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余 マリは見た

マリは見た、でも気が付かない、というお話です。

王家の影の仕事はしんどい。


メイドならメイドとしての仕事をばっちりこなした上に、影の仕事も追加でやらないといけない。

普通なら、仕事に行って帰ればあとは自由時間だけど、影はいつも気を張って情報を集めて対応しなきゃいけないし、仕事に加えて報告書だの指令の受け取りだの、まあいろいろと余計な手間がかかるのさ。


しかも、周りの人に影であることがばれたら死あるのみ、なんて上司にはおどかされているけれど、その割には報酬安いと思う。毎月、銀貨1枚。

それがあたしの命の対価。


まあ、あたしは下っ端だから、ってのもあるけどね。


なんでこんな安い仕事を真面目にやっているかというと、そういう家に生まれたから、そういうものだと育てられたからというのがあたしにとっては大きい。


だけど、それだけじゃ上はあたしら下っ端を信じられないんだろう。

影の家に生まれた子どもは、7歳になったら「頭目の指令に逆らうと闇にとらわれてやがて死ぬ」という呪いをかけられる。


仕事とはいえ、子供を呪わせる親、やだねー。


とはいえ、この呪いが、あたしたち影が普通に生きられない理由だ。


影の頭目は、どこかの伯爵家の当主が代々務めていて、さらにそれに連なるいくつかの家があるって聞いている。あたしの出身の準男爵家もそういう家の末端らしいね。

まあ、下っ端らしく、影の組織について詳しいことは知らないし、知ろうとも思わないけれどね。



一応、あたしはこう見えても貴族の出身だから、侍女になって王宮内で働いて、指令があればいろいろな調査をする役割を与えられてるんだけれど、あたし、あんまり頭よくないからね、王宮じゃあ侍女に上がれなくて下働きのメイド仕事ばっかりやらされているんだ。

頭を使うより体を動かすほうが好きだから、メイドのほうが向いてるんだけれどね。


2年ぐらい前から、あたしは王宮の外れにあるお客様用のコテージ担当のメイドになった。

今、コテージには、第三王子様の婚約者様がお住まいになっている。


あたしの役目は、婚約者様の護衛と見張り、つまり婚約者様を害する奴らは殺せ、あと婚約者様に動きがあれば報告してこいって命じられてる。


婚約者様はとてもかわいらしい女の子だけど、あたしの前任者は、彼女のことをあまり好きじゃないと言っていた。

なんか、婚約者様がなにか言うと、そのお願いを聞かないといけないみたいな押しつけがましい感じでしゃべるから、なにをえらそうにってむっとくるんだって。


はは、あたしは笑っちゃったよ。


だって、王子様の婚約者様だよ、えらいに決まってるじゃない。


それに、私は難しいことを考えるのが嫌いだから、命令でもお願いでも従うほうが楽で好き。


ここでは、婚約者様のお願いをかなえておけば、あとは細々とした用事はたくさんあるけれど、周りの人も気を使ってくれて優しいし、暗殺者もたまにしか来ないから適当に殺っておけばいいし、何より婚約者様も周りの人もあたしを平等にあつかってくれるから、今の担当場所は気に入ってるんだ。


それと、キアラさんやダイさんが忙しい時は、あたしにお嬢様の付き添いとか、簡単な侍女の仕事が回ってくることがある。

お嬢様が何かやってるときとかはひたすら待ち時間で、ひまでひまで、正直メイド仕事のほうが好きだけど、でも前からいいなと思っていたワインレッドの侍女用お仕着せを着ることができるのは悪くない。


