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3 落ち着けと言われました

生まれた時からの婚約者とはいえ、残念ながら私はイヴァン殿下を好きになれなかった。


彼は、ただの乱暴で思いこみの激しい馬鹿な男の子だった。


成長してからも私は幼い頃の彼を知っているだけに、なかなか恋をする雰囲気にはならなかった。


あと、私は、イヴァン殿下のような俺様系の男は好みではない。


ゲームをやっている時は、強引なのがかっこいいと思っていた記憶もあるけれど、それはしょせん二次元の話だ。

現実にいると怖いし、うっとおしい。


現実のイヴァン殿下は頭の出来もいまいちで、馬鹿な思い込みに基づいてほかの人にああすべきだこうすべきだと口うるさく言う。

ほんと迷惑な人だと思う。


私と結婚して臣籍降下しオルロー公爵を継承する予定だったのだけれど、正直、こんな人に公爵位を渡して大丈夫かと不安でいっぱいだった。




一方の殿下は、釣り目で少し毒舌ぎみな私がお気に召さなかったようだ。


私が成績優秀で、礼儀作法もわきまえた優等生だったことも、どちらかというとあまり成績が芳しくなかったイヴァン殿下の反感を買ったのかもしれない。




さらに、私たちのスキルの取得状況も問題をややこしくしたと思う。


この世界にはゲームと同じくスキルという、神様から授かる必殺技があり、このスキルの良し悪しで周りの見る目も変わる。


スキルは、おおよそ6歳から15歳ぐらいまでに授かる。

子供たちは、何か自分の能力に変化があると感じた時に、神殿に行って高位の神官にスキルを認定してもらうのだ。


イヴァン殿下は、13歳の時に雷系のスキルを授かった。


雷系のスキルはとても優秀なスキルとされているので、イヴァン殿下はそことで無駄に自信をつけた。

周りに持ち上げる人もいたようだ。


実際には、静電気程度の威力しかない、あまり使い道のないスキルだったのだけれども。


そして、彼は、自分が王太子になり、ゆくゆくは王になると言い出した。



こうなると、名門公爵家とはいえ辺境にあるオルロー家の爵位を承継するというメリットがなくなった。


さらに、私は、16歳になってもまだスキルを授かっていない。


こういったこともあり、殿下はスキルを授かってから、私をあからさまに馬鹿にするようになった。


そんな状況で、お互いぎくしゃくしたまま、私たちは年を重ねた。


それでも、貴族の義務である以上、私は、イヴァン殿下と将来結婚するのだと疑うこともなく、彼の気持ちに寄り添うために、自分の思いを外に出さないよう努力していた。


しかし、殿下は私を無視し続け、あちこちの女性と浮名を流したあげく、最近では、今年の始めに男爵家の養子になって編入学してきた平民出身のミトロヒナ嬢に好意を示し、プレゼントをしたり、二人でいちゃいちゃしたりするようになった。



私が感じたのは、悲しみではなく、プライドを傷つけられたという怒りだった。


最初、イヴァン殿下とツチャビッチ・ミトロヒナ嬢が付き合っているという噂が出始めたころ、私は無視していた。


過去にも噂になったお相手はいたし、さすがに第三王子が王家の命で結んだ婚約をないがしろにすることはないだろうと思っていたのだ。


しかし、イヴァン殿下はミトロヒナ嬢と行動を共にし続け、街中でデートしているとか、付き添いもなく空き教室で二人きりでいたといったうわさが飛び交っていた。


そのうえ、ミトロヒナ嬢はイヴァン殿下と親しいことを笠に着て、他の下級貴族の令嬢に無理な要求をしたり、婚約者がいる高位貴族の令息に殿下との交流を手土産に接触し、ついでにいちゃいちゃしたりと好き放題しはじめ、その苦情が殿下の婚約者である私のところにまで持ち込まれるようになった。


マルガリータも私の取り巻きだと思われたのか、人前で怒鳴りつけられたため、優しい彼女はショックで引きこもってしまった。


私は、やむをえずミトロヒナ嬢にそういったことをやめてと頼んだり、殿下に苦言を呈して彼女を指導するようにお願いしたりしようとした。


しかし二人とも、まったく人の話を聞かない。


私がお願いするために話しかけても無視されることが多かった。


そういう意味で、彼らは似た者同士のお似合いカップルだった。


私は、たまに領地から王都に来るおじいさまに事実を伝えて婚約の解消をねだったが、ある事情から無理だと言われてしまった。




イライラした私は、ついに、やらかした。


ミトロヒナ嬢の母が娼婦だったと書いたビラを、侍従のダイに命じ、学校の掲示板に貼らせたのだ。


今にして思えば、家族についての誹謗中傷を匿名で流すなんて、とても卑劣だったし、恥ずかしい。反省している。ごめんなさい。


どうしよう、謝ったら許してくれるかしら。


そうだ、悪口を言ったことを詫びて、さっさと婚約者を辞退して、領地に引きこもって、修道院でも入っていればいいのではないかしら。


私がぶつぶつ独り言をつぶやいていると、いきなり肩に手を置かれた。


「お嬢様」


振り返ると、侍従のダイがいて、にっこり笑い、そこだけ日本語で言った。



《ちょっと落ち着け》

2022.07.09 読みにくい箇所と改行を修正しました。

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