くびなしオバケがやってきた!(8)
「宇宙一か。これは敵わぬ。」
神野悪五郎は大笑いします。
「愉快、愉快。」
大きな一本足も笑いだし
「こりゃ、脱帽せずばなるまいて。」
とユサユサ揺れると
「降参、降参。」
と言いました。
そして大足の山ン本五郎左衛門は、もう一度
「ええいっ!」
と気合をかけると、お侍の姿になりました。
そして「これ、この通り。」と頭を下げます。
「あれ? さんもとごろうざえもん。お侍さんになっちゃうの?」
シホちゃんは、ちょっと残念です。
だって一本足の山ン本五郎左衛門は、いかにも『オバケの親分』らしく見えていたのですから。
「シホちゃん、そうは言うがな、人形を採らねば、一本足のままでは頭も下げられんからなぁ。」
言われてみれば、その通りです。
そもそも頭が無いのですから、足一本で横になっても
〇お辞儀をしたのか
〇転んだのか
区別がつきません。
「そうかぁ。それで”おさむらいさん”に化けたのかぁ。さんもとごろうざえもんは頭が良いんだねぇ。」
シホちゃんに「頭が良い」と言われて嬉しかったのか、山ン本五郎左衛門は
「それに加えて、一本足のままだと、動くにはピョンピョン跳ねないといけないから、ドシン・ドシンと煩いだろ。」
と得意げです。
すると、それを見ていた神野悪五郎が
「我ならば、天狗のままでも、これこの通り。」
と、負けずに頭を下げます。
そして「山ン本五郎左衛門! 目の玉を”ひん剥いて”しかと見ておれよ!」と言うと、調子に乗って床に手を着き土下座までしてしまいました。
その時です。
障子窓と障子戸の外から
「わあああああ。うわあああああ。」
と大勢が驚いた叫び声がしました。
それもそのはず、外には二人の魔王の手下の魔物どもが集まって、どうなることかとヤキモキしていたのです。
すると親分が二人ともシホちゃんに謝ってしまったのだから、大騒ぎです。
「うおおお、山ン本さまが!」 「神野さまがぁ!」
シホちゃんが覗いてみると――
ぬりかべ・いったんもめん・がしゃどくろ・かまいたち・あずきあらい・ぎゅうき・だいじゃ・ぬっぺっぽう・じゃんじゃんび・ねこまた・おおにゅうどう・からすてんぐ・しょうけら・つるべおとし・おとろし・うみぼうず・すねこすり・もくもくれん・ふたくちおんな・ふぐるまようひ・ぬらりひょん・ぶるぶる…………
数え切れないほどの妖怪・魔物が逃げ出しました。
「うわあああ、神野さまが土下座するほどの大魔王だ!」
「逃げろおおお! 山ン本さまでも敵わない相手だぞおおお。」
「失礼しちゃうわ!」
と、シホちゃんはプンスカお冠です。
「オバケのくせに、シホをオバケみたいに。」
それに、妖怪図鑑でしか見たことの無いオバケがたくさん集まっていてくれたのに、ちょっとしか見物することができませんでした。
「あ~あ、こんなチャンス、二度と無いよ。」
「まあ、良いではないか。彼奴ばらめには、後でキツく灸を据えておく故に。」
と大天狗の神野悪五郎が団扇を振ります。
すると、お盆に山盛りのお菓子が出てきました。
「うまいぞ。一つどうだ?」
「ありがとう、しんのあくごろう。」
とシホちゃんはお礼を言いましたが
「でも、お呼ばれする前に、シホはおトイレに行きたいんだ。」
「かまわんよ。行ってきなさい。」
と、お侍姿の山ン本五郎左衛門が優しく言います。
「待っててあげるから。」
「そうじゃないんだよ。」
とシホちゃんはモジモジします。
「おトイレまで付いて来てよ、さんもとごろうざえもん。」
ハテ? と顔を見合わせる二人の魔王に、シホちゃんは
「一人で行くのは、怖いじゃない?」
と言いました。




