1 お見送りしました。
投稿が遅くなり、すいませんm(__)m
早朝、おじいさまはオルロー領に向かってご出発された。
昨日、ダイからの報告を受けて善後策を協議するため、おじいさまと話し合った。
おじいさまは、そのままコテージにお泊りになったので、お見送りができてよかったわ。
どこから聞きつけたのか、ピョートル殿下がいらっしゃって、おじいさまを途中までお見送りするとおっしゃった。
乗ってきた馬は侍従に預け、ピョートル殿下はおじいさまの馬車に乗り込んだ。
「かわいいライラ、さみしいが、しばしお別れだ。
いろいろ相談してくれてありがとう。だけど、もうライラは立派なレディだから、ライラの好きな道を行くといいよ。
……ライラがオルローの当主になるのであれば、帝国が結婚相手の家格に文句をつける筋合いもなくなるしね」
おじいさまは、お別れのあいさつの最後だけ声をひそめると、意味ありげに私にささやいた。
私は思わず真っ赤になった。
おじいさまったら、私がダイのことを好きだと思っていらっしゃるのかしら。
ダイは平民だから、オルローの当主になることはできない。だから、私の結婚相手にはなりえなかった。
でも、私が当主になれば、手ごろな家に養子に出すなどそれなりの手順を踏む必要はあるが、平民と結婚しても、誰も文句は言わないだろう。
だが、ダイは、あくまでも兄兼友人兼使用人だ。私たちの間に甘い感情が入り込む隙はない。
だが、ピョートル殿下が馬車の中にいらっしゃる状況で、そんな話をするわけにもいかず、私は笑顔で言った。
「おじいさま、ご冗談が過ぎるとおばあさまにしかられますわよ。道中、お気をつけて」
自室に戻るとダイがジャムをたくさん入れた温かいお茶を入れてくれた。
一口飲んで、ほっとする。
もう早朝など、氷点下になる季節だ。まだ雪は積もっていないけれど、これからの旅路は寒い日もあるだろう。おじいさま、あまり無理をなさらなければいいのだけれど。
ダイは当然のようにジャムを入れていない紅茶をもう一杯注ぐと、こちらを見た。
私がうなずくと、ダイは椅子に腰かけて言った。
《お嬢様、王の発表の話を聞きましたよ。私がいない間に大ごとになりましたね》
《無事に婚約は解消されたし、女性も当主になれることになって、おじいさまは私がオルロー家を継いでもいいとおっしゃってくださっているわ。
もう、これは、断罪と私の処刑、あと、オルロー家の没落や戦争もなくなったのではないかしら。
ほんと、おじいさまは抜群の交渉能力よね。憧れちゃうわ。
でも、こうなってみれば、最優秀生徒になる必要も、別にないわよね》
《そういえば、ピョートル殿下にもお会いできたようですね。
朝、いきなりお見えになって、公爵様やお嬢様にご挨拶されていましたのでびっくりしました。
ゲーム通りのハンサムですね!長い金髪を片三つ編みにして、銀縁眼鏡にゆるりとした古代装束をまとって白馬に乗って登場なんて、もう、おとぎ話の王子様という感じですね!》
ダイは、なにやら探りを入れるように、おおげさにピョートル殿下をほめた。
《そうね、ダイに言っていなかったわね。レオニード先生がピョートル殿下だったわ。
提出した論文をほめてくれて、最優秀生徒になれそうだとおっしゃったうえで、プロポーズされたの。まあ、プロポーズは完全に政略目的だとおっしゃったけれどね》
《プロポーズ!》
昨日、ダイはエンシェントドラゴンやダイの友人のルカさんについて説明を求められ、その後は、私とおじいさまがひたすら対応を話し合っていたので、ここらへんは全く知らなかったから、驚いていた。
《ゲームの攻略情報によれば、主人公で女を選択した状態で最優秀生徒になってピョートル殿下との友情エンドを迎える時点で、好感度がマックスだと、その後結婚することをにおわせるシーンがあるみたいです。男を選択していると、そこが宰相になるらしいですけれど》
《じゃあ、彼と結婚するつもりなら、最優秀生徒は取らなきゃダメかしらね》
《お嬢様は、ピョートル殿下とご結婚されたいのですか》
《おじいさまからは、彼と結婚するなら好きにしていいけれど、オルロー家が表立ってバックアップすることはないと言われたわ。
女公爵を目指すなら、むしろ最優秀生徒にならないほうがいいのかしら》
《そこはわかりませんが、まともな教師は教え子に手を出さないというか、プロポーズしないでしょう》
《レオニード先生は、そこはすごく気にしていたみたいね。
多分、私が何とかしてほしいとお願いしたから、スキルの効果でうっかりプロポーズしてしまったのではないかしら》
《うっかりプロポーズって、軽率なやつですね。王子は兄弟そろってろくでもないやつらじゃないですか?》
《ちょっと、不敬よ》
私は慌ててたしなめた。
《ふーん、そうでございますか?なんだか、バカ王子に対する態度とは違いますね》
ダイはにやにやした。
まあ、今さらなのだけれど、私はピョートル殿下にはなんの恨みもないところが、イヴァン殿下とは違う。
《それより、ダイ、おじいさまのお使いと、森の貴婦人の御機嫌とりをがんばってちょうだい。
森の貴婦人がお怒りになって周辺の集落を襲えば、ゲームのストーリーを変えても結局オルロー領が焼け野原になってしまうわ》
ダイはきりっとした顔になる。
《そうですね。ばあさんをせいぜいなだめてきます》
ダイは、領地にいるお父様に状況を説明して、エンシェントドラゴンのなわばりの近くにいる村や町の住民を避難させるように伝えるというおじいさまのお使いを終えたら、エンシェントドラゴンのそばで彼女が暴走しないよう、付き添ってもらうことになっている。
「寒いだろうけど、気を付けてね」
私が見送りの言葉を言うと、ダイは笑って言った。
「ありがとうございます。お嬢様も、うっかり風邪をひかないよう、ちゃんと暖かい服装をしなくてはいけませんよ」
ダイはおじいさまからのお使いを仰せつかったとキアラに説明し、転移でオルロー領に向かった。




