これからのはなし
フィモス村を出発した仙人と五人は、来た時と同じ道を二日かけて走って戻った。
オッサ山の麓に着くと少し霧がかかっていたが、視界に問題はなかったため、そのまま走り続けた。
そろそろ小屋周辺というところで霧が濃くなって前が見えなくなった。
仙人は大きな声で語り掛けた。
「カシアス‼ 儂じゃ‼ 魔法を解け‼」
しかしその問いかけに何も反応はない。
仙人は笑みをこぼして「よくできた弟子じゃ」と言った。
再び仙人は大きな声を出して、今度は呪文の詠唱を行った。
「アキロシ・マギア‼」
そう言うと、深い霧は晴れて行き、仙人と五人はお互いを視認できるようになった。
小屋がある山頂もすぐそこにあった。
仙人と五人が小屋に戻るとカシアスが晩御飯を作って待っていた。
「よう! お疲れさん! お前ら怪我はないか?」
アネッテは応える。
「うん。大丈夫だよ。さっきの霧ってカシアスの?」
「おう! 俺の魔法だ。修行初日にお前らも受けただろ? リウさんがいない時は結解を張って防衛してんだ」
仙人は言う。
「異常はなかったか?」
「はい! この五日間異常なしです!」
「よろしい」
そう話していると、テピベラが現れ「お前ら生きてたか! 一人くらいいなくなっていると思ってたぜ」と言った。
「またまたぁ~。そんなこと言ってアタシらのこと心配してた癖にぃ~」
「ば、馬鹿言うな。この俺がガキの心配なんかするかぁ」
カシアスがテピベラにチーズの匂いを嗅がせる。
「嘘だね。心配し過ぎてここ数日まったく飯食えてなかっただろう」
ご飯の匂いに「ぐぅ~」と腹を鳴らすテピベラは「けっ! イエスタデイに託されたからしょうがなく心配してやっただけだい!」と言ってチーズにかぶりついた。
「素直じゃないねぇ」
仙人、カシアス、五人で食卓を囲い、晩御飯を食べ始めた。
食事は賑やかに行われ、旅による精神と肉体の疲労の回復を助けた。
食事が落ち着いたところで仙人は五人にこれからの事を話し始めた。
「さて、ここからは真面目な話をしよう。ダヴィの事じゃ。エルザを心配する君等の気持ちは十二分に理解しているつもりじゃ。じゃが、ダヴィの姿をフィモス村で見てしまった以上、奴がここへ辿り着くのは時間の問題だと考えるべきじゃ」
エルザの事は一度飲み込み、オリオンは質問をする。
「結解を張っていてもですか?」
「そうじゃ。ダヴィは結解を突破してくる。じゃから、君等をもうここには置いておけない」
「仙人とカシアスと離れ離れになるんですね・・・・・・」
「そうじゃ。君等五人だけで、ある所に行ってもらう」
「あるところ・・・?」
「正直、気が進まんがなぁ。儂には、こ奴等以外に伝手がない」
「どんな人達なんですか?」
「とある秘密結社じゃ。戦争に反対し、オビアスを平和にするため、国の意向に異議を唱える連中だ。そんな奴らだから構成員は皆、優しく誠実ではある」
「何が不安なんですか?」
「言ってしまえば、国をひっくり返そうとしている組織じゃ。そんな所に今の君等を送って良いのか。最近は大人しいが活動次第では、国は黙っていない」
「もしそうなったら、また、逃げることになりますね」
「運が良ければのう。捕まる可能性の方が高いと儂は見ている」
静まり返ったところでガブリエルは口を開く。
「別に大丈夫っしょ! 俺達、怪報倒したんだぜ!」
ガブリエルの楽観的な言葉に他の四人は、最初は驚いたが、得意げな表情を見た四人は張り詰めていた緊張が解けてガブリエルの調子に合わせることにした。
オリオンが「ここまでクリファ先生やエルザ先生、テピベラ、そして仙人とカシアスのおかげで力を付けてこれた」と言い、アネッテが「うん。先生や仙人にいつまでも守られているだけじゃ駄目だよね」と続いた。
「自分達で考えて、そして力を合わせれば」とレンダが言うとサレンが元気よく「なんとかなるっしょ‼」と言った。
五人の前向きな態度に仙人は微笑んだ。
「心配なさそうだな。よし! 出発は明朝だ。ここでの最後の夜を各々過ごしてくれ」
◇◇◇
食事の後片付けを終え、五人が談笑をしているとアネッテが緊張した表情で四人に切り出す。
「みんなに話しておきたいことがあるんだけど・・・」
アネッテの表情から何かを察したのか仙人は「五人とも、ちょっと来なさい」と言って小屋の裏にある開けた場所に案内した。
仙人はそこで焚火を焚いた。
五人が焚火を囲んで座ると、仙人は「安心して語り合いなさい」と言って小屋に戻って行った。
オリオンは言う。
「アネッテ。話したい事ってなに?」
アネッテは恐る恐る口を開く。
「うん。なんで今まで忘れていたんだろって思うんだけど・・・。今思い返せば、魔法を上手く扱えるようになってから・・・多分、クリファ先生から直接教わった後、アルガリドと戦った時からだと思う」
「何を思い出したの?」
「私が故郷の村に火を点けて燃やしたことだよ」




