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導くもの  作者: アカリ
祝福の光と
23/23

*19 一日目

 朝、窓から入るまぶしい光で目が覚めた。

 ベッドから起き上がり、ぼーっとする頭で考える。


 (なんでこんなにだるいんだっけ? ……昨日は確か、……そう、お城の飾り付けの後に

  ヴァランさんに引っ張られてちょっと手合わせしたような……。

  その途中でリアンが「明日は祝福祭だから」って言って止めに入って……。)


 ん?

 「明日は祝福祭だから」?

 ――あ、そうか。今日から祝福祭ですね。


 窓の外を見ると雲一つない青空が広がっていた。




 導くもの (Uma pessoa para conduzir *19)




 「すごいですね……」


 精霊使いの人たちが姿なき者(ズィ・イノセンテ)を呼び出したみたいだ。

 水の精霊と風の精霊によって氷の細かい粒ができ、それに更に光の精霊が当たる光を調整しているのかきらきらと氷の粒が光っていたり、虹ができていたりする。

 色とりどりの花びらが舞い、空から降ってきている。

 人の形をした精霊が踊っているのも見えるから、普段精霊を見ることができない人たちにとってはこれを見るだけでも「特別な日」というかんじがするかもしれない。


 私とリアン、ザール殿下はお城の窓から外の様子を見ていた。

 お城の前の方にはたくさんの人がいて、この光景を見て歓声を上げているのが聞こえる。

 

 「……の光は……見えるけど……」


 「エメが今回の祝福祭で仕事があるって言ってたんですけど、何やるかわかりますか?」

 「エメ? ……ああ。エメが使役……というか喚ぶことができるのは

  闇の精霊だから、エメの出番は夜だな。

  昼と夜、二回に大々的な“精霊の踊り”があるから。」


 「あそこ――…風の精霊――が…―!? いや、近くに……だから、あれは……」


 「昼と夜の二回って……大変ですよね。」

 

 「――で……か? いいよな……。」


 「大変なのか? っていってもこれが精霊使いにとっては一年の中で一番の見せ場だから

  張り切ってると思うぞ。」

 「精霊使いの方って魔術師(マーゴ)みたいな昇級とかないんですか?」

 「ないな。……ところで、あの状態についてどう思う?」

 「……私にできることは何にもないですね。」 


 リアンって本当に精霊好きですよね。

 そうだな。いっそのこと精霊使いに転職したらいいんじゃないのか?

 いや、それは無理じゃないですか?

 冗談だよ、冗談。

 ……リアンが、ってところがあまり冗談に聞こえないです。


 わかると思いますが、今会話をしていたのは私と殿下。

 その間にリアンは魔眼(ディアブロ・アイ)を発動させて真剣に精霊使いの(というよりも精霊の)動きを真剣に見てぶつぶつとつぶやいていた。

 真剣すぎて私たちには話しかけることができないかんじで。なんていうか、リアンのキャラはこんなんでしたっけ?


 「ああ、そうだ。」


 結論として、リアンは放置で会話を続ける。


 「祝福祭の時に俺の兄妹はこの城に勢揃いって話したよな?」

 「あ、そういえばそう言ってましたよね。」

 「時間のあるうちに行くぞ。」

 「行くって……あれ、リアン置いてきぼりですか?」

 「あいつはあれを見ている間は誰に話しかけられても気がつかないと思うぞ。」

 「ま、まあ、確かに……。」




 「兄様。」

 「連れてきたぞ。こっちが明日の主役、アルベルティーナ・ギラルディーニ。

  魔導師(マイブル)候補だ。」

 「姫様、お初にお目にかかります。」


 立ち止まって姫様に礼をする。ザール殿下は部屋にいた人の隣に立った。

 

 あれ、殿下、姫様……ですよね? 

 

 私が想像していたのはジスレーヌ様に似ているお姫様だったけど、ジスレーヌ様よりもザール殿下に似ている中性的な方だった。髪の色はザール殿下より陛下の髪の毛……つまり玉蜀黍色とうもろこしいろで、目の色はザール殿下と同じ瑠璃色。髪の毛を後ろで一つに縛っていて凜とした雰囲気なところが中性的な感じがするのだろうか? 年齢も関係しているかな?

 


 「ん? 何かついてるよ?」

 

 そう言って姫様が私に近づき、私の髪の毛から何かをとった。

 私と同じくらいの年齢だけど、姫様の方が10cmくらい身長が高かった。……私も伸びる予定ですけどね!

 ちょっと悲しくなった。


 「花びらだね。“精霊の踊り”のやつがついたのかな?

  君のその黒い髪にこの花の色はよく似合うよ。そうだ!

  兄様、今度魔導師(マイブル)になったときに花を贈るのはどうかな?」

 「ああ、いいんじゃないか?」


 この年で女たらし……! しかも天然!?

 姫様はにこにこと悪意のない笑顔でそうやって提案しているが、ザール殿下はにやにやと嫌な笑顔を浮かべて姫様の言葉に同意した。


 「自己紹介がまだだったね。私はパメレシア・オザ・ロジオン。

  皇帝家の直系の末娘。今度の試験でザール兄様と同じ騎士(ナイト)になるつもりだよ。」

 「姉上と違ってパメラは活動的すぎるからな。父上の部下には悩みの種ってわけだ。」

 「はあ……。」

 「別にいいじゃない。そんなことより、君がザール兄様より強いって聞いたよ!

