3 闘技大会の結果
いよいよ決勝戦だ。
試合前にケイトリン様が握手を求めてきて、おっしゃった。
「マルガリータ様も、ライラ様も全力で来てね!
なんなら、アイテムでも何でも使ってちょうだい」
「ありがとうございます」
「ありがとう、お互い全力で頑張りましょうね。あと、私、アイテムは持っていないわ」
握手をしながら答える。
ケイトリン様は、バフスキル【大地の恵み】だけじゃなく、【正義の女神の法具】というスキルを使っていた。
魔法攻撃タイプみたいだけれど、アイテムで実力を盛っていたイヴァン殿下を蹴散らせるほど強力な分、発動条件があるみたい。
こういうことをいうからには、アイテム使用が関係するスキルなのかしら?
試合では、まずケイトリン様が【正義の女神の法具】のスキル使用を宣言し、天秤の虚像が空に浮かび上がった。
一方、私たちは、トニアの【風】スキルで場外に飛ばされるのを防ぐため、トニアたちのほうに向かって走った。
【風】スキルは広範囲に効果が発生するから、二人の近くに行けばケイトリン様を巻き込まずにスキルを発動させることが難しいだろうから、肉弾戦に持ち込もうという作戦だ。
ケイトリン様の新しいスキルの効果はよくわからないが、発動までに時間がかかりそうなので、リタがさっさと片づける作戦にした。
リタはまっすぐ、ケイトリン様に向かって走っていく。
私も必死で走るけれど、リタには追い付けない。
トーニャちゃんとケイトリン様の近くまでリタがたどり着いたあたりで、【風】スキルが発動し、リタとケイトリン様が飛ばされた。
スタジアムの場外に飛ばしたみたいだ。
観客席に突風が吹いてみていた人たちが慌てている。
一方、天空に浮かぶ天秤の虚像は、動きがない。
少し遅れて走っていた私とトニアの1対1になった。
「あれ、ライラ様も範囲内だったのにー!」
トニアが叫んだ。
なるほど、私のスキルは、無・無属性だから、私にはスキル攻撃の効果があまり通らないのだわ。
「えい」
トーニャちゃんは魔法を使ったみたいだけれど、先ほどよりも威力がない。
もう、魔力が足りていないのだろう。
「やりにくいわね」
さすがに、上目遣いで涙ぐん見ながら逃げ回る7歳児に16歳の私が全力で向かっていく気になれない。しかし、試合なので、全力を尽くさざるを得ない。
私たちは、決勝戦とは思えないのんきな追いかけっこを始めた。
「はい、捕まえた。もう、これ、戦闘不能よね」
私がトニアを抱っこして言うと、審判の先生がおっしゃった。
「勝者、ライラ・オルロヴァ、マルガリータ・ジュコフスカヤ!」
「えーん、もうちょっとで魔力が溜まったのにー!」とトーニャちゃんは悔しそう。
「トーニャ、ごめんね」
「もう、勝負なのですから、謝る必要なんてありませんわ。
トーニャもいつまでも悔しがらないの」
場外からケイトリン様が戻ってきて、トニアをたしなめた。
リタは隣で笑いながら、私にハイタッチしてきた。
「ライラお姉さま、素敵でした!」
最後はなんだかほのぼのしちゃったけれど、優勝したことをじわじわ実感した。
スキルなしで、闘技大会には近づいたこともなかったのに、卒業の年に優勝できた。
ほとんどリタのおかげだけれど、うれしいわ!
表彰式が終わると、アンドレ先生が前に出ておっしゃった。
「はい、ではお楽しみ!スキル鑑定よ!
みんな知ってのとおり、この闘技大会で新しいスキルを授かる人は多いわ!
スキルを授かった、と閃きがあったり、なんだかいつもと違うと感じたりしたら、遠慮なくスキル鑑定を受けてみてね!」
確かに、闘技大会では限界まで戦うから、新しいスキルに覚醒することは多いかもしれないわね。
観客席からも何人か生徒がスキル鑑定の祭壇に進み、アンドレ先生が授かったスキル名を発表すると、会場から温かい拍手が送られていた。
ケイトリン様も前に出て、スキル鑑定を受けられた。
「まあ、まあまあまあまあ!
確かにケイトリン・アローリナ公爵令嬢の新しいスキル授与を確認しました!
あなたのスキル名は、、、なんと、【正義の女神の法具】です!
神様のネームドスキルね!おめでとう!」
観客席から、ひときわ大きな拍手が送られた。
ちらりと、ケイトリン様のお父様であるアローラ公爵のほうを見ると、ケイトリン様をじっと見ていらっしゃった。
おじいさまが近づいて、なにか話しかけていらっしゃる。
イヴァン殿下が前に進み出て行った。
「おい、次の鑑定を頼む!」
イヴァン殿下は、ボリス・サハロフ様を前に押し出した。
こそこそ話していたが、表彰を受けるためにもともと前にいた私たちには内容まで聞こえた。
「いえ、いいですよ」とボリス様は尻込みしている。
「馬鹿言うな、剣聖の誕生の瞬間を見せつけてこい!」
イヴァン殿下はボリス様を叱咤激励している。
あら、ボリス様は剣聖スキルに覚醒したのかしら。
確か、主人公がボリス様から告白されて、OKしたら闘技大会で優勝するムービーが流れて剣聖スキルに覚醒するのよね。
でも、ボリス様は準決勝で敗れて優勝していないので、ゲームとは違うわね。
ぼんやり考えているうち、アンドレ先生が呪文を唱え終わり、宣言した。
「確かにボリス・サハロフ伯爵令息の新しいスキル授与を確認しました!
あなたのスキル名は、、、【剣の閃き】です!
おめでとう!ボリス様は剣で身を立てていくつもりなのよね!
【剣の閃き】は、剣術の攻撃力やスピードを上げるパッシブスキルで、騎士や兵になるのなら、きっとあなたの助けになるわ!
ボリス様は、もともと、【剣の兵】スキルを持っていたから、重ねがけで強くなりそうね!」
アンドレ先生は、心からボリス様にお祝いの言葉を述べているようだ。
一方、ボリス様は何もおっしゃらない。
「嘘だ、もっとちゃんと鑑定しろ!」イヴァン殿下が叫んだ。
「こいつは、【剣聖】スキルを取得するはずだ」
アンドレ先生は、イヴァン殿下の剣幕にびっくりした様子だけれど、冷静に言った。
「イヴァン殿下、恐れながら申し上げます。
私は神に仕える身の上であり、神に教えていただいたスキル名を誤って伝えることはありません。
また、どんなスキルであっても、神様が、その人に一番ふさわしいスキルを選んで与えてくださったのだと考えています。
確かに、【剣の閃き】は【剣聖】スキルほど攻撃力は上がりませんが、立派なスキルですし、【剣の閃き】スキルを活用して、活躍している騎士や兵士はたくさんおります。
特定のスキルを貶めるようなご発言は、いかがなものかと思います」
アンドレ先生がきっぱり言ったため、イヴァン殿下はそれ以上何も言わなかった。
そこにリタが進み出た。
「私も、スキルを新たに授かったかもしれません」
アンドレ先生は、悪くなった雰囲気を変えようとしたのだろう。
リタに優勝したのだからいいスキルが来たかもね、などと明るく言いながら儀式を行い、宣言した。
「確かにマルガリータ・ジュコフスカヤ伯爵令嬢の新しいスキル授与を確認しました!
あなたのスキル名は、、、なんと、【剣神】です!おめでとう!」




