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ショートショート集  作者: 桜餅 詩音


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7/11

「理想的な家族」

ほんの少しの時間を、この物語に預けてみてください。

あなたの心に何かが残れば嬉しいです。

矢田は独身だった。だが最近、妻と子供がいる記憶が頭に浮かぶ。

おかしい。結婚した覚えはない。

ある日、帰宅すると玄関に見知らぬ女性が立っていた。「おかえりなさい、あなた」

矢田は混乱した。「誰ですか?」

女性は悲しそうに微笑んだ。「また忘れたの?私、あなたの妻よ」

リビングには小学生の娘がいる。「パパ、おかえり!」

写真立てには、確かに三人の家族写真が並んでいる。

医師に相談すると、「解離性障害かもしれません」と言われた。

数日後、矢田は受け入れることにした。彼女たちは優しく、理想的な家族だった。

だが、ふと気づいた。妻も娘も、一度も家の外に出ない。

試しに外出を誘うと、二人は首を横に振った。「私たち、外には出られないの」

「どういうことだ?」

娘が小さな声で言った。「だって、パパの記憶の中にしかいないもん」

矢田が振り返ると、二人の体が透けていた。

「寂しかったんでしょ?だから私たち、生まれたの」

矢田の手から、精神科の診断書が落ちた。

"重度の孤独妄想症"

お読みいただき、ありがとうございました。

この物語が、皆さまの時間に少しでも寄り添えていたら嬉しいです。

よろしければ、次の話も楽しみにしていただけると幸いです。

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