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1 お勉強します

リタは、今日からオルロー家で見習い勤務だ。キアラとおそろいのお仕着せではりきっている。

とはいえ、彼女はダイの代わりなので、現段階の仕事は、お使いがある時に手紙を届けたりするだけだ。

だから、お使いがない時は、私の部屋に小さなテーブルを持ち込んで試験勉強させている。


私も、数学と古代語の二科目は試験を受けなくてはならないから、一緒に勉強しようと思う。


ピョートル殿下に会うという目的は達成したため、もう最優秀生徒を狙う必要はないし、むしろ彼との結婚の可能性を潰すためには最優秀にならないほうがいい。

だが、不真面目に手を抜いていてはリタに示しがつかない。リタは進級がかかっているから真剣勝負なのだ。まあ、試験の時に、わざと間違えれば、私が最優秀になることはないだろう。


古代語のテキストに素敵な詩があった。

春が来て、花が一斉に咲いて揺れている、そういった様子を描いているようだ。


『花々とともに踊る』

私がぽつんと古代語で詩の言葉を読み上げると、リタが顔を上げて言った。


「花々とともに踊る」


「よくできました。これは、最上級生のクラスのテキストに載っている古代語の詩よ。

とても美しい詩だから、つい口に出ちゃったみたい」


「お姉さま、すてき!よかったら聞きたいです」


そこで、私は古代語で詩を朗読し、そこに描かれた景色を説明した。


「これは、春が来て、一斉に花が咲き始めた様子ね。

泥だらけだった草原が見渡す限りの花畑になって、花が一斉に揺れている」


「オルローの森を思い出します」


「そうね。私は7歳までしかいられなかったけれど、今でも懐かしく思い出すわ」


それから、私たちは、オルロー領の景色や小さい頃の思い出について話をした。


「今でも、オルロー領で魔獣狩りをしていた時に立ち寄った村のおばあさんが、たくさんの焼きリンゴを食べさせてくれたことを思い出します。本当においしかった。


小さいころから、父の仕事の関係で旅暮らしでしたが、オルロー領の人は優しくしてくれて、いい思い出ばかりです。


今でも、魔獣狩り隊に戻りたくなることがあります」


「そういえば、前にリタが学校に行けなかった時期もそう言っていたわね。


いい思い出があるなら、早く戻りたくなるわね。魔獣狩り隊でも、リタが来てくれればうれしいでしょう」


「そうですね。

キアラさんの話を聞くと、勉強できるチャンスがあるから、それを活かそうかなとも思いましたけれどね。



……ライラお姉さま、お姉さまは前と少し変わりましたね。


お見舞いに来てくれた時、お姉さまは、辛いのはわかるけど学園に通わないとだめ、ちゃんと通ってちょうだいとおっしゃっていたから」


「そうね、あの時、リタは辛かったのに、他の道に行くなと強くお願いしてしまったわ。


今思うと、私、嫌な感じだったわね。ごめんなさい」


「いえ、あの時は、私も、お姉さまはきっと私のことを心配して言ってくれたのだと思うのですが、なんだか、学校にどうしても行けない私の辛さをわかってくれない、みたいになって、すねてしまいました。

失礼な態度があったと思います。私こそ、ごめんなさいです」


「ううん、私こそ、結構決めつけはげしかったわ。だから、反省しているの。ごめんなさいね。


でも、もう、お詫びをしあうのは止めましょう。きりがないわ」


「…はい」リタはにっこり笑って言った。


「でも、お姉さま、本当に変わった。

前は、こうしなきゃダメ、みたいな感じだったけれど、すごく雰囲気が柔らかくなったというか。

お姉さまがスビートを助けてくれたから、会いに来た時から感じていました。

あの時も、学園に行かなきゃダメってしかられなかったし」


あら、私、けっこうリタを傷つけていたのね。

私のスキルやリタのお父様がオルロー家に勤めていることなどからすれば、リタから見れば私の言うことに反抗できなかっただろう。

そんな私が、学園に通うように強くお願いしたのだから、学園に行きたくないリタはとても苦しかったのではないだろうか。


「やっぱり、ごめんなさい」

私は謝ったけれど、リタは笑って、もうあやまりっこは止めです、と言うと、お茶を用意しますと言ってぱたぱたと走って行ってしまった。


前世を思い出す前の私と今の私は、同じ人格だと思っている。


けれど、前世を思い出す前は、イヴァン殿下のことを大っ嫌いだったにもかかわらず彼と結婚しなくてはならないと思っていたし、王妃様って嫌味なところがあると思っていたけれど将来の義母だから機嫌を取らなくてはならないと思っていた。

王子妃教育に忙しかったのに、たいして仲の良くない人たちとうわさ話をするために学園に通わなくてはならないと決めつけていたし、それは、私がジュコフス伯爵から頼まれてめんどうをみているリタにとっても当然だと思っていた。


人格が変わったわけではないけれど、前世の記憶があるために、行きたくなければ学校に行かない人生もある、嫌いな奴との婚約を解消したいと願ってもいいというように、視野が広くなった面はあると思う。


これも、転生チートなのかしら。


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