2 ゴシップ記事を読みました
アンドレ先生は仕事に戻られた。
リタはいったん寮に戻ると、あっという間に荷物をまとめて戻って来た。
「早いわね」
「私、自分の身を守れるようになったら、父と一緒に魔獣討伐隊で働いていた関係で、旅暮らしが長いので、引っ越しも得意です!」
「まあ、リタったら。得意なことが多いのね」
「へへ」
リタが、ご機嫌で空き部屋に荷物を運びこみ終わったころには、もう夕方だった。
「おつかれさま、お茶はいかがですか」キアラが私の部屋にお茶を持ってきてくれた。
「私、やります!」
「マルガリータ様、今日はまだお客様ですから。明日からよろしくお願いしますね」
キアラはにこやかに断ると、お茶を入れてくれた。
「リタ、試験の勉強は、どのぐらい進んでいるのかしら」
「ええっと、まあまあ、その……」
「学園にはちゃんと行ったほうがいいと思うわ。キアラも学園出身でしょ?」
「そうですね。
マルガリータ様は将来、オルロー家に勤めたいと伺いましたが、失礼ながら、どういったお仕事を希望していますか?
侍女としてお勤めするつもりなら、主人に代わってお手紙に返事をしたり、お客様にお茶を出したりと、ある程度の教養は必要です。
お金の出入りを管理することもありますから、数学も必要ですね。
【剣神】スキルをお持ちとのことですから、オルロー私兵団に入ることも考えられますが、ただ剣を振るだけではできる仕事は限られます。
幹部としてお仕えしたいのであれば、軍史や軍略論、スキル理論は取っておいたほうがいいでしょう。また、数学を知らないと、兵站の組み立てを理解できませんよ。
魔獣討伐隊も、魔獣が出る季節や出やすい位置など、統計を取って研究させているそうです。統計と言えば、数学ですね!
とにかく、どのような仕事をするとしても、オルロー家では、ただ言われたことをやるだけではなく、自分で考えて働くことが求められています。
学園での学びは、きっと役に立つと思います」
さすが、先生を目指していただけあって、キアラは学ぶことの大切さについて、素晴らしい回答が返ってきた。
ちょっと、数学推し強いなとも思うけど、まあ数学は大事よね。
「……がんばります」リタはちょっとしゅんとしている。
「学年末試験はいつだったかしら」
「12月16日から1週間です」
そうだわ、確かアル戦の12月のイベントは、1日が生徒会主催の弁論大会で、16日が学年末試験だったはず。ゲームでは、試験期間は16日だけだった。進行の都合だろう。でも、実際は1週間かけて試験をするのね。
一日で進級や卒業に必要な試験を全部受けるのは無理だと思うけれど、そういう細かい設定までは強制力が及んでいるわけではないのね。
「私も、卒業するために試験を受けなくてはいけない科目があったはずだから、一緒に勉強しましょうね」
「はい!」
「そういえば、スキル理論はレオニード先生がお休みされているみたいだけれど、試験はどうなるのかしら。
最上級生は、卒業論文を出すことになっていたと思うけれど、下級生は試験で評価するのでしょ?」
「魔法研究所から講師の先生が来てくれて、授業も試験もちゃんとやってくださるそうです。
……ライラお姉さま、レオニード先生と、なにかあったのですか?」
「……卒業論文を出した時に、お休みする予定だと伺っただけよ」
レオニード先生の正体がピョートル殿下で、殿下は教師を辞めるご予定だと聞いているけれど、この情報は、どこまで人に伝えてもいいのかしら。
わからないので、リタには申し訳ないけれど、ごまかす。
「ライラお姉さま、実は、学園の新聞部が出している新聞に、こんな記事が載っていました」
リタが学園新聞を鞄から出して見せてくれた。
「活版印刷?」
思わず、どうやって印刷しているのかを突っ込むと、リタがジト目で言った。
「印刷のスキル持ちがいるみたいですよ。そんなことより、ここです!ここ!」
リタが指さしたところを見ると、速報で、レオニード先生が私を抱えている姿のスケッチと『レオニード先生に熱愛発覚!?お相手は、婚約解消したばかりの最上級生、卒業後すぐに婚姻予定?教師休業のまま退職か!?』という見出しが掲載されていた。
『スキル理論担当教師レオニード先生は、生徒会の顧問としてイベントを仕切り、最上級学年の学年主任や進路指導などを一手に引き受け、地味だが実はよく見るとイケメンでファンも多い、頼れる兄貴分だが、先日、休職に入られた。休職理由は説明がなかったため、様々な憶測が飛び交っていたが、この度、アル学新聞部は決定的な情報を入手した!
25日早朝、ある最上級生の女子生徒を横抱きにしたレオニード先生の姿が目撃されたのだ!
その女子生徒に親しい筋からの情報によると、女子生徒が早朝の散歩中に倒れたところをレオニード先生が偶々発見し、女子生徒を保健室まで運んだという話だが、女子生徒はもともとスキル理論を熱心に受講しており、さらに最近、かねてから念願だったとある高貴な方との婚約を解消したばかりだ。スキル理論を最終学年まで7年間受講し、卒業論文まで書いたのは、実は、地味だができる男、レオニード先生に着目していた可能性もある。
女子生徒は、もうすぐ卒業だが、卒業後、女公爵になると見込まれており、レオニード先生であれば、公爵配偶者として立派に家を盛り立てていけるだろう!
我々生徒は、二人の恋の行方を穏やかに見守りたい!
猫さん(匿名、レオニード先生のファン)のコメント:
レオニード先生には、生徒会の仕事などで本当にお世話になっていて、すごくファンだったのですが、いつも完璧でとっつきにくいと思っていた憧れの先輩が先生に身を預けている姿を目撃し納得しました!すごくお似合いの二人だと思います。今日は思い切り泣いて、明日から応援したいです!』
あら、こんな記事になっていたの。大変だわ。
ライラ、のんきだね(;^_^A
この記事を見る限り、学園内では、レオニード先生がピョートル殿下だということは知られていないようですね。




