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第二章 戦い
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「…変な気を使うな、ボケ。」
どう反応して良いか分からず、俯いてフードで顔を隠す。
「俺は気を使っている訳じゃない。悲しそうな顔をする響を見たくないだけだ。だいたい、フードで顔を隠すのは気に入らないんだがな。その顔も髪も、隠す必要はない。響は響だ。他の誰かと比べる必要などない。」
いつもより饒舌な京に、思わず顔を上げて驚いた表情を見せる響。
「な…、何だよ…っ。今日はヤケに喋るじゃねーか。」
「…名前、呼んでくれたかと思った…。ねぇ…、俺の名前呼んで?」
「…っ。」
人通りが疎らになった酒場前の路地に座り込んだままだった。酒のせいか、少し潤んだ真っ黒な瞳を向けて来る京に響は息を飲む。
いつもなら命令してくるのに、何なんだ。今のコイツはいつもより、怖い。
「…っ、…っ!」
声が出せなかった。
「何て顔してるのさ。」
不意に京の瞳が細められる。途端に響の緊張が解けた。
「お…、お前が怖い顔してるからだろ…っ!」
「怖い?…そう、こうやって迫られるのは怖いんだ。」
「っ、やめ…っ!」
グイッと顔を近付けられ逃げ出しそうになった響は、京に腕を捕まれて更に恐怖を覚える。
「おい、おいっ。兄ちゃん達、何閉店後の店先でいちゃついてるんだよっ。」
かけられた濁声に、響の身体がビクッと震えた。それを見て京が鋭い眼差しで見上げる。視線の先にいたのは、夕方響に近付こうとしていた輩だった。
「何…あんたら、俺と響の幸せな時間を潰す訳?」
「わ、わっ?!」
腰を抱きつつ立ち上がるものだから、響は慌てふためいて京にしがみつく。フードがハラリと落ち、その姿があらわになった。
「ひゅー、女みたいな兄ちゃんだなぁ。」
「あぁ、俺達が可愛がってやるよ。こっちに来なっ?」
野太い腕が響に伸ばされる。瞬間、その腕が有らぬ方向へ曲がった。
「ギャー!」
男の悲鳴が轟く中、響は目を見開いたまま京を見る。響に向かって伸ばされた毛むくじゃらの太い腕は、京の蹴り一つで防がれたのだ。
「汚い手で響に触れるな。」
「こ、コイツっ!」
逆上した男達が襲い掛かる。だが、まるでダンスをしているかのように響を抱き留めたまま足一本だけで全員をのしてしまった。




