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くびなしオバケがやってきた!(7)

 「ややっ! 見ていたのか、神野悪五郎(しんのあくごろう)。」

と”くびなしオバケ”が言い返(かえ)します。

「今宵(こよい)はオマエの出番(でばん)ではないと云(い)うに。」


 すると神主(かんぬし)さんは

「見張(みは)っておかねば、オマエがズルをしないとも限(かぎ)らんではないか。」

と鼻(はな)で嗤(わら)います。

「キサマとは互(たが)いに魔王(まおう)首座(しゅざ)の座(ざ)を争(あらそ)っている身(み)だからなぁ。」


 ――ナルホド。くびなしオバケと神主(かんぬし)さんとは、魔王(まおう)で第一番(だいいちばん)になろうと競争(きょうそう)してるのか!

 二人(ふたり)の言い争(あらそ)いを聞(き)いて、ちょっと二人の関係(かんけい)が分(わ)かったような気がしたシホちゃんでしたが

「あれっ?」

とオカシイことに気が付きました。


 「ねえ、ねえ神主(かんぬし)さん。神主(かんぬし)さんは魔王(まおう)になりたいの?」


 だって、魔王(まおう)といったらゲームに出てくる”ラスボス”です。

 神社(じんじゃ)でお祈(いの)りしている神主(かんぬし)さんが、そんなことで良(よ)いのでしょうか?


 「シホちゃん、ワシは神主(かんぬし)などではないぞ。」

と神主(かんぬし)さんがちょっと困(こま)った顔(かお)になります。

「ワシは、この国一番(くにいちばん)の大魔王(だいまおう)。神野悪五郎(しんのあくごろう)である!」


 シホちゃんは承知(しょうち)しません。

「だって、神主(かんぬし)さんの服(ふく)を着(き)てるじゃない? やっぱり神主(かんぬし)さん以外(いがい)には見えないよっ!」


 「うっ……。」

 シホちゃんの攻撃(こうげき)で、神主(かんぬし)さんの服(ふく)を着(き)た神野悪五郎(しんのあくごろう)が固(かた)まってしまったので、かわいそうに思ったのでしょうか”くびなしオバケ”が助(たす)け舟(ぶね)を出します。


 「シホちゃん。あの服(ふく)は衣冠束帯(いかんそくたい)といって、神主(かんぬし)だけしか着(き)ることができない服(ふく)ではないんだよ。そうだねぇ、例(たと)えば結婚式(けっこんしき)の時なんかだと、貸衣装屋(かしいしょうや)さんでレンタルだってできる。」


 「そうなんだ!」

とシホちゃんはビックリしました。

「ごめんね、しんのあくごろう。借(か)りてきた服(ふく)に文句(もんく)言って。」

 結婚式(けっこんしき)に借(か)りるくらいなのだから、レンタルのお金も安(やす)くないはずです。


 「今宵(こよい)の客(きゃく)は、”こまっしゃくれた”稚児(ちご)であることよ……。」

と神野悪五郎(しんのあくごろう)は溜(た)め息(いき)を吐(つ)くと

「これなら、どうだっ!」

と気合(きあい)を入れました。


 すると、ぽんっ、という音(おと)と共(とも)に、神野悪五郎(しんのあくごろう)は天狗(てんぐ)に姿(すがた)を替(か)えました。

 真(ま)っ赤(か)な顔(かお)で鼻(はな)が大きな大天狗(だいてんぐ)です。

「これぞ、我(わ)が真(しん)の姿(すがた)なるぞ。畏(おそ)れ入(い)ったか!」


 シホちゃんは大興奮(だいこうふん)です。

「てんぐさまじゃ! てんぐのしわざじゃ! しんのあくごろう、カッコいい!」


 「なにっ? シホちゃんには天狗(てんぐ)がカッコいいと見えるのか!」

 ”くびなしオバケ”はビックリしたようです。

「それなら吾輩(わがはい)も真(しん)の姿(すがた)を拝(おが)ませてやろう。」


 ”くびなしオバケ”が「ええいっ!」と気合(きあい)を放(はな)つと

ドオォォン!

という地響(じひび)きが起(お)こり、”くびなしオバケ”は大きな足(あし)に姿(すがた)を替(か)えました。

 奥座敷(おくざしき)の天井(てんじょう)まで届(とど)くような、大きな大きな一本足(いっぽんあし)です。

 ゴツゴツした感(かん)じで、硬(かた)そうな毛(け)がモジャモジャと生(は)えています。


 「吾輩(わがはい)こそが、この世(よ)で一番(いちばん)の大魔王(だいまおう)、山(さ)ン本(もと)五郎左衛門(ごろうざえもん)なりィィィ!!」


 しんのあくごろうが自分(じぶん)のことを”日本一(にほんいち)”って言ったから、さんもとごろうざもんは”世界一(せかいいち)”って言ったのだな、とシホちゃんは思いました。

 「じゃあ、シホは宇宙一(うちゅういち)ィィィ!」


 宇宙一(うちゅういち)なら、日本一(にほんいち)や世界一(せかいいち)にも負(ま)けません。


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