1 新しい法律
朝、おじいさまが馬車でコテージまで来てくださった。
昨日、相談したいと使いを送ったところ、おじいさまが王宮に行く用事に同行し、終了後にいろいろと相談をすることになったのだ。
馬車の中で、私は昨日ピョートル殿下に会い、プロポーズされたことを手短にお伝えした。
「かわいいライラ、なかなかご活躍だね。
……まあ、詳しくは話せないが、今日の王宮での発表を聞いてから、よく検討するといいよ」
王宮の謁見の間に入る。
今日は重要な儀式があるらしく、貴族の当主たちがそろっていた。
司法卿を務めておられるアローラ公爵が壇上にいる。
あたりをうかがっていると、司法卿の娘であるケイトリン様と、儀礼官のゴルトヴァ伯爵夫人がいた。ケイトリン様がこっそりと手を振ってくださったので、私も振り返した。
陛下がお見えになるとの先触れがあり、貴族一同が王への礼をとる。
陛下は来場すると大きな声でおっしゃった。
「本日は、新たな法を定める。一同、面を上げよ」
許されて前を見ると、壇上のアローラ公爵が言った。
「謹んで、審査いたします」
すると、中空に天秤が現れた。
宰相のアウコフ侯爵が壇上に進み、銀のお盆の上に乗せられた書類を読み上げた。
「『貴族法第3条、貴族籍は、その血統に連なる者の中から、承継順位に関する慣例に従って当主が指定した男子が承継する。』
を以下の通り改正する。
『貴族籍は、その血統に連なる者の中から、承継順位に関する慣例に従って当主が指定したものが承継する。』」
え、つまり、女でも当主になれるということかしら?
アウコフ侯爵は、改正を行う理由を読み上げていった。
中空の天秤は、水平を保ったままだ。
「ここに定められた新たな法が正義の均衡にかなうことを宣言する」
司法卿が宣言すると、貴族たちは驚いた顔をしながらも手をたたいて祝福した。
ゴルトヴァ伯爵夫人が近づいてきておっしゃった。
「おめでとう、あなたも女公爵になりそうね。
先日、オルロー公爵が女性も当主になれるよう法改正することを提案され、どうするか検討中でしたのよ。
でも、ケイトリン・アローリナ公爵令嬢が司法卿になるための必須スキルを授かったので、一気に話がまとまったわ。
アローラ公爵家では、当主様には女の子しかいらっしゃらないし、親族の男子は違うスキルを授かったので、前から後継者をどうするかは国家の大問題でしたからね」
ケイトリン様は、たくさんの貴族から挨拶を受けていらっしゃる。
そこに司法卿が近づいて、ケイトリン様を抱きしめた。
【正義の女神の法具】は、国の法律をも変えるすごいスキルだったのね。
ケイトリン様は、うれしそう。
ボリス・サハロフ様との婚約も解消されたみたいだし、将来は女公爵になられるようだし、本当によかったわ。私もうれしくなる。
しかし、私もオルロー家を継ぐことができるのね、となると、あら、イヴァン殿下は用済みじゃございませんこと?
私は素晴らしい思い付きにどきどきしていると、宰相がおっしゃった。
「これ以降、参集した者の退出を認めます。
次は、王の裁定です。
一件目の案件は、王家の名のもとに結んだ婚約の撤回です。
王家及びオルロー公爵家の当主及びその付添者は前にでなさい」
異世界の王家の儀式とか考えているうちに楽しくなって悪乗りしてしまいました。
興味のない方もいらっしゃると思いますが、お付き合いいただきありがとうございます。
2022.09.24 宰相の最後の発言の順番を変えました。
王都にいる貴族に参集義務があるのは、法律の審査など重要な議題だけです。