  私はまだ兄様に勝てたことがないんだ。……いずれは兄様よりも強くなるけどね。

  今日、は祝福祭だから無理だけど、祝福祭が終わって一息ついたら……そうだな、

  出来れば私が騎士(ナイト)の試験を受ける前に、手合わせお願いね?」

 

 それは……ちょっと無理、というかできれば遠慮したいというか……ザール殿下と手合わせしたのだって1回きりだし、できればもう二度としたくないし……。

 ザール殿下に助けを求めて殿下の方を見ると、殿下は相変わらずにやにやと笑っている。



 「ここにいたんだ。ザール、僕も誘ってよ。」

 「兄上……今日は父上と一緒だったのでは?」

 「ん、そうだったんだけどね、馬鹿兄が居たから適当な理由つけて離れてきた。」

 「お久しぶりですブノワ兄様、……オビディオ兄様とは相変わらずのようですね。」


 現れたのはブノワ殿下だった。慌てて私はブノワ殿下に礼をする。

 そして周りを確認する。

 今日はマルシアルは一緒じゃないみたいだ。良かった。うん。


 「パメラは久しぶりだね。今回は北に行ってたんだっけ? どうだった?」

 「はい、兄様がおっしゃっていたところでは武道が盛んで、

  私も稽古をつけてもらいました。

  今回は剣だけじゃなく他の武器も習ったんですよ。」

 「そう。役に立ってよかったよ。」

 「……は? パメラ、え、お前何してたんだよ? 父上にそうやって報告したか?」

 「それについては『北では武道が盛んなところもありました』と。

  私が今回北に行った目的はそれでしたけど、父様が見るようにおっしゃっていた

  ことは別にあったので。」

 「兄上、パメラに北に行くように言っていたのはそれがあったからですね。

  道理でパメラが素直に行ったと思ったら……。」

 「いいじゃないか、騎士(ナイト)になる前にそういう体験をしておけば役に立つと

  思ったからね。」

 「ありがとうございました。」


 姫様はにこにこ、ブノワ殿下もにこにこ、ザール殿下はさっきとは打って変わって難しい顔をしていた。

 中々いい性格してますね、姫様も。


 「ティーナちゃんはそんなに久しぶりでもないかな。祝福祭の準備お疲れ様。

  父上に言われて会場作りしたんだって? それでちゃんと完成したところがさすがだね。

  魔導師の試し(マイブル・プルーバ)、がんばってね。もちろん会場で見るからさ。」

 「ありがとうございます。」

 「兄様から聞いたけど、祝福祭初めてなんだよね? どうかな?」

 「精霊の踊りが綺麗でした。私がいた田舎ではさすがにあの規模のものはできませんから

  見ていて新鮮です。これが毎年見れるっていうのはすごいですよね。」

 「うん、私も毎年欠かさずに見てるんだ。

  って言ってもその年によって父様と一緒に色んなところまわんなきゃいけなかったり

  物凄く着飾ることになったりするんだけどね……。」

 「そんな格好するな、とは言わないけど明日の魔導師の試し(マイブル・プルーバ)はちゃんとした

  ドレスの方がいいと思うぞ?」

 「そうだね、久しぶりにパメラが着飾ったところもみたいなぁ。」





 「パメラ、ここに兄様……いるわね。兄様、いくらオビディオ兄様が一緒だからって

  途中で突然消えないでください。行きますよ!」

 「レオーヌが来るならしょうがない、僕は行かなきゃいけないかな。」

 「ティーナ、今は無理だけど3日目にまた会いましょう! ザール、わたくしのために

  ティーナをどこかに連れまわさないでちょうだいね!」


 返事する間もなく、ブノワ殿下を見つけたレオーヌ様はブノワ殿下を連れて部屋を出て行った。

 今の話からすると陛下とオビディオ殿下とブノワ殿下とレオーヌ様が一緒にいるのかな?

 皆さんキラキラ家族だからな……あ、明日の魔導師の試し(マイブル・プルーバ)は全員勢揃い? すご。

 

 「そういえばパメラとティーナは一つ違いだよな。」


 ……それにしては身長が違うな。とぼそっとつぶやいたのが耳に入った。

 事実ですけど、そこは言わないお約束ですよ! 伸びますから、私の身長!


 「そうだ、一つ違うだけなんだよね! じゃあ私のことは敬語なしでいいよ。」

 「は」

 「同じくらいの年齢の子ってお城にも道場にも中々いなくて……いや、

  いるにはいるんだけど私と話してくれるような立場の子じゃないっていうか……。」

 「え」

 「私はティーナって呼ぶから私のことはパメラでいいよ!」

 「あの」

 「学院行けばよかったなって思うところはここだよね。

  学院だったら同世代の話し相手もいると思うんだけど私は勉強より剣だからなあ。」


 血は争えないですね……! ジスレーヌ様並の話っぷりです……。


 遠慮したかったんだけど姫様が悲しそうな顔をしてそれに私が困っていると(金髪青眼に弱いのがいけないですよね、……いや、そうじゃなくても美形には敵わないっていう……。)殿下が流石にやめとけ、と止めに入ってくれた。

 姫様ではなくパメラ様、と呼ぶようにすること、あとザール殿下に接するようにもうちょっとコテコテの敬語から変えるようにということで妥協しました。

 ひめさ、じゃないパメラ様はそれで不満そうだったけど、ザール殿下が何かこそこそと私に聞こえないようにパメラ様に話したらパメラ様が納得していた。


 パメラ様とザール殿下はこれから陛下と何かあるそうで私は退室することになった。


 (夜にエメの出番があるならそれを見に行きたいよなー。

  どこで見ると見やすいかな? クルスさんに聞けばいいかな……いや、忙しいかな。

  じゃあリアンに……)


 その後自分の部屋に戻りながら考えていたことで足が止まった。


 ――リアン。忘れてたけど、もしかして、朝のまま?



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