無道の魔を裁く〈ソレ〉は
王都アドール・ヴァイス。
ミリーナ達と出会った、最初の拠点だ。今、骸の兵を焼き殺しながら、身内を探してる。救える奴らだけ救ったら、とっととずらかる段取りになっている。そのつもりで、MPポーションもそこそこ〈用意〉した。偉そうな貴族どもをターゲットにした大胆なスリと空き巣を繰り返し、一気に70万Gを稼いがせて貰った。もしかしたら足がついたかも知れないが、知らん。今回はリスクも背負う覚悟だ。そうした技術と労力の全てをMPにつぎ込んでいる。HPは知らない。今だけ、痛みは我慢する。俺は、俺だけは生き返れるんだから。痛みは常人の倍だが、痛みで身内を、あいつらの命を救えるのなら。今なら、魔法撃ち放題という訳だ。下位のスケルトン程度なら、幾ら来ようが負けない自信がある。火か光の魔法さえ撃てば一撃だからな。MPや資金の温存という理由から、普通の魔術師ならば、こうは行くまい。どんなに上等な魔術師でも、今の魅斗サマのような大盤振る舞いは出来まいよ。ククク。盗賊は魔術師よりも強し!盗賊こそが真の魔術師!無限の金で無限の魔力を買い、残弾を度外視した大立回りを可能とするのだぁ!
「ふははははハハハ!!どけぇ!どけぇ!雑魚どもが。最下級のスケルトンの分際で!剣や杖持ったくらいで中位に昇格ですかァ!骨の耐久力は変わってねーみてーじゃァねェかァ!?あぁぁァァ!?」
魅斗が暴れる。骸の兵は幾十幾百と崩れ去る。
もう千は倒したかも知れない。だが、まだまだ先は見えない。そして、人の姿もない。救いに来た身内どもの姿もだ。
「何処だァァァ!ミリーナ!ゴルボス!クドローノ!豆腐屋ァ!何処だァァァ!」
燃え盛る街。崩れた瓦礫。揺れる大地。
空気を蝕む瘴気と熱気。散らばる肉塊。
もう、あいつらを救うには遅すぎたのかも知れない。
「クソがぁァァァ!!」