3 王都の対応
夕方、タウンハウスの執事がコテージに来て、オルロー領から伝令が持ってきた第二報の通知文を渡してくれた。
「21日朝、立入禁止のゴリポリ付近の森に侵入者がいるとの通報を受け、森の警戒を開始した。
21日昼頃、ゴリポリ付近の森にドラゴンBの発生を確認した。これは、以前から同所で確認されているドラゴンAとは別の個体と推測される。
さらにもう1頭のドラゴンCが背中に道化師の格好をした人間を乗せて飛行し、ドラゴンBに近づく様子を確認した。ドラゴンCが、以前から同所で確認されているドラゴンAであると推測される。
その後、ドラゴンらは消えた。
現在、オルロー兵団が交代で付近の警戒を続けている」
ダイがお父様に森の貴婦人の件を伝えたのが昨日の朝なので、伝令が通常の速度で行き来していればまだ連絡は来ないはずだが、伝令が夜を徹して馬を駆ってくれたのだろう。
なお、伝令は途中でおじいさまの一行に会い、通知書を見せていた。
おじいさまは、特に指示を付さずに、通知文を私に渡すよう伝令におっしゃっていたそうだ。
執事のオルキサンドルに話し、取り急ぎ、王宮に参上し、通知の内容を伝える。
そのまま、第二方面兵団の会議にオブザーバー参加し、通知内容を伝える。また、ドラゴンAについては、以前から生息を確認していたが、穏やかな性格らしくなわばりに入り込まない限り人を襲うことがなかったため、なわばり周辺を立入禁止にしていたことも説明した。
会議の参加者らは、ドラゴン2匹と聞いて、青い顔をしていた。
ピョートル殿下がぼやいたところによると、第2方面兵団は退団者が続出しており、やむなく予備役を招集したが集まりが悪く、他の方面兵団から人を引き抜いているそうだ。
情けないような気がするけれど、ドラゴン退治なんて死にに行くようなものですもの、そうなるのも人情ですわね。
そうこうするうち、深夜に第三報が来た。
私はコテージに引き上げていたが、すぐにピョートル殿下に先ぶれを送り、王宮に参上した。
第三報の通知文にはこう書いてあった。
「11月21日16時ごろ、オルロー公爵家に、道化師の格好をした者がドラゴンAの使者として参上した。
同人から、以下の内容を聴取した。
・ドラゴンCがドラゴンAであることを確認した(今後は、ドラゴンAと呼称する。)。
・侵入者らは、ドラゴンのなわばり内でドラゴン笛を吹いていたところ、ドラゴンAを訪ねてきたドラゴンBとエンカウントした。
・この際、ドラゴンB は侵入者のうち1名に接触、当該侵入者は死亡した。
・侵入者のうち、もう1名は逃亡し、ドラゴンのなわばり内から出た模様
・ドラゴンA、Bは、今後、ゴリポリ付近の森から移動予定であり、現段階で集落等を襲撃する予定はない。
・当該侵入者の死体の引き渡しを受けた。
・侵入者の身元は不明であるが、不確定情報として、サハロフ騎士団長の令息、ボリス・サハロフという情報がある]
私は、人払いをお願いした上で、ピョートル殿下に直接通知文の写しを渡し、現在、オルロー公爵が王都に向かう予定なので、オルロー公爵から事情の説明を求めるかもしれないとだけ伝えて、退出した。
ピョートル殿下は、真っ青になっていた。
王宮に行く前に、タウンハウスの執事オルキサンドルと相談してこの面談の方針を決めたのだ。
「オルキサンドル、これは、王家がオルロー領にドラゴンを襲来させようというたくらみがあったと考えるべきなのかしら」
「常識のある方であれば、そう推測せざるを得ないのではないでしょうか」
「抗議したほうがいい?」
「お嬢様のお心のままに。
私としては、公爵様がこちらに向かわれることから、今は匂わせる程度で、後は公爵様にお任せされてもよろしいかと思います」
私はよく考え、まだ侵入者がボリス・サハロフかどうかもわからない上、彼の愚かな行動の理由がわからない段階で抗議をするのは早まっているかもしれないため、今回の事件が王家に責任があることをにおわせて、調査を求めるにとどめた。
おじいさまは、オルロー領に入る直前でこの伝令を受けた。
そして、いったんオルロー領に戻って兵団の状況やドラゴン襲来の可能性が低いことを確認したうえで、明後日24日の昼頃に、王都にとんぼ返りするため、オルロー家を出発されるご予定だ。
お戻りは、早くて27日だろう。おじいさまが王家と対談されるのは、28日だろうか。
これでもかなりの強行軍であり、おじいさまのお体が心配だ。
王家の第二方面兵団の出発は明日と聞いているが、直前で取りやめにするのかどうかは王家で決めればいい。
今日は、もう寝ましょう。
ライラは、無・無属性のスキル持ちなので、ショックに強い面があります。
同級生が死んでも、たいしてショックを受けていません。
2022.10.11 文字の間違い等を修正しました。




