名門(時代)
長い、話が進まない。
曹操のくだりは丸ごと読み飛ばしても問題ありません。
さてはて、荊州の大部分を名実共に支配された袁術様ですが政務は全く手をつけていないご様子。まあ、自分もやってないんで他人事じゃないんですが。とはいえ、袁家本流の袁術様麾下ともなれば文官や武官の大部隊が居るんで何かやる必要は全く無いんですがね。
実績のみの叩き上げの人はそういった文官や武官を豪族さんから借りて結局、利権やら何やらを盗られてしまいますしね。袁家万歳、袁術様万歳。
無能な自分でも政策とかを打ち出せる訳ですよ
「あれやってー」
「かしこまりました」
「これやってー」
「はい、喜んで!」
「袁術様はマジ天使だな」
「Exactry(その通りでございます)」
……まあ、色々居ますが皆優秀です。
ぶっちゃけ、袁家は優秀な名士を山ほど抱えてるんで自分で何かをやる必要は無いです。というか、下手に手を出すと邪魔になるしね。はいはい、無能、無能。前回の『豪族さんから兵権奪っちゃうぞ☆』作戦も自分は宴会やら何やらで接待もせずに上座に座ってただけだしね。下手に酌とかすると場が固くなっちゃうしね。袁家の人間は居るだけでいいんです、看板みたいなもんだよ。言わせんな、立ち芸すら無いよ。はいはい、無芸、無芸。
で、政策とかは本当に言うだけ。
「治安、悪いよね」
と自分で言うか袁術様が言えば
「ならばこの私に良い考えが…」
「いやいや、わたくしめに良き案が…」
「前々から秘していた策が、火を噴くぜ!」
とまあ、諸案百般出てくる訳で。まあ、どっかの巨乳褐色眼鏡さんやら、気苦労おかっぱ癒し系巨乳さんやらみたいな
「貴様、天才か…!?」
とか言いたくなるようなのは無くても、無難な服案は出てくるもんです。後は喧々号々、意見を闘わせて貰って優勢ぎみな案を選ぶ、と。
採用された案には豪華褒美もついちゃうぞ、と。あーあ、何も考えなくても何とかなっちゃうと危機感持てないよね。焦りとかも無いし、ダメ人間まっしぐらだなぁ。でも、袁家の人間ってそうならざるを得ないよね。麗羽さんとかはよくもあんだけ自己主張出来るよね、尊敬します。自分とか美羽様はね、居るだけでいいから。むしろ、余計な事考えて無茶ぶりする方が問題です。
讒言、諫言?
ははっ、話し半分は聞いて後は軽く言った人と言われた人に声をかければいいです。あれだね、余計な波風立てたく無いしね。平和にいきましょうよ、平和に。賄賂あるなら給料増やしましょう、汚職があるなら商人から割高で買い物しましょう、不正があるなら皆で一緒に仕事しましょう、あれだね他の太守に比べると人件費とか維持費が高すぎで笑えるね。でも、不満とか貯められて反乱とか起こされるよりはマシだよね。平和が一番、戦争とか勝てる気がしないし、平和に行こうよ。
……ヘタレとか言うな。
ここは南皮、太守に袁紹本初を迎えた幸運に民が感謝する数少ない治安の保たれた地である。各地で蜂起する黄巾賊を鎮圧するのは数に任せた力押しの正面突破、だがそれこそが軍師と自認する数多の者達が望んでも得られぬ理想の戦法。戦う前に勝つ、現在の漢王朝でこれが出来ている勢力は正に有数の『力』を持つ諸侯であり、現代の英雄であった。
袁紹もまた、その英雄の担い手として……
「おーっほっほっほ、華麗に雄々しく前進あるのみですわ!!」
背骨が折れそうな位に背をのけぞらせて、頭の出来を心配されそうな高笑いをしていた。
だが、その姿を虚勢と侮れる者はいない。単純な力押しの戦法の先陣を切る二つの暴威がそれを袁紹の絶対的な『力』を証明する。
「うらうらうらうらー!!
雑魚はどきやがれー!!」
身の丈に匹敵する大剣を腕の力だけで振り上げ、体ごと勢いに乗せて降り下ろし、更に横なぎに薙ぎ払う様は風車の如く風を切り、風を巻き込み、暴風そのものとなり黄巾賊を吹き散らす猛将・文醜。
「えーい!!
