2 それぞれの戦い
準決勝第1試合、私たちは、ナザール様のパーティと対戦している。
試合開始直後、書記さんがリタの目前に現れ、そのまま切りかかった。
ナザール様の【円滑行政】スキル効果で限界までスピードを上げてかかってきたようだ。
リタが応戦していると、ナザール様が私に向かってきた。
模造刀を振りかぶって切りかかって来たが、なんとか身をかわす。
ナザール様は、あまり剣術自体はお得意ではないようで、あと、バフ効果は全部書記さんに使っているのか剣先は遅く、私のへっぽこ護身術でも対応できる。
リタと書記さんがビュンビュンガシャンガシャンと戦う横で、私とナザール様はカンカンと剣をふるった。
「チッ」
リタの舌打ちが聞こえた。
「あち!」
ナザール様が飛び上がった。
「隙あり!」
私はポンっとナザール様に突きを入れる。ナザール様が尻もちをついて、戦闘不能になった。
「ライラお姉さま!」
声がしたほうを見ると、ちょうどリタも後ろに倒れた書記さんの首元に模造刀を突きつけ、戦闘不能にしたところだった。
「勝者、ライラ・オルロヴァ、マルガリータ・ジュコフスカヤ!」審判の宣言があった。
「勝った!私たち、勝ったわ!」
「ええ!ライラお姉さま、すごいです!」
私たちは抱き合って喜んだ。
うわー、私、初めて一本取ったわ!すごくうれしい!
控室に戻ると、ナザール様達が、私たちの勝利をたたえてくださり、私たちは固く握手をした。
書記さんは、リタと握手すると真っ赤になり、
「光栄です!もう、手を洗いません!」と言い出した。
「ちゃんと手を洗ってくれないと、業務に差し支える」とナザール様がお叱りになった。
「さ、次は、注目カードですよ。
慈愛の天使ケイトリン様と、天才魔法少女トニアちゃんのパーティが、イヴァン殿下に挑みます。
ケイトリン様とボリス様は、婚約解消したばかりですからね。
ここはケイトリン様たちに勝ってもらって、婚約解消までのもやもやした気持ちをぶっ飛ばしてもらいたいところですが、イヴァン殿下のパーティは、強力なアイテムを使っていますからね。
ケイトリン様たちになにかあってはいけませんから、棄権してもらったほうがいいのかな」
書記さんが解説してくれた。軽い感じだが、少し仲良くなれたようでうれしい。
ケイトリン様は、慈愛の天使と呼ばれているらしい。お優しいですものね。
ケイトリン様たちは棄権しないようだ。
生徒たちが、ケイトリン様に声援を送った。
イヴァン殿下のパーティへの声援は、ほぼない。ミトロヒナ嬢がなにかを叫んでいるだけだ。
ケイトリン様がトニア様の額にキスし、バフをかけると、試合が始まった。
直後にケイトリン様がスキル使用の宣言をした。
「【正義の女神の法具】」
空に大きな天秤の虚像が映し出された。
その間に、イヴァン殿下とボリス様がトーニャに向かって走り出していた。
ケイトリン様は、足の速さの関係で先に来たボリス様を横から突き、剣戟が始まった。
ボリス様が腕輪を光らせながら飛び上がり、そのままケイトリン様の頭を狙い切り下ろそうとした。
ケイトリン様が刀で受けた。彼女の刀が折れた。ケイトリン様は、HPが高いのか、まだ動けるようだ。
空の天秤が右に傾いた。
その時、イヴァン殿下が、ちょうどボリス様の横を通った。
トーニャは、無詠唱で風魔法を使い、ケイトリン様ごとイヴァン殿下たちを吹き飛ばそうとした。
ケイトリン様とボリス様は闘技場の隅まで飛ばされた。ただ、ぎりぎり場外ではない場所だ。
しかし、イヴァン殿下の指輪が光り、殿下は飛ばされなかった。
天秤の傾きが深くなった。
「ボリス様が攻撃力アップの腕輪、イヴァン殿下はダメージ防止のペンダント、あと二人ともスキル効果無効の指輪をはめているようです。
どれも店で売っている者よりも何倍も効果が高いので、アーティファクトだと推測されます」
書記さんが解説してくれた。
殿下は、トーニャを追いかけ始めた。トーニャは必死で逃げる。
トーニャはまだ1年生なので、9年生のイヴァン殿下はすぐ追いついて、彼女の肩をつかむと【雷】スキルで殴ろうとした。
ケイトリン様が、トーニャのほうに走っているが間に合わない。
その時、右の天秤皿が地に着いた。
瞬間、剣の虚像がイヴァン殿下とボリス様をなぎはらった。
イヴァン殿下とボリス様が起き上がらないのを見て、審判が宣言した。
「勝者!ケイトリン・アローリナ!トニア・ハーリング!」
会場に歓声が満ちた。
リタは書記さんと戦いながら、ナザールの後ろの地面に向かってスキル【火中の刃】を使い切り付けました。
ライラ視点なので、ライラが気が付かないような高度なアクションは書いていません。
【火中の刃】は、クリティカルヒットした場合、人間相手だと即死させる程度の大ダメージを与えますので、リタは試合など人間相手の勝負では原則スキルを使わず、魔獣相手にだけぶっ放します。




