第13音 最後の一人と共鳴の力
朝。
窓から光が差し込む。
ミオはゆっくり目を覚ました。
「……んー……」
昨日の戦いが頭をよぎる。
ゼロビート。
ディストーション。
ノクターン。
そして――
ビート。
「……っ!」
ミオは飛び起きる。
机の上。
そこには、小さなビートがいた。
「おはよう」
いつもの少し間抜けな声。
ミオは一瞬固まり――
次の瞬間、抱きついた。
「うわっ」
「ばか!!」
「急に消えそうになるな!!」
ビートが小さく点滅する。
「ごめん」
その声は少し弱い。
ミオはすぐ気づく。
ビートの発光が不安定だった。
時々、ノイズが走る。
「……まだ壊れてる」
「まぁね」
ビートは軽く笑う。
「ゼロドライブを使ったから」
ミオが真剣な顔になる。
「あと何回使えるの」
沈黙。
そして。
「……わからない」
部屋が静かになる。
「でも」
「今のボクは、一時的にしかゼロビートになれない」
2分30秒
それが限界。
超えれば。
コア崩壊。
完全停止。
つまり。
“死”だった。
ミオは工具箱を開く。
「なら直す」
「え?」
「絶対直す」
机へ大量の設計図を広げる。
音響回路。
共鳴炉。
古いデータ。
ミオの目は本気だった。
「私はヒーローで」
「技術者の娘なんだから」
ビートが少し静かになる。
「……似てきた」
「誰に?」
「……なんでもない」
同時刻。
ヒーロー協会では緊急会議が行われていた。
モニターに映るのは。
ゼロビート復活の映像。
会議室がざわつく。
「本当に本人なのか?」
「いや、でも波形が……」
リズが静かに言う。
「間違いありません」
「ゼロビートです」
空気が張り詰める。
バルクラインが腕を組む。
「ならなぜ今まで隠れていた」
誰も答えられない。
だが。
グラヴィナが真剣な顔で呟く。
「問題はそこじゃない」
「ノクターンがまた動き出した」
「4年前の戦争が終わってなかったってことだ」
暗黒空間。
ノクターンが静かに座っている。
周囲には破音五人衆。
だが。
ディストーションの席だけが空だった。
サイレンスが口を開く。
「ディストーション、消滅確認」
ハウリングが笑う。
「弱カッタ」
デッドエコーが無数の声で呟く。
「だが役目は果たした」
ノクターンが静かに目を閉じる。
「……ゼロビート」
4年前。
確かに破壊したはずだった。
だが生きていた。
しかも。
あの少女の側に。
「運命か」
ノクターンの周囲に黒いノイズが広がる。
「ならば今度こそ終わらせる」
ミオたちは街を歩いていた。
ソラはクレープ。
ルナはアイス。
完全に平和。
「この時間好きだなー!」
「わかる」
ミオも少し笑う。
だが。
ビートだけは空を見ていた。
遠く。
黒いノイズ雲。
「……近い」
「え?」
その瞬間。
街中のスピーカーがノイズに変わる。
キィィィィィ!!
人々が耳を塞ぐ。
空間が裂ける。
現れたのは。
黒い音の塔。
巨大すぎる。
空へ届くほどのノイズ結晶。
「なにあれ……」
ルナが珍しく青ざめる。
ビートが震える声を出す。
「ノイズタワー……」
「4年前にも現れた」
「まさかもう……!」
塔の頂上。
そこに立っていたのは。
サイレンス。
ハウリング。
デッドエコー。
そして。
新たな影。
五人目。
今まで存在しか知られていなかった最後の幹部。
白い仮面。
紫のノイズ。
全身に共鳴装置。
彼は静かに笑う。
《レゾナンス》
破音五人衆、最後の一人。
“共鳴”を操る最悪のノイズ使い。
レゾナンスが街を見下ろす。
その視線は真っ直ぐミオへ向いていた。
「見つけた」
ミオが息を呑む。
次の瞬間。
レゾナンスが笑う。
「君が“鍵”だ」
ビートが叫ぶ。
「ミオ逃げ――」
その瞬間。
レゾナンスの共鳴波が発動。
ミオの中の“音”が暴走し始める。
「っああああ!!」
ミオの身体から虹色の音が溢れる。
街が震える。
ビートの瞳が揺れる。
「まずい……!」
ノクターンの狙い。
それは――
音羽ミオそのものだった。




