、明確な格下と試合するのは無駄と分かっていやがる。全く接触しにこねぇ」

「団長の名前がザンドラってのだけだね。知ってるのは」

「……実力は騎士団トップだろうな」

「団員もチョー強いんよ。ニュースで見るもん」


功績や動向などが担当範囲だけでなく、程度によるだろうが、全国に報告されているらしい。

その中で、強力な魔物や賊を制圧したことなども出回っている。


「……ヴグレ。話を戻そう」


流石に脱線し過ぎている。クワイツはリーダーに提案した。


「あぁ。西方騎士団の長はファナウ。ま、今はどうでもいい」


南方騎士団の長はジュアス。西方騎士団の長はファナウ。各騎士団の状況と併せて、知識として入れておこう。

今回、リエラは誰とも相対することはない。一方的に見ることができるだけだ。


「グループリーダーはザーテック。水龍を使う。使用武器は、剣だな」

「…………」


そこでリエラが首を傾げる。


「……何だ」

「水「のみ」ですか?」

「……隠してなければな」

「そ。試合では見たことないんよ。それがファナウからの指示なのかは分かんない」


過去の試合時点では、水龍のみらしい。それがファナウの指示か、ガチで単体属性なのかは不明。


「次点……かは分からないが、ガフリート。炎龍を扱う。使用武器は斧だ」

「炎龍……」

「二人共、俺たちよりも少しだけ歳が上だよ」


クワイツは補足する。


「最後に、ジオ。一気に年齢が離れて、こいつはジジイだ。土龍を扱う。使用武器は双剣。と言っても、ペアで扱うようなモンじゃねぇがな」


……ペアで扱うものではない?


「本来、それ一本で戦う用、ということですか?」

「あぁ。ジオは、それぞれで両手剣を扱う」

「察しがいいね」


「散々見てきましたから」と言おうとして、踏みとどまった。

これも、なぜか知っている気がする。誰かから聞いたとかではなく、自分の目で見た気がする。具体的にどこで、誰がなどは思い出せないのだが、直感でそう思ったからだ。


「留守番中に見たことあります。まさか、同時に使っているとは……」


咄嗟に、リエラは誤魔化す。記憶の話なのだから、喋っても問題なさそうだが、何となく、嫌だった。

剣についても、王都についても、記憶が関係している。それは十中八九間違いない。が、「気がする」とか「異常に気になる」レベルで、それ以上先がない。世の流れを知れば、何か変わるのだろうか……


「偶然か上で取り決めてんのかは知らねぇが、相手も三人だ。乱戦ってよりは、それぞれがランダムで戦う」

「はい」


乱戦にしない理由を聞いても良かったのだが、上での取り決めとか、実際の殺し合いではないとか、周囲の警戒とか、素人ながら理由は思い浮かぶ。


自分の任務は、この戦いを観察し、相手の動きや龍力差を測ること。

それさえ意識していれば、怒られることはない。


「戦いは、戦闘不能や降参で終わる。殺しはナシだ。相手の騎士団と揉めることになる」


一先ず安心。次の戦いで死人が出ることはなさそうだ。しかし、これは模擬戦闘だから。


「……本格的な戦闘になれば、話は別、ですよね……?」

「……相手の境遇は聞いた事ねぇが、どうせ俺たちと似たようなモンだ。解放できるならそっちの方がいいが、当然相手も似たようなことを思っていやがる。誰だって、不利な立場にいたくねぇ」

「……はい」

「殺す前提で動く理由はねぇが、(将来的に)俺たちの危険因子になるなら話は別だ」


ヴグレたちに相手を支配する気がなくとも、長く支配されてきたグループだ。信用など皆無であるし、反抗的になっても不思議はない。

自分たちも、同じような理由で隣接騎士団とドンパチしているのだ。境遇も、危険度もよく知っている。


「どうなるかは分からんけど、なんにしてもジュアスと決着がついてからよ」


殺しについて気になっているリエラを気遣ってか、イヨイは言う。

予定が先なだけで、殺しが発生しなくなった訳ではない。が、今はそれよりも優先する事柄がある。


「そう、ですね……」

「誰と戦っても簡単に勝てるようになるのが理想だ。お互い全力は出さねぇが、ある程度の力量差は分かるだろうな。それに、隠し玉もある。支配の人生から抜け出すぞ」

「おう」

「えぇ」


リエラが加わり、龍力を扱えるようになったことで、ヴグレたちの士気が上がっている。

この波に乗り、この国を広く知るきっかけになれば、彼女にとってもメリットが大きい。


ベクトルは違うが、リエラも気を引き締めるのだった。

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