死にたく無い人は降伏して下さい!」
金色の鉄槌が唸りをあげて横一線に振り回され、軽装の黄巾賊を枯れ木の如く吹き飛ばす。それに恐れをなして、遠巻きに囲もうとすれば振り上げられた鉄槌が太陽の光に更なる金色に輝きを増して罪人に断罪を降す裁きの審槌さながらに地面を穿ち、爆風が木っ端の如く黄巾賊を吹き飛ばす勇将・顔良。
坂を転がる玉の様に止まる事を知らずに、黄巾賊の大部隊を二本の牙が突き進む。袁家の二枚看板(本家本元)が、袁紹が我が主こそが英雄だ、と大陸全土に届けとばかりに吠え猛る。北袁は黄巾の返り血で赤く燃えていた。
所替わって河南、その小さい体を玉座に抱え込まれる様に座る袁術はぷっくりとした頬を膨らませ、桜の花びらの様な口を尖らせて細く形のいい眉をしかめていた
「うむむむむ……」
間諜からの報告。といっても、機密に類いするものではなく各地の見聞をまとめた程度の報告に過ぎない。本来は漢王朝の政治的な報告や諸侯の動向などを知らなければならない袁術だが、それらの小難しい話にその小さい手の爪先ほどにも興味を持てない性格と年齢である。側近である張勲はそれでこそ袁術様ともてはやし、改善させる気などこれっぽっちもない。袁垓も別に袁術が下手に見識をつけて、賢しらぶった提案などされても困るので放置している。
だが、引きこもりは自分の時間が止まっているのと同様に世間の時間が止まっていると勘違いしやすい、と実体験で知る袁垓は『世間』は常に動いているという実感を袁術に教える一環として『噂話』や『武勇伝』などを含めた世間話を報告させている。
これが軍議は元より、朝議ですらお昼寝時間としている袁術に好評で、各地の諸侯や目ぼしい人物の名を袁術は覚えている。絵本や玩具の少ない時代だ、袁術は子供特有の無限の好奇心や稚気を華々しい武勇伝や変わった逸話などで満足させる位にしか撫柳を慰める事しか出来ないからこその副次効果であった。
士は己を知る者に死し…という言葉もこの時代には既にある。常識知らずの如何にもな暗君である袁術だが、訪れる志士達に
「おー、お主があの……」
という一言は中々に心の琴線に触れる言葉でもあった。
そんな副産物もある一日の楽しみである報告を目を輝かせて
「早く、早く報告するのじゃ!」
と間諜をせっついていた袁術であったが、その日の報告を聴いていく内に最初は楽しみに輝いていた目が不機嫌に曇り、次には眉がしかめられ、中程には頬が膨らみ玉座から身をのり出さんばかりだった姿勢から、間諜の報告から逃げんばかりに玉座に深く体を預け、最後には唾でも吐き飛ばすのかと言わんばかりに口を尖らせていた。
不幸なのはたまたま報告にあがった間諜で、袁術の態度に不興を買った事を知り声は震え、膝は笑い、目には涙が溜まり始める。最後には蚊の鳴く様な尻すぼみの小さい声になっておぼつかない手で報告用の竹簡を巻き綴じて、袁術の顔色を窺う事も出来ずに項垂れてしまった。
広間には気まずい沈黙が満ち、重い空気がのし掛かる。
「さてもさても、袁紹様はご健勝そうで何よりでしたな」
親しげに懐かしげに慶賀を祝う様な口調で、袁垓は暗く光を灯さない目で口火を切る。間諜はいつも通りの袁垓の態度に安心すべきだが、いつも通りではない精神状態では安心など出来る心持ちではない。
「何とかと麗羽は風邪を引かないと言うやつなのじゃ!」
脳天まで響くような金切り声を上げる袁術の言葉に体を震わせる間諜。袁垓は感情を宿さない顔のまま、犬の子を追いやるように手をひらつかせ間諜に退席を促す。
「そうですよねー、美羽様と麗羽様は風邪を引かないですものね」
「その通りなのじゃ、麗羽より先に妾の名前が来るのが当然なのじゃ、うはははははー」
あっという間に機嫌を持ち直して小躍りする袁術と、それを更に囃し立てる張勲を感情のこもらない茶瞳で見る袁垓。一見、頭の悪い主従に心労を募らせる重臣といった感じであったが心中では、
(美羽様のご機嫌を一瞬で有頂天にする七乃さんが有能過ぎて生きるのが辛い!)
