1 イヴァンの希望
イヴァン視点です。
長いけれど、しょうもないです。読まなくてもストーリー上、何ら問題はありません。
真実の愛を見つけた。
かくなる上は、必ず俺が王になり、ツチャビッチ・ミトロヒナ、かわいいツーチャを王妃としなくてはならない、とイヴァンは思った。
イライラしたため、イヴァンは朝から授業をさぼって中庭でふて寝していた。
そこに、ツーチャがやって来て、横に座り、手作りの菓子と簡易水筒入りのお茶を差し出した。
「どうしたの、イヴァン様。
私、元平民だから、こうやってそばで応援するしかできないけれど、イヴァンが雷帝スキルに覚醒して王になり、私と結婚してくれるって信じているわ」
イヴァンは、ツーチャの腕をつかんで引き倒し、一緒に地面に寝転がらせると、格好をつけて言った。
「ああ、任せとけ」
二人のそもそものなれそめは、今年の1月1日である。
この日、卒業に伴い生徒会役員が交代するため、新しい生徒会役員がそろって学園の塔に登り初日の出を見ながら激励会を行うのが学園の慣例である。
生徒会役員は学園側が指名する。イヴァンは、自分が副会長に指名されたことに不満を抱いていた。
しかも新会長に指名されたナザール・アウコフ侯爵令息は、宰相の息子であり、かつ同学年であるにもかかわらず、これまで生徒会に出入りしているので忙しいからと自分の側近となることを拒否していた者である。そんな不敬な輩を会長に指名するなどけしからんと思っていた。
そこでイヴァンは、わざと激励会に遅刻して自分の不満を伝えてやろうと思った。王族である自分が遅れていけば、周りは気を使い、謝罪するだろうと思ったのだ。
このため、イヴァンはわざと少し寝過ごした。
1月1日の日が昇るころ、イヴァンが護衛を務める近衛兵を引き連れて悠々と塔に向かって歩いていると着物姿の女が道端にうずくまっていた。草履の鼻緒が切れているようだ。
ミトロフ男爵の娘だというその女は、今年9年生に編入することになったらしい。
イヴァンは護衛に命じて靴を用意させるともに、激励会に行きたいと女が言い出したためやむを得ず連れて行った。
イヴァンたちが塔の上に現れたころには、すでに日は登り切っており、激励会では新役員の自己紹介と学園長のあいさつが終わり、最後のプログラムであるナザールのあいさつが始まっていた。
学園で生徒指導や生徒会のことも担当していたレオニード先生がイヴァンの遅刻を叱ると、女が叫んだ。
「ごめんなさい!私が全部悪いです。イヴァン殿下は悪くないので叱らないでください。
私、今日、編入の初日で、張り切りすぎて、草履の鼻緒が切れちゃって、イヴァン殿下が助けてくれました。
周りに誰も知り合いがいなくて、絶望していたので、本当に助かりました。
ごめんなさい。私が悪いので」
イヴァンは元から自己紹介には遅れるつもりだったし、何をしていようが遅れたことに変わりはないのだが、レオニード先生はそれ以上叱るのを止めた。
もともと先生方はイヴァンを生徒会役員に推薦する予定はなかったが、イヴァンが王族は生徒会役員になって当然だと考えていると聞いた学園長が忖度したため、慌てて副会長を2名体制にしてイヴァンを副会長とした経緯もあり、イヴァンが遅刻しても何ら支障はなかったからである。
他の役員たちはイヴァンの遅刻や奇妙な格好をした女の存在を忘れて、その日に予定されていた入学式兼始業式の運営の準備を始めた。
イヴァンは、女を編入者の席に誘導する仕事を頼まれ、おおいばりで任務を果たした。
これが、イヴァンが女、ツチャビッチ・ミトロヒナ嬢と知り合ったなれそめである。
それからも、助けてもらったお礼と称してバレンタインチョコをもらったり、お花見パーティに一緒に参加したり、何回も授業をさぼってお忍びで繁華街に行ってデートしたりと着実に愛をはぐくんできた。
いつの間にか二人は、お互いをイヴァン、ツーチャと愛称で呼び合い、人目もはばからず手をつないで学園内を闊歩し、所かまわず体を寄せ合う仲となった。
もともと、イヴァンは、自分はしょせん兄のスペアであり王にはなれない身の上だと思っていたため、たいして勉強もせず、婚約者であるライラ・オルロヴァ公爵令嬢からのお願いをかなえるために彼女に会っては無言で過ごし、それ以外は威張り散らすことで自分のプライドを保って生きていた。
悩みは、「誰も本当の自分をわかってくれない」ことだ。
去年の弁論大会で、ナザール・アウコフ侯爵令息が優勝し、ライラ・オルロヴァ公爵令嬢も優秀な成績を収めた。一方、聴衆のウケを意識して大声を張り上げ、拳を突き上げるなどのパフォーマンスで頑張ったはずのイヴァンは下位だった。
