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第二章 戦い
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「とりあえず朝まではここにいるんだろ。」
既に三つの月が高くに見える。水場に着くなり、ゴロリと横になる響に問い掛けた。
「うるせー。」
だが開口一番に返って来た言葉はこれである。隣に腰掛けたもののそれ以上反応はなかった為、京は響の顔を覗き込む様に再び問い掛けた。
「何だ、怒ってるのか?」
「…それ以上近付くな。」
伸ばした京の首筋に、響の短剣が添えられる。
「…何もしないさ。聞いているんだろ。」
酷く警戒されている事に傷付きながらも、京は両手を上げてゆっくりと元の位置に腰を下ろした。
「…オレはこの大陸を出る。」
ここでさよならだと言わんばかりの響の言葉に、さすがに京も頭に来る。
「おいっ、響っ。何考えてるんだか知らないが、俺は何処までも響と一緒に行くからな。キチンと行き先くらい言え。旅の仲間だろ。」
「…オレはお前と仲間になった覚えはない。」
京の迫力に少したじろぎながらも、命令口調に怒りを感じた。
「まだ言ってるのか。本当に気が強いというか、強情というか…。黙っていれば可愛いのに…とにかく、俺は一緒に行くからな。」
「うるせー、お前はお前で勝手にしろ。オレはオレで好きにする。もう寝るっ。」
「はぁ…。…なぁ、朝は起こしてくれるんだろ?俺を置いて行かないよなぁ?」
「…知らん。」
「なら、抱き着いて寝る…。」
「うっとーしい!朝は出掛けに蹴り起こしてならやる。触るなっ!」
そっぽを向いた響にくっついたら、思い切り蹴られる。それでも耳が赤くなっているのが見えたから、京は満足げに微笑んだ。
※
ボカッと思い切り横腹を蹴られる。寝ぼけ眼で相手を見ると、ムスッとした響だった。
「おはよう、響。本当に蹴り起こしてくれるとはなぁ。」
「うるせー、オレはそう言っただろ。じゃあな。起こしたからな。」
声をかけても起きなかったのはどいつだと、口から出そうになったのを必死で止める。まるで一緒に行きたいみたいじゃないかと、自分の甘い感情に歯止めをかけた。
「あ、待てって。くそっ、本当に行きやがった。」
寝起きに蹴り飛ばされ、それでも響の後を追う。歩きの響には、ベークの歩みですぐさま追い付いた。
「なぁ、乗らないのか?」
後ろを追いながら問い掛ける京。だが響の返答無し。
「やっぱりベークが怖いのか?そうだよなぁ、ここに来るまでも何度か落ちそうになっていたしなぁ。俺が抱き留めてやらないと…。」
「うるせーな!怖くなんかねーしっ!落ちねーしっ!仕方ないから乗ってやらぁ!」
京にまんまとのせられベークの背に乗った響は、後で後悔するのだった。