とか悩んでいたりする。
そんな呑気な袁術一味であったが、
「しかし、麗羽の二枚看板ばかりが目立つのは納得がいかんのじゃ。折角、妾も二枚看板も作ったのだから麗羽よりも目立たせたいのじゃ」
何気無く袁術からこぼれた一言を、張勲は一瞬にして真意を理解し、笑顔を顔に張り付けたまま真っ青な顔色になり、袁垓は首を軽く傾げた後に無感情な表情を更に強張らせていく。
そんな二人が何かを言わんとする前に袁術は玉座より飛び降り、後ろに控える二人へと満面の笑みと共に指を突き付けるのだった。
「七乃に袁垓よ、文醜や顔良に負けない位に華麗に雄々しい武功を上げるのじゃ!
妾の二枚看板なんじゃから、麗羽の二枚看板なんか皆が忘れてしまうくらいに派手にやってやるのじゃ!!」
腰に両手を当てて精一杯の威厳を出しながら、無邪気に朗らかに全幅の信頼を腹心たる忠臣二人に激励として与える至上の命令。
士ならば一生に一度は忠を捧げる主から与えられたいと願う信頼と期待の至言であった。
「あ、袁垓さん。退職届は袁垓さんに出せばいいですか?」
「残念だが、そういった仕事は文官に任せている。何なら一緒に出しに行こうか?」
「ふふっ、袁垓さんと一緒に何かをするのって初めてかもしれませんね」
「ああ、だが張勲さんが一緒かと思うと心強い。例え、敵が何万と居ようとな」
「足を引っ張らないで下さいね」
「無論、最速で」
初めての戦い(退職)に赴く二人は目の前の絶望(無職)に怯む事なく、長年連れ添った相棒の様にお互いの心うちを理解し、高く掲げた手を打ち合わせ玉座の間に背を向け……
「待て待て待つのじゃ!
な、なんで妾の部下を辞める話になっているのじゃ!?」
映画のクライマックスシーンもかくやという背中が無駄に格好いい二人。それに追いすがる袁術は短い足で長い裾を引きずり玉座から転がり落ちるように駆け寄り、広げた両手を上下に振り回し叫ぶ。
それをうろんげに振り返る袁垓と張勲。
「上司に死ねと言われて死ぬのはちょっと……」
「美羽様、七乃が居なくともお達者で……」
「待てー!
だから何故に去る事が前提なのじゃー!!」
絶望的に話が噛み合わない三人だった。
「ふむふむ、命懸けの命令をするのは物語の中だけなんじゃな」
「そうですよ美羽様、脳みそまで筋肉の武官ならともかく私達みたいなか弱い文官にはもっと知的な仕事を与えて下さいね」
「蛮勇と無謀を勇気と謀略に替えるのが我々の仕事です。我々が竹簡や筆を持ってる時間に鎧や剣を持ってる相手に勝てる道理がありません」
武勇伝や現実より誇張された噂を聞き慣れた袁術にこの世の道理を説く七乃と袁垓。言ってる事はまっとうだが、自分の仕事すら文官に押し付けるこの二人と同じだけ筆仕事をする武官は結構多いという事実は袁術の預り知らぬ処である。仕事しろ、二枚看板。
「んむぅ、では妾が麗羽より目立つにはどうすればよいのかの?」
「そうですねー、孫策さんに全軍の指揮権を預けて走れる処まで走れ、とか言えば目立ちますよ」
張勲が人差し指を顎に当ててとぼけた顔で提案した考えに袁垓は、土煙を立てながら飢えた獣の様に黄巾を巻いた人間を撫で斬りにしていく姿を思い浮かべて背筋を寒くしていた。孫策の恐ろしさはそれを実現する能力よりも、他の者ならば理性を失った獣にしか見えないその姿に、恐怖よりも美しさやしなやかな生命力を感じさせるという処にある、と言うのを袁垓は想像するだけで気が滅入る位に思い知らされている。
そんな袁垓の憂鬱など気にも止めずに、袁術は長年悩んだ悩みが解けたとばかりに顔の真ん中に寄せていた皺を花開く様にほころばせて、
「おお、では早速……のう、七乃?」
「はい、何でしょうか美羽様」
「それをすると妾の手元に兵士が居なくならんかのぅ」
「さっすが、美羽様そこに気付くとは天才です!