イヴァンの選んだテーマが学園の体制批判だからだろう、この程度の批判を恐れて点数を入れないとは、この学園の教師どもは度量が小さいな、とイヴァンは思った。
実は、家柄が低いと馬鹿にしていたナザールや、男より下であるはずのいけすかない婚約者が自分よりも上位だったことにショックを受けていたのだ。
大会後、イヴァンが人の来ない場所で呆然としていると、近くで弁論大会の手伝いをしていたらしい生徒会の役員たちがうわさ話を始めた。
「イヴァン殿下はあまりぱっとしない成績だったな」
「怒鳴り声で何を言っているのかわからなかったからね。
しかし、重箱の隅をつつくようなつまらない指摘ばかりするくせに、いつも自分が正しいと決めつけて威張っているし、ざまあって感じだね」
すると、昨年、生徒会のイベント担当副会長を務めていたナザール・アウコフ侯爵令息が言った。
「しかし、イヴァン殿下は将来どうするつもりなのだろう。
確かにピョートル殿下は体が弱いという噂があり、実際公式の場にお見えになることも少ないが、それでも学園を優秀な成績で卒業したという噂だし、また卒業後も学園と強いパイプがあり、優秀な生徒を将来の側近としてスカウトしているという噂だ。
ピョートル殿下が次の王で間違いないだろう。
そして、ライラ・オルロヴァ公爵令嬢は、貴重な血筋故にこの国ではイヴァン殿下ぐらいしか婿が見つからないだろうが、彼女の優秀さでからすれば、さっさとイヴァン殿下に見切りをつけて、他国から婿を取りそうだ。
まあ、今のイヴァン殿下の実力では、婚約を解消して王弟のまま、王のスペアとしてひっそりと生きるのがこの国のためかもしれないけれどね」
自分は王族だから当然周囲から尊重されると思っていたイヴァンはショックを受けた。
その後、イヴァンは修行と称して、王の指示で王国軍に見習い兵士として3か月ほど放り込まれた
オルロー公爵は、オルロー家の私兵団を率いることになるためだ。
しかし、イヴァンは、魔物を倒す際には足手まといになり、軍事演習に際しては早々に音を上げてしまい、戦術論もまともに勉強しなかった。
このため、軍の上層部から、これではオルロー家の当主は務まらない、もう少し真面目にやってくれないと困るという苦言とともに見習い兵士の職を解かれた。
だが、恐妻家の王は、王妃の機嫌を損ねたくないため、イヴァンに軍からの苦言をそのまま伝えただけで、それ以上は指導せず、王妃が軍の上層部に因縁をつけて引退させた際も何も言わなかった。
イヴァンは、ますます、誰も自分をわかってくれないと悩むようになった。
ツーチャにそんな悩みを話すと、ツーチャは「私は本当のあなたのこと、わかっているわ」と慰めてくれ、そしてささやいた。
「私、予言能力があるの。
大丈夫、イヴァン様は雷帝のスキルを取得するのだから、王にだってなれますよ」
このように、イヴァンには優しいツーチャだったが、ツーチャは、時々、激高して人を攻撃することがあった。
ただ、どうも相手を見ているのだろう、激高する相手は一々イヴァンが面白くないと思っている者を絶妙に傷つける相手であった。
例えば、ナザール・アウコフ生徒会長をしたう生徒会書記だの、どうも気に入らない婚約者のとりまきの令嬢だのといった相手だ。
こういった者たちが土下座して謝罪する姿を見るたび、イヴァンは暗い喜びを感じていた。
だが、こういったツーチャの言動は、それを許しているイヴァンの評判を下げていき、ますます彼を孤立させた。
授業をさぼり、独りよがりにいばっても、周りから尊重され、理解されているという実感はわかない。
そして、先日、ついに王から婚約者にもっと配慮しなくてはだめだとやんわりと叱られた。
もう、イヴァンには、ツーチャの予言にすがるしかなかった。
確かに、雷帝のスキルを授かることができる者は天下に一人であり、そのスキルを授かれば、自分がアルテリア王国の王にふさわしいとなるだろう。
王妃になれば贅沢し放題であり、けなげなツーチャも喜ぶだろう。
他人との交流が少ない日々と、能力に見合わない高貴な立場がイヴァンの心をゆがませていたのかもしれない。
イヴァンにとって、ツーチャの予言は、生きる上での唯一の希望だった。
このころのライラ
王宮図書館に行って論文執筆、あと少しで書き終わりそうなので集中、集中!
このころのダイ
二日酔いのルカをたたき起こして、アンの家を去り、ギルド行って完了報告&ゴブリン討伐報酬をもらう。
ライラがゲームよりも優等生になったため、イヴァンはゲームよりすさんだ性格です。




