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また新丈は、間違った正義を振りかざした。花嫁を呼び出し、再度妾に成れと迫った。しかし今回は夫婦でやや子が出来たと報告したのだった。
すると、新丈は怒り狂った。
「貴様!我が妾に何するぞ。出会え!!」
新丈の護衛がわらわらと飛び出した。
全員刀を若者と花嫁に向けた。
「待っておくんなまし。」
その時、妾の中でも妖艶な美女が、扇子をパシンと鳴らした。
「なんだ、お前は黙っていろ。」
「新丈様。流石に他の男のやや子を宿った妾など外聞が悪うございます。新丈様にはもっと見目麗しい女子がお似合いかと。」
緊張感漂う中、美女は平然とシャナリシャナリと歩き、新丈の腕に凭れかかる。
「それに、正妻様をもう直ぐお迎えになる身。」
「そうよのう。」
新丈は嬲るように二人を見て嗤った。
二人は、ただ土下座して許しを乞うだけだ。
そして、立ち上がり妾達を腕に抱き、背中を向け去っていった。
しかし、ほっとする間もなく…
「殺せ。」
若者は、花嫁を瞬時に抱きあげ走った。
「新丈殿!」
美女は驚きに目を見張った。この美女は妖魔の一種なのか、手から糸を出し護衛を引きとめようと絡め取った。しかし、新丈の護衛は数十人にも上った。それほど地位のある男だったのだ。
「ワシの妾のくせに!!」
--そして…二人は半分狂ったような新丈に嬲り殺されたのであった。
若者は…憎悪の余り鬼となり、新丈をその手で屠った。
そのまま、鬼となり地獄へ落ちる覚悟をした時だった。
地獄の王【閻魔】が現れた。鬼となった若者は頭を垂れ閻魔の沙汰を待った。
「お前の悲しみは如何にも深く、妻と子を想う気持ちは此方の胸を打つほどである。しかしながら、鬼となった罪及び人を屠った罪は重罪である。よって、私の部下となりて悠久の時を過ごす罰を与える。今日よりお前の名は【紅蓮華】泥の様なカオスの世界に咲く美しい紅色の華じゃ。お前の泥のような憎悪の中にも妻子を想う綺麗な心が潜んでおる。その憎悪を紡いでくれる娘と出会い、愛をもう一度取り戻した時罪は許されるだろう。そして、許された暁にはお前に【八寒地獄】を任せよう。お前の妻と子は、既に転生の輪に入っている。安心せい。」
紅蓮華と名付けられた鬼は、妻と子が亡くなった岩山へ戻り、もう会えないが転生の輪に入った二人の幸せを願い、しゃがみ込んだ。
「もうし。もうし。」
その時だった。あの時見た美女がやってきた。
「なんだ。」
「我は、お前を新丈殿の名代で討伐に参った。」
「…お前は俺の仲間じゃないのか。」
美女は、明らかに普通の人間では無い。
「ああ、そうさ。我もまた、新丈に無理やり連れてこられた絡新婦の子孫。本来我も殺される存在だったが新丈の名代で討伐・封印をすれば見逃してくれると、ありがたーいお言葉を頂いてねぇ。」
美女は「ありがたいお言葉」を言った者を思い出して鼻で笑った。
「でもあんた。既に神が介入しているじゃないか。へぇーあんたは【八寒地獄】か。」
「あんた“は”って事は、お前も神に介入されたのか?」
紅蓮華は余り興味無さそうに呟いた。
「ああ。我は【八熱地獄】。しかし、先祖代々男を誑かして生きてきた罪は重くてねぇ。あんたの傍で悠久の時を見つめ続ける罰を受けたのさ。それにあんたの罰が許される条件は我の子孫だそうだねぇ。せいぜい我の子孫が絶えぬよう祈るんだね。」
美女はそう呟いて、今は精神体となった紅蓮華の上に岩を落とした。
「ま、あんたならこの封印を直ぐ破れるだろうが、その様子じゃ妻子に未練たらたら。動かないでしょうね。」
そう言い残し、隣に新丈の躯を埋め簡素な祠を建てた。天皇の依頼を遂行したとして褒美をもらい、そのお金で【鬼封岩】の隣に家を建て、鬼封村を作ったのだった。




