第一章:「美の楽園のはずだった」2. ゼノンとの出会い
秩序なき違法区域《バベルの路地》。リリアナが美を狂気的に追求する者たちから得た答えとは
リリア・ヴァレンティヌス(17) – 失われた”美”を探す少女。記録能力を持つ義眼を持つ。
エグゼ(年齢不詳) – 電脳建築士AI。皮肉屋だが記憶を失っている。
全17話
《カオスの殿堂》。
それは、この路地の中心にある違法ギャラリーだった。
中に足を踏み入れた途端、リリアは異様な空気に包まれた。
壁には人体を模した彫刻が無数に並び、どれも不気味なほど美しく、同時に不自然だった。完璧すぎる曲線、不自然なまでに対称な顔、そして“生命を剥ぎ取られた”ような冷たい質感。
「——お前の美しさは、未完成だ」
低く響く声が、ギャラリーの奥から聞こえた。
そこにいたのは、一人の男。
ゼノン・クラウザー。
その全身は、まるで大理石で彫刻されたかのように均整の取れた肉体を持ち、異様なほど美しい。肌は陶器のように滑らかで、顔の造形は、どこか人間離れしている。
リリアは思わず後ずさった。
「……あなたが、ゼノン?」
ゼノンはゆっくり歩み寄りながら、リリアを見つめる。
「そうだ。そして、お前は芸術家を名乗る者……しかし、その目は曖昧だ。まだ“美”が何かを知らない」
「……!」
ゼノンは手にした彫刻刀をくるりと回しながら言った。
「美しさは、削り取ることで完成する。完璧な形は、余計なものを排除した先に生まれるのだからな」
「……削る?」
リリアは背筋が寒くなるのを感じた。
ゼノンの周囲には、改造された者たちが静かに立っていた。彼らの身体には、余計な贅肉はなく、骨格すらもデータ改造によって美しく均整を取られていた。
「お前も、変わるべきだ」
ゼノンが、リリアに手を差し出した。
「私が“美”にしてやろう」
《バベルの路地》での美の狂気、いかがでしたか?秩序を失った芸術家たち、彼の異端的な美学——リリアにとって、美の意味を問い直す重要な出会いとなります




