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第66話 幸せってココロの形

幸せってなんだろう?子供がいなくてもディーさんとだったら幸せになれると思う。

幸せってココロの形。自分がどう思うか、思えるかで世界は変わる。

同じ一つの事を、不幸と思うか、幸せと思うか、それだけで景色が一変する。………出来たら私は幸せと、思える人になりたい。

まぁ、全部が全部そう思えるとは思えないけど。できるだけ、ね。そうありたいと願う。

私が、虎さんになる事を前提で子供が産まれる可能性があるなら、それも幸せなんじゃなかろうか?

ただ、確かに怖い気持ちはある。遺伝子から変わっていくのなんて想像もできないし………。もし失敗したら?とか考えないでもない。

でもここにきて私は『家族』の暖かさを知った。孤児院の皆と仲は良かったけど、どうも家族とまでは感じられなかった。同志っていうか共感できる仲間って感じで。シスターは高齢の人が多くてお母さんって感じじゃなかったしね。

幼い頃の私の夢は早く結婚して沢山の子供を産む事。家族が欲しい。それは私が渇望していた唯一の願い。

顔も知らなかった両親は姿を変えるかもしれない事をどう思うだろうか???初めてタトゥーを入れた子のように「せっかく五体満足で産まれた身体に傷をつけて!!!」って感じに思うかしら?それとも「どんな選択をしても、あなたの人生。幸せになりなさい」と言ってくれるだろうか??出来れば後者であって欲しい。

もし、私に子供がいて同じような選択を迫られている状況だったら「あなたが幸せになれる選択をしなさい」って言ってあげたいから………。「あなたが幸せなのが私の幸せよ」って言ってあげたいから………。

ディーさんの腕の中から出てじっと見上げれば、苦しそうな顔が目の前にあって。


「俺は、産まれた姿を違えるのはミオンを否定するようで少し辛い………。ミオンがもしも周りや俺の事を考えて姿を変えようと思うのならそれはやめて欲しい。そんな必要はない。俺は今のミオンのままで十分だ」


考えながら言葉を紡ぐディーさんは、ただただ私を案じてくれているというのが分かる。それが分かるからこそ愛しくて。それが分かるからこそ、この気持ちを大切にしたい。


「確かに、そう言う気持ち、あると思うよ。でもそれ以上に私がそうしたいの………。子供は授かりものだから、確実にできるかどうかは分からない。けど………私は私の好きな人の子供を産めるのなら産みたいよ。好きな人の子供を産んでその子に私はお父さんとあなたと一緒に居れて幸せよって教えてあげたいもの」


ディーさんの手をとってそっと頬に寄せる。


「正直に言えば、自分の身体が変わるのは怖いよ?でも怖いからって諦めたら、私一生後悔する気と思う………。何でそうしなかったんだろうって自分を責めるかもしれない。―――私本当は大家族をつくるのが夢だったから………。でもディーさんとだったら子供がいなくても幸せになれるって思ったの。支えてくれる人達が沢山いて、私の事を思ってくれるディーさんが傍にいてくれて………今だってこんなに幸せなんだもの。でもこの話を聞いてちょっと欲が出ちゃった………もっと幸せになりたいって言ったら怒る??ねぇディーさん。私がディーさんの赤ちゃんを産めたらもっと幸せで楽しい人生になるのにって言ったら我儘かな???」


できるならディーさんに賛成して欲しい。一緒に頑張ろうって言って欲しい。自分でも驚くほどにそれは強いねがいで。


「それを我儘だとは思わない………。俺は………不安なんだ………。ミオンが俺の子を産みたいと言ってくれるのは正直言って嬉しい。俺とミオンの子ならどんな子でも愛せると誓う………だが、それなりに身体に負担がかかるから眠ると言う………もし目覚めなかったら???そう思うと不安になる………夢を見て倒れた時の事を覚えているか??あの時俺は死にそうな気分だった。それならいっそ子供は要らない」


真剣に私の目を見ながらディーさんが言う。落胆しかけた私に更に言い聞かせるようにディーさんは言葉を続けた。


「だが、ミオンはそれでも俺の子を産みたいと言ってくれるのだな………なら、俺はその気持ちを尊重しよう。ミオンを幸せにするのが俺の望む事だ。そのミオンがより幸せになれると言うのなら俺はその不安と闘おう。俺は生涯ミオンを愛し守ると己に誓ったのだ。ならミオンが目覚めなければ俺が何度でも起こせばいい。何度も何度でも起こせばいい」


あぁ、今とっても泣きたい。ディーさんを好きな気持ちがいっぱいで全身から溢れ出そう。

思い切り抱きつけば逞しい腕が抱きしめ返してくれる。嬉しくて今にもキスしたい位!!!

