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3 ダイとアン2

「あれは、死んでいるよな?」

ダイは、水晶玉の中に映っているボリス・サハロフの体が真っ二つになっているのを見て言った。


ツチャビッチ・ミトロヒナは、腰を抜かしたようだが、倒れたボリスをそのままにして、はいずりながら逃げ出していた。


ばあさんは、ドラゴンの姿に戻って、鼻をクンクンさせながら言った。

「あたしの番が来たみたいだよ!」


「番さん、狂暴だな」


ばあさんはあっけにとられたように少し考えていたが、いきなり笑いだしていった。

「あんただって、自分の家の中にコバエが飛んでいたら潰すだろ。

あれが一般的なドラゴンの感覚さ。


あたしは、あんたやオルローの爺さんを面白いと思っているし、あの爺さんが、人を殺さなければなわばり内に人を入れないと約束したから我慢していたけれど、普通、ドラゴンのなわばりでドラゴン笛を吹くなんて自殺行為だよ。


だいたい、人が入ってきた時点で、爺さんの約束違反だから我慢する必要もなかったけれど、まあ入ってきた方法が普通じゃなかったから、ちょっとおまけしていただけで、もう2、3日あの状態だったら、私があいつらを殺していただろうさ。


多分、番は、毛ほども良心の痛みを感じていないよ。

ドラゴンは人間とは別の生き物だし、価値観も違う。

弱いものが死ぬのは当然だと思っているから、同じドラゴン相手の殺し合いだって平気だもの。


あんたはいいこだけれど、そこらへんはわかりあえなくてもしょうがないよ。


私は番を迎えに行くよ」


「ばあさん、俺も行きたい」

ダイは、ばあさんに頼んで背中に乗せてもらうと、ミトロヒナ嬢に顔を見られるとまずいかもしれない、と思い、アイテムボックスから「道化師の仮面/ただの仮面、防御力+1」を取り出し、「ちょっと借りるよ」と声をかけてかぶった。


ばあさんは、外に出ると、遠くに見える小山の様な水色のドラゴンに向けて飛び立った。


ダイが景色を眺めていると、ゴリポリの町のほうにある小高い丘の上に兵隊がいるのが見えた。


《あそこからは、ゴジラ対モスラ、いやキングギドラみたいに見えているだろうな》

ダイはポツンとつぶやいた。


ばあさんは、素晴らしい速さで水色のドラゴンのところまで近づくと、ダイを振り下ろしながら、人型になった。

ミトロヒナ嬢はどこかに逃げ延びたようで、転がっている死体は一体だけだ。


水色のドラゴンが頭を下げてばあさんの匂いを嗅ぐようなしぐさを見せた。

ばあさんはその鼻っ面を叩いて怒鳴りつけた。


「この宿六、ずいぶんご無沙汰じゃないか。連絡の一つもよこさずにどこに行っていた?」


水色のドラゴンは、ぼうっとした感じで黙っていたが、ぽつりと言った。

「……我が愛しの嫁様は……元気だな」


「はあ?ばあさん、あんた散々心配していたじゃないか。なんでいきなりはたくんだよ?」

ダイが思わず突っ込んだ。


「こいつはぼうっとしているのだもの、このぐらい言わないとわからないのさ。

どうして連絡してこなかったのか聞いているんだよ」


「……嫁様が、もう来るなと言った。でも、久しぶりにその指輪をはめてくれたから、もう怒ってないと思った」


「あれ、そんなこと言ったっけ?まあいいよ、浮気でもしていたんじゃないの?」


「……してない」


「そう、ならいいけど」


「ちょっと待て、その指輪、番さんからのプレゼントなの?それずっと放置してたの?」


「うるさいね、ちょっと忘れていただけさ。家来るかい?」



それから、ダイは、人型になった水色ドラゴンとばあさんと一緒にばあさんの家に戻り、たくさん料理を作るなどして接待した。


水色ドラゴンは、少しぼうっとしたおっさんだったが、なかなか気のいいところもあった。


ダイは思った。

『確かに、ばあさんが言うとおり、ドラゴンと人間の価値観は全く違う。それを、人間の価値観で、人殺しはいけないとか言って一方的に責めるのは間違いかもしれない。

でも、家族を殺された人には、そんなこと言えないな。


……俺、多分、ここ2、3日で10回ぐらい、世界を救っているよね。よくやった俺』


ダイはこっそり、自分をほめたが、ここにいない友人のことを想い、ゆううつだった。


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