いつもは何も考えない脊髄反射の単細胞わがままっ子なのに保身だけには頭が回る小者の器。よっ、天下一の三下属性、小賢し、木っ端め、姫様めっ!!」
「うはは、妾の護身は完璧なのじゃー!」
拍手をしながら袁術をおだてる張勲と当初の目的を完全に忘却して小躍りを始める袁術。袁垓はその横で陰気な光をした目で遠くを見る。見えないはずの『外』をみる。遊堕に流れるここではない『外』をみる。そこにあるのは……
兗州陳留にて。
ここ最近、黄巾を頭に巻いた『黄巾党』と呼ばれる賊を討つ事で名を上げしめた乱世の勇者が一人、姓を曹、名を操、字を孟徳。
金色の髪を螺旋に結いて垂らした奇抜な髪型と鋭く激しい感情を瞳に込めつつも深い知性を湛えた青い目が印象的な少女が玉座にて悠然と片肘をついて座り、立ち並ぶ才気煥発、一騎当千の部下共を見下ろしていた。
「ようやく、尻尾が掴めたわね。貴女にしては随分、手間取ったのではないかしら佳花?」
玉座にほど近い場に立つ耳のついたフードを被った少女が両手を併せて掲げ、頭を下げる。
「恐れながら申し上げます。黄巾党には明確な指令系統は存在せず、その正体は大海を流される木っ端の如き寄る辺なく、夜に荒野を歩く盲の様な有り様にすればそれを捉えんとするは、人に聞くは見えず風に訊ねる他は有りません」
主と頂く相手に物怖じもせず、ただ自らの功績を称える前ふりまでする余裕。だが、その翡翠の瞳には己の才を誇るよりもその才を主に捧げられる歓びだけが宿る。
捧げられる本人である曹操すらそのネジれた忠義に心地よさげに頷き、万感の期待を言葉に込める。
「風はなんと応えたか」
「西に流れる風はあり、されど淀み濁りて肥え太る風は南に在りて四肢を失っております」
両手を掲げ深々と頭を垂れるのは姓を筍、名をいく、字を文若。曹操の筆頭軍師であり、その昔、袁紹の元に彼女が仕えていた折に人を誉める事多くとも大言壮語を嫌う袁亥をして
「南袁は地の利を得、北袁は人の利を得た。天の利は今だつかず」
とまで言わしめた才気に溢れる人物である。
華奢で小柄な愛らしい外見とは裏腹に自らの才覚に頼む傲慢な性格と、女尊男卑の価値観に惑溺したきらいがあるがその才覚は紛れも無く、弱体化が露出して久しい官軍は元より、黄巾党の討伐で名を成さしめた諸侯に先んじて『各地にうつろう糧食の数字の変動』から黄巾党の本隊を見つけ出した彼女の数字上における才覚は今世に置いて一頭、頭抜けて居るとしか言えないだろう。
曹操は満足げに一つ頷く。
「諸侯に動きは?」
「我が軍が先陣を切る姿をご覧頂けます」
次いで控えていた水色の髪を肩先にザンバラに伸ばした赤い瞳に冷たさを感じる武将が応じる。知性を湛えた目は曹操、筍いくと同じく、しかしその冷たさは知性のみからではなく武を磨き、自らを死地に追いやり、胆を練り上げた者のみが持つ鋭く激しい死活の輝きを放っていた。
「結構、ならば後は征くのみ。雑草は刈りては生え、燃やしては更に生えるのみ。大地に根付く民から生き血を吸う忌々しき雑草を引き抜き、磨り潰してこそ根絶せしめる芥の塵を掃き捨てに征くのみ。全軍全力を持って黄巾の害をこの大陸から消し去るわよ!」
「御意!!」
最も速く、最も猛く、勇み立つは長い黒髪に赤瞳の武将。同じ赤瞳ながら先ほどの武将とは異なり、烈火を閉じ込めた様な燃え上がる極彩を放ち、心身これ前に進むしか無い荒胆が周りをすら燃え上がらせる。
勇と武の夏候淳、知と武の夏候淵。
曹操を支える頭脳に保証され、曹操の口から激励を受け、曹操の両腕に鼓舞されたは曹魏の居並ぶ猛将達。鬨の声も高らかに軍靴を鳴らして軍議の間を後にする。
残るは頭脳たる筍いくと王たる曹操のみ。
これから始まるは大戦。
最初は春に草が萌えるが如く大陸中に燃え広がった『黄巾の乱』は、時間が経つと共に間引かれ追われ、身を寄せ合って巨大な大木となった。
