序章「消える名画と最後の楽園」4.《バロック・コード》の手がかり
崩壊する電脳世界で、美を探す少女の旅。失われた芸術と記憶の残響が、最後の“美”を形作る——。
リリア・ヴァレンティヌス(17) – 失われた”美”を探す少女。記録能力を持つ義眼を持つ。
エグゼ(年齢不詳) – 電脳建築士AI。皮肉屋だが記憶を失っている。
全17話
「私は、父の描いた《最後の楽園》を探している」
リリアはエグゼにそう打ち明けた。
エグゼは、しばらく考え込むように沈黙し、それから低く呟いた。
「それは、ただの一枚の絵か?……それとも、“美”の記憶そのものか?」
「え?」
「この世界のどこかに、《バロック・コード》が存在する可能性がある」
——バロック・コード。
それは、人類がかつて“美しい”と感じたすべての記憶が凝縮された、原初のデータ。
「もしそれを見つければ、世界は再び“美”を取り戻せるかもしれない」
リリアは目を見開いた。
「……そのデータが、本当に残っているの?」
「可能性はゼロではない。ただし……」
エグゼは皮肉めいた笑みを浮かべた。
「過去の“美”が、今の君にとっても美しいとは限らない」
——それでも。
リリアは、最後の美を求めることを決意した。
こうして、“絶対的な美”を宿す幻のデータを探す旅が始まる。
彼女の行く先には、まだ見ぬ美と、終末が待っていた——。
美とは何か、芸術は何のためにあるのか。終末の世界を舞台に、少女の旅が問いかける。次章もお楽しみに!