2 闘技大会のお誘い
本日は5の倍数の日なので学園はお休みですわ。
マルガリータから午後、こちらに伺いたい旨の連絡が来た。
了承して、午前中は王立図書館に行く。ダイはマルガリータのところにお使いに行ったため、付き添いはマリだ。
歩きながらマリに話しかける。
「マリは結構強かったのね。驚いたわ」
「王宮に入る前にメイド対象の護身術訓練がありました。大したことではありません」
マリは、いつもの挙動不審なしゃべりではなく、練習済みのセリフをしゃべるようにさらりと回答した。
「さすが王宮は、使用人も一流ね!」
なんとなく王家の闇を感じつつ、こちらも適当なことを言って流す。・・・変なことを言って地雷踏んだら怖いじゃない。
図書館でひたすらスキル理論の論文を調べる。
やっぱり、私の卒業論文はこの世界の最先端の研究の範囲を超えていた面もあるみたいね。
ひたすらにメモを取りながら、自分が論文に書いたことを見直していく。
昼にコテージに戻り、お昼をいただいているとマルガリータが来た。一緒にお昼をいただく。
食後は、テラスでおしゃべりをすることにして、ダイにお茶を用意させる。
「お願いがあってきました」とマルガリータが切り出した。
「あら、何かしら」
「16日にスキル実技の闘技大会があります。
ライラお姉さま、私とパーティを組んで出ていただけないでしょうか」
闘技大会は、生徒二人一組でパーティを組んで、相手方パーティと戦い、トーナメント制の大会だ。
相手を二人とも場外に出すか、戦闘不能にするか、または相手方が降参すれば勝ちだが、それ以外の場合は、相手方にスキルでダメージを与えた時に、与えたダメージ量で「技あり」「効果」といったポイントが入り、10分戦って高いポイントを得たほうが勝つ。
マルガリータは、ミトロヒナ嬢にとがめられたことから半年ほど不登校ですごすうち、ミトロヒナ嬢への恐怖心が募り、先月末、ミトロヒナ嬢がスビートを攫って行く様子を見ていたのに、隠れていることしかできなかった。
マルガリータは、この時、恐怖のために何もできなかったことで自分を責めた。
その後、トニア・ハーリング嬢がスビートの無事を知らせに来て、そんなマルガリータの様子を見て、女子寮の監督生であるケイトリン様に相談するよう連れ出したらしい。
トニアちゃん、1年生なのに、交渉力と行動力がすごいわね。
その後、ケイトリン様のおかげで、他の女子寮生と話し、マルガリータはミトロヒナ嬢の異常さに気付いたという。
「彼女は、気に入らない人に対し、ささいな行動をすべて否定し、その人が大切にしているものや人に危害を加えようとするのです。
私の場合は、私の愚かな行動のために、ライラお姉様の名誉を傷つけることになると言われました。
そして、彼女にののしられ続けると、なぜか自分が悪いような気がしてきて、自分を責め続けてしまうのです」
11月3日、マルガリータはケイトリン様やアンドレ先生の手助けにより、保健室登校を始め、またトニアが私のお見舞いに来たと言う話を聞き、2日後には、ケイトリン様に付き添ってもらって私のお見舞いに来た。
そして、昨日も保健室に登校し、そこでレオニード先生から面談を受けたという。
体調が許すようであれば、11月後半から通常の授業に復帰できるようになるらしいが、マルガリータは半年ほど休んでいたため、授業の出席点で評価されるスキル実技の単位が取れず、留年はほぼ確実だと言われた。
ただ、闘技大会で上位に入れば、スキル実技科目に合格できる。
他の科目はレポートを提出したり、違う学年で選択したりと対応できるため、進級できるかもしれない。
ちょうどそこに、私へのスキル実技講義を終えたアンドレ先生が帰ってきて、私がスキルを授かったので一緒に出ればいいとアドバイスしてくれたそうだ。
「まって、私は、バフ系の支援スキルだから、闘技大会では不利だと思うのよ」
闘技大会でポイントが入るのは、スキルを使って相手にダメージを与えた時だ。
デバフ系や精神攻撃系のスキルを相手に使ったと判定されれば、「効果」ポイントが入る。だが、バフ系は味方のステータスを上げるだけなのでポイントが入らない。
通常攻撃をしてもポイントにならないので、相手を戦闘不能にしなければ勝ちにつながらない。
そもそも、支援よりも、物理攻撃、魔法攻撃のほうが手数を入れることができるためポイントを取りやすいルールなのだ。
「ライラお姉さま以外に、一緒に出てほしいと頼めるような友達はいませんし」
「ケイトリン様に相談はした?」
「いえ、、、」
マルガリータは困っていたが、やがて覚悟を決めたように言った。
「ライラお姉さまも、最優秀生徒を狙っていると聞きました。私では力不足かもしれません。でも、、、」
マルガリータは私の目をしっかり見つめながら言った。
「ライラお姉さまへの忠誠心は、誰にも負けません」
マルガリータのお父様、ジャン・ジュコフス伯爵はもともと外国出身で、傭兵としてオルロー領の私兵団に雇われていたが、実力を認められて抜擢され、私兵団長になった。
オルロー領では、周辺国との争いに備えて私兵団を有している。私兵団長は家柄に関係なく実力で選ばれるが、王族に意見具申する可能性もある立場だ。
しかし、王族が参加する会議への参加が許されているのは伯爵以上の高位貴族のみである。
だから、ジュコフス伯爵位は、オルロー公爵が管理しており、下位貴族や平民が私兵団長になった際に貸し出されることになっている。
マルガリータは、外国生まれの平民だったが、父親が私兵団長、そして伯爵になったため、急遽、学園に編入学することとなり、以後は私と過ごしていたのだ。
「マルガリータ、私は、あなたのことを友人だと思っているわ。
私のしゃべり方が偉そうだから、上下関係があると誤解させてしまったようだけれど、私はあなたと対等の立場だと思っているの」
「もったいないお言葉、ありがとうございます。
ただ、平民からいきなり貴族になり、貴族のマナーや振る舞いが全然わからなくて、不安でいっぱいだった私に、ライラお姉さまはいろいろとご指導くださった。
ずっと、ライラお姉さまのことを尊敬していました。
しかし、以前は、不思議なことに、お姉さまのお言葉に従おうとすると、なぜか抵抗を感じる気持ちがあり、素直にライラお姉さまのことをお慕いすることができませんでした。
しかし、先日、スビートのことがあり、ようやく、私は、ライラお姉さまの厳しいご指導に込められていた優しさに気付くことができました。
このご恩を返すために、騎士になって、ライラお姉さまに剣をささげたいと思います。
私が進級したいという気持ちもありますが、なにより、ライラお姉さまが、今までと違う進路を探すために、最優秀生徒になれるよう、手助けをさせてほしいのです。
私は、優勝するつもりです」