だが、それは目的も年月も無いただ寄り集まった虚ろな枯れ木。動く事すらままならなくなった愚鈍な肉塊。それでも、その巨大さはそれだけで体震え、心すくませる恐怖の具現。事実、曹孟徳は体を小刻みに震わせていた。愛しい恋人の来訪を待ちわびる乙女のように、獲物を目の前にした肉食獣のように。
「ようやく、舞台は整ったわ。漢王朝は農民の反乱すら鎮圧出来ず舞台から降りた。光を当てられたのは自らの力のみを頼りに名乗りをあげた英雄に相応しき役者達。悪役たる黄巾が舞台から降りれば後は英雄が英雄のみが乱舞する乱世が幕開く。そこにその時代にこの曹孟徳があるのは必然かしら、桂花?」
全てを見透かす鋭い瞳を吊り上げて、頬を肌を紅く火照らせ身震いしながらまるで詩人が奏でる叙情詩を歌う様に語りかける曹操の側に傅く筍いくは、
「乱世が華琳様を呼んだのではなく、華琳様の為に時代が動いたに違いありません。乱世は華琳様を彩る飾りに過ぎず、華琳様が覇道を歩むための余興に過ぎません」
熱に浮かれる濡れた瞳で愛に応える娼婦の様に甘く蕩けた囁きを返す筍いく。
「それではまるで私が居る限り世が乱れると決まったようなものね」
小さく笑う曹操に筍いくは
「華琳様以外の者は尋常ならざる時代でなければ華琳様に並び立つ事すら出来ないからでしょう。ああ、叶うならば生涯のみならず永遠に華琳様にお仕えしたいです!!」
心酔し、正気すら疑う様な言葉を寝屋でたわめく睦言の如く告白する。
「ふふ、そうあれば大陸全ては私の元に膝まづくでしょうね」
大言壮語の気負いすらなく、目覚めに顔を洗うような気軽さとそれを当たり前とする自負の覇気。それが曹操、これが曹孟徳、乱世の奸雄、覇者の器が無邪気に笑う。
「我が覇道に立ち塞がる英雄に事欠かないこの時代こそ我が時代。桂花、貴女は付いてこれるかしら?」
「華琳様とならば天下は元より天界も地獄にもお側を離れず常に足元に侍りましょう」
曹操の足をかき抱く様に口付けする筍いくに口角を吊り上げ、愉悦の笑みを浮かべる曹操。
近くからは悲鳴が聴こえていた。自らの命が絶たれる恐怖とそれを信じたくない絶叫の悲鳴が。
それと同時に産まれる歓びとその激痛に弾き出される荒々しくも輝かんばかりに溢れる新たな時代の産声が聴こえて来る。
二つの時代がぶつかり合い、苦痛と歓喜に迸る時代を後世の人々は語り継ぐ。
『乱世』
と。
「おーほっほっほっ、さあ皆さん優雅に華麗に美しく征きますわよっ!!」
ある者は時代の流れに、それと気付かず流されるままに。
「さあ、見に行きましょう。時代が替わる時を、天の意志が現れる雄大なる歴史の刹那にも満たないこの一瞬を!!」
我が身をも焼く大火、全てを押し流す激流の渦中に身を投げ出し、それらをすら制する覇気を全身にみなぎらせ、
「やれる事は少ない、だけど成さねば成らぬ事があるならば止まる訳には行かないものね」
虎視眈々と機を狙い、磨いだ爪牙で時代を切り裂き切り開く時を待つ巨大な虎が。
「こんなにも泣く人の多い時代だから私達は皆の笑顔を守る為に、作る為に行かなきゃ、ね」
夢想と妄想とさげすさまれようと、あるべき理想に身を浸し万丈気焔を吐く龍が居た。
世は乱世。
目に見えない程の巨大なうねりの中に人々は居た。そして、そのうねりすら飲み込む大器を持つ者達が居た。
『英雄』と呼ばれる者達の時代が来たのだ。
「面倒くさい事は孫策に押し付ければよいのじゃ!」
「そうだ、そうだー。能力がある人が仕事をすればいいんだー」
(確かにそれは真理!)
時代に乗り遅れる者達も、また居た。
ようやく主役が揃い踏み。
袁垓さんは脇役Bなのでオープニングとかでハブられる系。
声優とかの表記も脇役B・兵士Cとか兼任される程度。伏線とかじゃないよ、本当だヨ。
次話で黄巾が終われば連合編が最速終了。えっ、戦力強化?
そんな主人公補正ある訳ないじゃないですかー。このお話しは遊堕に退廃的に破滅するお話しです。逆境=終了な詰みっぷりをお楽しみ下さい。