後ろの方で神々が手を叩いたり口笛吹いたりそれを窘めてたりするけど、どうでもいい。

飽きずにディーさんの腰に手を回しながら「ディーさんありがと………」と言えば「それは俺の言う言葉だミオン。俺の子を望んでくれてありがとう」とディーさんが囁くようにそう言った。


『感動のシーンに水を差すようで悪いんだけど、そろそろいいかな?』


良くないですカラント神。出来ればもうちょっとこうしていたい………。そうは思ったものの待たせるのも悪いので渋々ディーさんの腰から手を離す。振り向けば上機嫌の神々とそっと目尻の涙を拭うティレンカ女神の姿があった。


『いや、一時は駄目かと思ったけど。決心してくれて嬉しいよ!!!ティレンカには無理強いするなって言われてたんだけど………正直、昔の僕等なら強制的に変えてたね。だって君等の子供見たいもの。僕等の血族に当たるから途絶えてしまうのも嫌だしね』


そう頷きながら言ったのはカラント神。


『確かに………ボクも深音が嫌だって言っても変えてたね』


そう笑顔で言い切ったのはフォトン神。


『否定はできませんね。私とて反対はしなかったでしょう』


考え深げに言ったのはトゥレン神。


今さらりと怖い事言ったよ!!この神々(ひとたち)!!!改心してくれてて助かった。

どうやらこの神々はディーさんの事が可愛くてしょうがないらしい。孫みたいなものって言ってたしね。親族としては孫が結婚したら曾孫が見たくなるじゃない?そんなノリだった。

ディーさんが呆れ顔で神々を見てる。


『あまり深音を苛めるものではない。可哀想に顔が引き攣っておる』


おっと、顔に出てた???いけない。いけない。


『ティレンカ姉上は随分、ディークラウドより深音贔屓だね?』


フォトン神の言った通り、確かにそれは気になるなぁ………なんでだろ?


『ディークラウド王はもちろん可愛いが………妾にとっては愛する人と、愛しい息子の血を引く者と結ばれて更には子を産んでくれると言ってくれた深音の方が可愛い』


優しい目で私とディーさんを見つめるティレンカ女神は、私達の後ろにセイウスさんと、ディークラウド王子を感じてるみたいだった。優しく微笑んでくれるティレンカ女神に頬笑み返して、お母さんてこんな感じだったのかしらと想いを馳せる。

ティレンカ女神と同調した時に見えた両親の姿。私をあやしながら幸せそうに微笑んでいた。それを思い出しながら心に刻みつける。


『さて、深音ちゃんにはこれをつけてもらわないとね』


カラント神が差し出したのは太めの腕輪。返事も聞かずに嵌められた。

大きな腕輪なのに手から抜け落ちない不思議な腕輪は、真ん中に大きめの青い石が3つ嵌ったもので象牙みたいな質感の本体部分には何かの花と蔦が彫り込まれている。


「これは?」


『深音ちゃんを変化させる僕等の力を中継してくれる腕輪ってところかな。今日からルーヴェンシアの神が交代でその腕環に力を送る。その力で深音ちゃんは少しずつ変化していく訳だね』


今日からかぁ………なんか不思議な感じだなぁ。


『その腕輪ボクがつくったんだ。大切に扱えよ』


しげしげと感心してその腕輪を見つめていれば、フォトン神が照れくさそうにしながら言う。器用だなぁ………。


「わかった。大切にするね」


そう言ったら嬉しそうに頷く。神々の一人って事を知らなかったら小学生位の男の子だと思っただろう。


『………そろそろ時間です。あまり遅いと他の弟妹に文句を言われますよ?』


トゥレン神にそう告げられ他の神々も頷き合う。


『深音。不安に思う事はないと妾が約束しよう。心配症のディークラウド王を悲しませるような真似を妾はしない。二人が幸せになれるようにするのが今の妾の生きがいじゃからの』


そう言って祝福のキスをディーさんと私の頬にするとティレンカ女神が私を軽くハグする。


「ティレンカ女神………ありがとう………そうだ!渡したいものがあったの!!」


そう言ってティレンカ女神に差し出したのは日記が2冊とディークラウド王子の手紙と宝石箱の入った袋。不思議そうにそれを見てティレンカ女神が受け取って中をみる。

ティレンカ女神は袋の中を見て驚いたように目を見開き宝石箱を取り出すと「あぁ………」と呟いて涙を一粒こぼした。




深音は決意を固めて実行に。ディーさんは覚悟を決めて傍にいます。

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