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余2 ダイとアン3

更新が遅くすいません。

広大な雪原の真ん中に、紅白のストライプ柄のサーカステントがぽつんと立っている。

テントの入り口は開いているが、そこに人間の足跡はない。


と、中からピエロが出てきてちょっと離れたところで用を足した。

紅白のストライプのつなぎのような道化服で、顔には道化師の仮面をかぶっている。


ピエロはテントに戻りながらつぶやいた。

「また、あのじいさんは、入り口を閉め忘れた。ばあさんが寒がるだろうに」


テントの中には、観客席も舞台もない。ただ、テントいっぱいに白いドラゴンが眠っている。


ピエロは、黒いストーブに薪をくべると、どこからともなく取り出したアイテムを磨き始めた。


いきなり、テントの入り口が開いて、細身の若い男が入って来た。男の青い髪の毛が、ガスの炎のようにちらちらと揺れている。


「じいさん、入り口閉めろ」


「……口うるさい、孫だな、ダイ。

ダイナ鉱山の青き炎…とあだ名される私が、…お前に……気安く、しゃべることを、許しているからと言って……つけあがるなよ」

男は、文句を言いながらも、テントの入り口の布を元の位置に戻した。


「ありがとう、じいさん。気を付けるよ」

ダイはあっさり折れて、またアイテムを磨き始めた。


このように落ち着くまでは、なかなか大変だった。



この男は、眠っているばあさんドラゴンの番で、火の属性を持つエンシェントドラゴンだ。


千年ほど前に喧嘩して、ばあさんが「顔も見たくない。もう来るな」と言ったことを真に受け、ばあさんのなわばり近くでひたすらにばあさんをストーキングしながら、ばあさんが許してくれるのを待っていた。


そして、10年前、自分のなわばりに侵入したツチャビッチ・ミトロヒナを追いかけてダウリポリ近辺で暴れ、村を二つ消滅させた。この際、この男もけがを負い、ひたすらに自分の巣で眠っていたようだ。

ばあさんは、風のにおいでこの男がけがをしていることに気が付き心配し、大量にけがを治すための魔道具を買い集めるなどしていたが、反面、男が怪我をしているのに番であるばあさんを頼ろうとしないのは浮気をしているからかもしれないと疑っていた。


そんなとき、ばあさんのなわばりに侵入者が現れ、イライラするばあさんをなだめるため、ダイが、ばあさんの家の床に転がっていた「誓いの指輪」をばあさんにはめさせてやったところ、「誓いの指輪」をはめたのは、許されたからだ思い込んだこの男が、ばあさんのところにやって来た。

男は、ばあさんの巣に行く途中、ドラゴン笛を吹いている人間、ボリス・サハロフを見つけ、うるさいなと手を一振りした。ボリスは死んだ。

一方、ばあさんとダイは慌てて男を迎えに行った。

そして、些細な理由で、ケンカが始まった。



このドラゴンどもめ、バカップルか、とダイは何回も思った。


ばあさんがはめている指輪が自分が送った指輪でないだの(男がばあさんに送った「誓いの指輪」はばあさんの宝の山から発掘された)、ダイとばあさんが必要以上に親しそうだだの(ばあさんが、「こいつは私の孫みたいなものだ」と男をなだめると、男はダイに自分を祖父だと思えと言い出した)、自分といない間もばあさんが幸せそうにだっただのと男がぐちぐち文句を言ったかと思えば、ばあさんも一々つまらないことで起こるなんてけち臭いなどと言い返し、さらに今まで男が連絡しなかったのは浮気していた証拠だとかなんだとかいちゃもんを付けた。


それだけならいい。


問題は、二匹がヒートアップしてくると、ドラゴンの姿に戻ってブレスを吐いたり、爪でひっかいたりすることだ。

ダイは、ブレスを命からがら避けながら、ひたすら仲裁した。

エンシェントドラゴンが二匹暴れると、周りに迷惑だからである。


幸い、人に被害は出なかったが、ブレスが村を直撃したりすればただでは済まない。

特に危険だったのは、男の青い、火属性のブレスだ。

ガスの炎が青いのは、高温だからである。この男が吐くブレスは、当たった物を一瞬で、消し炭すら残さずに燃やし尽くした。


ダイは、とりあえず落ち着いて話そう、と二匹を説得し、この世界の果てにあるような大雪原にやってきた。

防寒のため、ばあさんの宝の中にあったサーカステントを張り、ついでに宇宙飛行士のようなモコモコスーツを着こむと、ダイは、道化師の仮面をかぶっていたこともあり、ピエロにしか見えなかった。


まあ、今の俺、ピエロそのものだよな、とダイは自嘲する。絶対的権力者を楽しませるためだけに存在しているからだ。


昨日から、ばあさんは、脱皮するために眠り始めた。

死んだように眠っているため、少なくとも男とケンカすることはない。


「……そういえば、エサ食べるか?」

男は、さっき出かけた際に、ケルベロスかグリフォンでも狩ってきたのだろう。ダイの作る料理が気に入ったようで、ちょこちょこ魔獣を狩って帰ってくる。

ダイは、最近、そういった災厄級の魔獣をさばきまくっていた。


ダイが男と一緒に外に出ると、サーペントが転がっており、その横に、人間が転がっていた。


「うわ、ルカ!」


「……忘れていた。…そいつ、我妻に、指輪を贈ったやつだ。同じ指輪を持っていた」


ダイは男の解説を聞くのもなかば、慌てて転がっているルカを抱え上げると、ストーブのそばに転がした。幸い、ガチガチ震えているが、まだ生きているようだ。


「ルカ、何やってんだ」


「…ショータ?」

ルカは目を開けると、ダイに笑顔で話しかけた。


「…よ、変な格好してるな」

評価、いいね、ありがとうございます。

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