最近、婚約者様が猫を拾ってきて飼い始めた。スビートって名前を付けたらしい。

猫は大好きだよ。

あたしも毎日かわいがってる。



この担当場所にいる人で一番好きなのは、侍従のダイさんかな。


料理人と仲がいいのか、市場に何か伝手があるのか、いろんな珍しい食べ物を手に入れて、時々分けてくれる。

この間、みんなに配っていたダウリポリ名産のアップルパイなんて、おいしすぎて、もう、思い出すだけで、また食べたくなる。

かむとじゅわーって、蜜が出てくるんだよね。もう、めちゃくちゃおいしかった。


ただ、ダウリポリは、アルテリア王国の西の外れのほうの町で、行くのに片道10日ぐらいかかるところだから、どうやって運んで来たんだろう。

市場でダウリポリの出身者が作ってる店があるのかな。

あのアップルパイ、どこで売ってるか教えてほしい。


あと、ダイさんは優しい。


1年ぐらい前かな、あたしが頭目からの指令文書を受け取りそこねて、ダイさんが受け取ってくれたことがあった。


でも、言い訳じゃないけど、あれは、頭目が悪い。あんなの、誰でも受け取りそこねるよ。

コテージのわきにある木にある鳥の巣に指令文書を入れて、その鳥の巣の位置書いた文書を隠してある場所を暗号で送ってくるんだもん。

複雑にしすぎて、何をやりたいのかがわからない感じだね。


それでもって、あたしが、暗号解読文書をなくして解読に手間取っている間に、庭の掃除をしていたダイさんがその指令文書を見つけちゃったんだよね。


あの時は焦ったー!

だって、指令文書には中身を他人に読まれたら報告がいく魔法がかかってるらしいし、影だってばれれば死あるのみでしょ。

死ぬのなんて嫌だよ。


幸い、ダイさんは、文書の中身を読まなかったみたいだ。

あと、あたしの動きを見て、あたしあての文書だって気が付いたらしく、指令文書を渡してくれた。


それだけじゃなくて、あたしに、影の仕事は大変だな、って話しかけてくれた。


え、全部ばれてる、あたし死ぬんだ、って思った。


だけど、ダイさんは、あたしに影の仕事内容や、今言いつけられている役目を聞いたうえで、指令文書が送られてきたら、ダイさんがいるところで1回読み上げることを条件に、あたしが影だと騒ぎ立てないって約束してくれた。

そうすれば、ダイさんは指令文書の中身は読むわけじゃないから、大丈夫、って優しく教えてくれた。


ちなみに、その時の指令は、王宮内で「ライオン」を見かけたら即報告せよって内容だった。

「ライオン」ってなんだよ。ここは動物園か。

まあ、そういう突込みは置いといて、真面目に考えると、「ライオン」って、なんかのコードネームだと思うんだけど、コードネームの意味に関する連絡はこないっきりだ。

だから、あたしは、今でも、あの時の指令の意味が分からない。

ダイさんにそのことを言ったら、ダイさんは、「ちゃんと指令が届くかどうかの訓練みたいなものかもしれないね」って教えてくれた。


なるほどね!


それからも、あたしが報告書を書くのに苦労していたら、何を書けばいいよと教えてくれたりする。

実は、暗殺者を殺る時に手助けしてくれたこともある。

ダイさんは、いい先輩だね。



今日は、婚約者様のお供をして図書館に行った。

帰ると、婚約者様のおじいさまが来ていた。


ダイさんが、こそっとあたしに、「公爵様が来たってもう報告したのか、まだなら報告したほうがいいぞ」って教えてくれた。


あたしは急いで台所のわきにある使用人の待機場所で報告書を書いた。


ここで報告書を書けるようにキアラさんに話してくれたのも、ダイさんだ。

私は自分の勉強のために日記を書いていることになっている。

だからかな、キアラさんは時々報告書を見て、文字の間違いや正しい表現を教えてくれる。

報告書が読みやすくなったって、上司に褒められたから、ダイ様様、キアラ様様、ありがたい話だ。


あたしの横では、スビートが牛乳で煮た鶏肉をもらって食べている。

スビートは、金色で、ライオンの子供みたいに大きいのに、気が小さいところがあって、びくびくしている。でも、このエサは好きみたいで、今は夢中で食べている。かわいいもんだね。

報告書を書きながら、なでなでしておく。


ああ、あたし、ずっとこの場所の担当でいたいな!!

本日2話投稿です(これが2話目)。


投稿がギリギリなので、一晩おいて誤字脱字を見直してから投稿が反映されるようにしたいので、明日から投稿予約時間を19時に変更します。

よろしくお願いします。

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