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歪愛サイコノワール(Distorted Love Psycho-Noir)

After the Loop ―君の名前を忘れた朝―

最新エピソード掲載日:2026/06/28
忘れたはずの愛は、理由を失っても、消えなかった。

朝、目覚めたとき、
榊晃は「何かを失った」という感覚だけを覚えていた。
理由は思い出せない。
名前も、顔も、何も残っていない。
ただ、その空白だけが、はっきりとそこにあった。
 
同じ日、同じ街で。
彼は一人の女性と出会う。
――白石梓。
初対面のはずだった。
 
だが、彼女といると、
妙に呼吸が合う。
同じ言葉を、同時に口にする。
同じものを、迷いなく選ぶ。
理由はない。
記憶もない。
それでも、どこかで「知っている」感覚だけが残っている。
 
「ねえ、これって偶然だと思う?」
彼女はそう言って笑う。
 
偶然では説明できないほど自然で、
しかし説明できる理由はどこにもない関係。
 
やがて二人は気づき始める。
何かを思い出しそうになるたびに、
この“今”が壊れてしまう気がすることに。
だから彼らは選ぶ。
すべてを知ることではなく、
何も知らないままでいることを。
 
それでも――
 触れた温もりや、
 ふとした瞬間に重なる呼吸だけは、
 どうしても消えないまま残っていた。
 
これは、
「愛を失った後」に残るものの物語。 
そして――
 記憶も理由もないまま、
 人がもう一度誰かを選んでしまう、その瞬間の記録である。
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