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星の雫  作者: まひる
第一章
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1−14

第一章 出会い

14


 通りに出る前にフードを被る。ヒビキは自分の嫌いな女みたいな容姿を隠し、人込みに紛れるように歩いた。


「…何か、何見てもつまんねぇ。買い物も終わってたし、腹も減らないしなぁ。あ、今のうちに宿屋に戻って荷物を持って来て…。って、逃げるみたいでシャクサワるし。あー、もうっ!何かムカつく!」


 本当はキョウに助けて貰った礼を言いたいだけなのに、彼の言葉を聞いてこれ以上近付くのが躊躇われる。ここからは危ないと本能が警鐘を鳴らしていた。


「ん?」


 通りの奥で騒ぎ立てる声が聞こえる。見ると食べ物屋の前でゴロツキに囲まれている誰か…、女の子のようだ。


「何してんだよ。」


 後先考えていない自分。か弱い女の子を囲む下衆(ゲス)な男達に腹が立つ。


「何だぁ?魔導師風情が何の用だ。俺達は彼女に話してるんだよ。」


「嫌っ!」


 無理矢理腕を引かれ、僅かに抵抗する女の子。


「嫌がってるだろっ!」


「うっせーんだよっ!」


 止めに入る響だが、当たり前に力で敵わなわず男に突き飛ばされた。


「っ!」


「…また無茶をする。」


 転ぶかと思われた身体は力強く支えられる。聞こえた低い声に、相手を確認しなくても京だと分かった。


「痛い目を見たくないなら即立ち去れ。」


 奴が威圧する。190cmの大きな剣士の出現に、ゴロツキ共は直ぐさま尻尾を巻いて逃げて行った。


「あ、ありがとうございますっ。」


 女の子に礼を言われても、響は何も返せない。何もしていないのだ。


「飲もう、響。」


 京が声を掛けて来る。いつもの命令口調ではなく、誘うような甘い声だった。


 既に日は傾き、酒場が営業を開始している。どれくらい一人で町を徘徊していたのか分からされる程。


 何も言わず頷いた。


 酒場に入り、適当に京が注文をする。目の前にビールが置かれ、軽く京がジョッキを当てた。


 一息でジョッキ半分を飲み干す京を見て、響は普段飲まないビールを口にする。苦い。けれどもそのままジョッキを空けた。


「もしかして響、イケる口?お代わり!」


 京がそんな響を上機嫌で眺めている。新しいジョッキが目の前に置かれ、再びその半分を飲んだ。


「…オレ…普段、ぶどう酒なんだよな。ビール、苦いな。オレは…甘いな。京に…ありがとうも言えなくて…、敵いっこないのに力を振るう奴等に喧嘩吹っ掛けて…ダメダメじゃん…。結局また助けられて…。」


 頭がボウッとする。空腹で飲み慣れない酒を飲んだからだ。響はまた後悔する。


「良いじゃないか、それでも。独りで生きて行くのに疲れたら、誰かの肩を借りたって悪くはない。…初めて名前を呼んでくれたね。こちらこそ、ありがとう。」


 (アラガ)えない眠さの中、響は京の声を聞いていた。

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