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第二章 戦い
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響は唖然と見詰めるしかない。唸りながらうずくまる男達をよそに、京は呼吸すら乱れていなかった。
「さぁ、少し遅くなったが宿へ帰ろう。」
何事もなかったかのように響の腰を抱いたまま宿へ足を向ける。
「な…っ、いい加減に放せよっ!」
我に返った響は思い切り京の胸を押した。
「またそんな強がり言って。響、今の自分を分かってる?」
「何言って…っ!」
静かに身体を放されるが、自分の足に力が入らない。
「腰が抜けてるみたいだね。と言う事で却下。良いよね?」
放してあげない、と抱き上げられた。文句も言えない。襲ってきた男達が転がっているここに放置されれば、確実に身の危険を避けられないからだ。
「…くそ…っ。」
せめてもの強がり。怒った顔で視線を逸らした。
腹が立つ。何でこうも調子が狂わされるんだ。
「どうしたのさ、響。」
「…っ!こ、こっち見るな!お前、何か変だ!いつも変だけど…、今はもっと変だ。良く喋るし、やたら…。」
顔を覗き込まれ、慌てて逸らす。お姫様抱っこされている響は、それくらいしか抵抗が出来なかった。
「…やたら、何?」
いつの間に宿に着いたのか、フワリとベッドに下ろされて正面から見詰められる。
京の真っ黒な瞳に捕らえられると、そこから逃れられなくなるのだ。
「…や…やたら触って来るからだっ!放れろっ、オレは寝るっ!」
身体を捻って横を向こうとしたら、今度は足を捕まれる。
な…何だよ、こえーよ馬鹿っ。
知らず知らず涙目になっていた響に、フッと京の笑い声が聞こえた。
「そんなに怯えないでよ。靴、脱がなきゃだろ?…ゴメンね、泣かすつもりはなかったんだけど。俺、何か焦っちゃってたな。酒飲んで楽しくなって、つい…ね。もうしないよ…おやすみ、ひーたん。」
優しく響の靴を脱がし、最後にポンと軽く頭を撫でる。
「ちょっと酔いを醒ましてくる。」
そしてそのまま部屋を出て行った。呆然とその背を見送る。
な…?何だ…ひーたん?!アイツ、壊れたのか?
パチパチと瞬きしながら、混乱する響。
ホントに酒のせいか?だったら何であんな…辛そうな顔をするんだ?
分からなかった。だが、分かりたくもなかったかもしれない。無理矢理頭から追い出し、ギュッと目をつむった。
ひーたん………。




